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そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

二章 ⑩

どれほど経ったかわからないほど戦い続けていた。
様々な魔法攻撃を駆使され、淡々と、着々と追い詰められ、体力を根こそぎ持ってかれていく。
「くそっ!」
僕はやけくそ気味に数発弾を撃ち出した。
僕の使う銃は確かな威力であり、並の防御なら軽く突破してしまえるほどの威力だ。
だが、
「そんなもの効きませんよ」
フエラムネ男は瞬時に砂を空気中にかき集め、簡易な盾のようなものを作り出し弾を防いでいた。
盾は銃弾で破壊されているが、そこで相殺され、男本体に攻撃が届かない。
先程から何度か攻撃方法を変えることを試みた。
相手がこちらの異能力を把握していないことを利用。
あえて銃を構えるのをやめ、相手が油断したところで銃を下ろしたままいきなり引き金を引く。
そして自分の異能力を使い、強引に相手に弾を届かせる。
そうして相手の予想の裏をつく攻撃をしようとした。
しかしそれも無駄、男はそれすらも察知し、僕の攻撃は全て防がれてしまったのだ。
「バレバレなんですよ、あなたは」
男はそう言ってフエラムネを再度吹く。
今度は数個の火の塊が形作られていた。
「!うわやべっ…」
通らないこちらの攻撃。
それだけではない、向こうと違い僕とピアニには相手の魔法攻撃を防ぐ術はほぼない。
食らえば徐々に料理される。
人間の丸焼きが二人分地面に転がることになるのだ。
何かいい打開策は……。
「ピアニ!……逃げるっすよ!」
「そ、そうね!」
とにかくまずは逃げて体勢の立て直しを図る。
二人揃ってなるべく全速力で退避した。
「逃がしませんよ」
「!!」
男が軽く手を払う動作をしたかと思うと、ゴゥッ!という音と共に、逃げ道を塞ぐように火が燃え上がった。
一瞬足が止まる。
その隙をフエラムネの男は見逃さなかった。
すぐさま形作られていた火の塊がピッチャーマシンのように飛んでくる。
「あ、当たる!?」
「当てさせるわけないでしょ!!」
急にピアニがそう言ったかと思うと、いきなり強引に僕の手から銃を奪い取った。
「ちょ、何するつもりっすか!」
「当然、撃つのよ!」
そう言い終わるのと同時に、ピアニは銃をすぐ近くの壁に向けて発砲する。
大きく崩れた壁の破片が飛び散り、それが盾となって火の玉攻撃を防いでいく。
この一瞬で火の玉の速度と壁の破片が崩れるタイミングを計算したのだろうか。
「すっご…」
「どうも!」
上手くいったのが自分でも嬉しいのか、満面の笑みで銃をお返ししてきた。
ピアニのあまり見せない表情に、「は、はぁ」と微妙な声を漏らしつつ銃を受け取る。
「…ってそうじゃねぇっす!退避!一旦退避!」
「そうだった!撤退!一時撤退!タンマ!作戦会議!」
続けざまにピアニ。
鬼ごっこで捕まりそうになった小学生が苦し紛れに発するかのような台詞である。
当然、そんなお間抜けな言葉に敵が待ってくれるはずもない。
「…………」
向こうも半分呆れ顔でこちらを見ていた。
だがそんなことはどうでもいい、今はとにかく作戦を練らなければ。
二人一緒に行手を阻む火の壁を半ば強引に突っ切る。
「熱っ!?」
幸い、発火した時よりも勢いはそこまで強いものではなかったため、なんとか通り抜けることに成功する。
少々服からは焦げ臭い臭いが漂っていた。
「けほ、げほ、けほけっほ、…げっほ!」
煙にむせながらも銃を握る。
……さっきのピアニのような咄嗟の計算はできないが…。
もう一回、目眩まし程度なら。
先程と同じように、フエラムネの男の手前の床に向けて数発弾を撃ち込む。
案の定、弾の威力によって土煙が舞った。
おそらく男は魔法か何かですぐ土煙を払ってしまうだろう。
ほんの数秒程度の目眩まし、だが一瞬でも相手の視界から消えられればいい。
僕はピアニの手を引っ張って近くの通路に逃げ込んでいった。




「……さっきは助かったっす」
先程の場所からやや離れた場所。
柱の陰に身を隠しつつ、敵――フエラムネの男がいないことを確認する。
「べ、別に…あのまま足手まといになるのは嫌だっただけよ」
ピアニは素っ気ないようなそぶりだ。
しかし、その顔はしっかりとにやけている。
よほど嬉しかったのだろうか。
「……何嬉しそうに見てるのよ」
「いや、妹とかいたらこんな感じなのかなーって思っただけっす」
「妹って…あんたもあたしも18で同い年でしょ!失礼ねぇ!」
顔を真っ赤にしながら怒るピアニ。
同い年といっても、約15cm程身長が離れていれば妹にも見えてくる。
「……ってそんなことより作戦会議よ!」
「あっ」
普通の会話に目的を忘れかけていた。
こんな状況でもくだらない会話ができてしまうのは互いを信頼し合っているのか、それともただ単純にお互い阿呆で緊張感が足りないのか。
正直微妙なところである。
そう余計な考え事をしている僕とは真逆に、ピアニは顎に手を当てて真面目なモードになっていた。
切り替えの早いやつだ。
「……一番の問題はあの魔法で作る盾ね。あれをなんとかしないと攻撃を通すことすら難しいわ」
「やっぱ厳しいっすね…」
僕が少なくとも今言えることは、「あの男」にはほぼダメージを与えることができていない、ということだけだ。
僕なんかよりも相手の技量の方が圧倒的に高かったのだ。
相手が悪いと言ってしまえばそれまでだが、そんな文句を言ったところでどうにもならない。
必要なのはいかに立ち回り、いかに相手の裏をかくか、それだけである。
「ノラム、何かあの盾について気付いたこと…見たことない?何でもいい、些細なことでも」
「気付いたこと…っすか…えーっと」
数秒考える。
「あーそういえばあの野郎…盾を作るとき周りから砂みてーのをかき集めて作ってるっすね………っていうかそれくらいしかわかんなかったんすけど」
「そうね…砂を……」
ぶつぶつとピアニが何かを言い始める。
しばらく一人で何か考えを廻らせているようだが……。
ひとしきり呟き終わった後、ピアニはゆっくりとこちらに顔を向けた。
お早いことに、もう考えがまとまったようだ。
ピアニはしっかりと僕を見据えて言う。
「――ちょっと強引な作戦なんだけど……あんたまだ動ける?」




ほんの数分の簡単な説明の後、僕はいよいよあの男に一泡吹かせてやろうと準備をする。
「……どう?やれそう?」
ピアニが心配そうに僕の顔を覗き込む。
…今更できないと言えるわけがない。
何も言わずに僕は頷いた。
「その、悪いわね…いつもあんたばっか戦わせて」
そんな僕を見て思うところがあったのか、ピアニは俯いたまま呟いていた。
「……お前がそんなこと言うなんて珍しいっすね。いつもの通り僕はただ、僕の持ってる良心に従ってるだけっすよ」
「ノラム…」
「お、性懲りもなく現れやがったっすよあの野郎…!」
僕の視線の先には、あの憎たらしい顔――――フエラムネの男が、半笑いでこちらに近付いてきていた。
「今度こそ目にもの見せてやるっす…ぐわははははは!」
「それ悪役が言う台詞だから」
ピアニの流れるようなツッコミをものともせず、僕は物陰から男の前へと姿を現しに行く。
「よぉ、待たせたっすね!」
ギッ、と目一杯男を睨み付ける。
「さっきから何をこそこそと…隠れて二人で死ぬ順番の話し合いでもしていたのですか?」
「は、そんなことも話し合わないと決められねーんすかぁ?」
負けじと僕も言い返す。
軽口を叩きながらも、一時でも気を抜くことはしなかった。
空気が強ばる。
周りの気温がやや低くなったように感じた。
「通用すんのは一回…」
失敗することは許されない。
ゆっくりと互いに歩み寄りながら、男はフエラムネを、僕は銃を手に取った。
男はフエラムネを口に食わえる。
「ッ!」
先手を取らせまいとすぐさま僕は男に向けて弾丸を発射した。
「悪足掻きを…!」
だが男はそんなものを気にもせず、瞬時に魔法で作り出した土の盾で跳ね返し、さらに間隔を詰めてくる。
ぴーひゅりるるる、とフエラムネが鳴らされた。
「何をしようが同じです。あなた方の敗けですよ、敗け」
男の傍らにはビームでも撃ってきそうな魔力が蓄えられていた。
もちろん、食らえば一発アウトだ。
しかし。
「そんな台詞は勝ってから言うべきっすよ!」
「何!?」
後退はしない。
逃げるどころか、むしろ向かっていく。
男は一瞬たじろいだが、すぐに蓄えた魔力からレーザーのようなものが発射された。
マンホールの蓋くらいの太さだ。
当然距離が近いため避けるのも難しくなる。
だがこのくらいなら…!
「そおぁぁらっ!」
身体を少し曲げながらビームの間を縫う。
上手く、かわした。
攻撃をかわせば今度はこちらが圧倒的有利となる。
「間合いを詰めたところで何も変わりませんよ!」
瞬時に男は土の盾を作り、防御の姿勢をとる。
だがそれでも僕は止まらない。
落ち着いて盾を撃って、壊す。
さらに互いの距離がほぼ2、3メートルになった。
「何をしようが無駄だと…!」
新たに男が盾を作る。
さすが、と言うべきだろうか。
こんな至近距離でも一切隙を見せない。
だから。
「無駄はここまでっす!」
僕は目の前の地面に発砲した。
地面が捲れ、土煙が舞う。
二人の視界が、一気に遮断される。
「ぐっ、これは…!?」
前方で男の声が聞こえた。
素早く、僕はその土煙の中に入り込む。
男の目の前から、姿を隠したのだ。
「まさか、死角から攻撃…!?」
男に隙ができる。
最高の好機………しかし、
「…馬鹿め、盾が一部分だけしか作れないと思わないでください!!」
舞っていた砂埃が不自然に動く。
周りの砂を集めて全方向の盾を作るつもりなのだ。
「ククク、所詮は子供の浅知恵!私の力を見くびりましたね!!」
男の周囲に砂が寄せ集まり、男の周りを囲む小さなドームになっていく。
完成してしまえば、もう攻撃を通すことは絶望的だ。


――――だからこそ、ここまで近付く必要があった。

「――お邪魔するっす!!」
「な、あなたは…!?」
かき集められる砂の中に、男は僕の姿を認識する。
男はすぐにそれが僕の――ピアニの罠だと認識した。
「まさかこのために砂を……!?」
「当然!!」
視界が塞がれ、相手がどこから攻撃するかわからないのなら、当然全方向を防御してやり過ごそうとする。
だからあえてそれを利用した。
あらかじめ砂を巻き上げておくことで、視界の遮断とは別に、盾の作成材料として巻き上げた砂を使わせる。
そうしてかき集められた砂の中に不純物として僕の身体を巻き込ませたのだ。
気付かれないギリギリまで男に近付いていさえすれば、巻き込まれるときに盾の一番内側の壁…つまり合法的に内部に浸入することができる。
少々強引な手だが、こういうやり方の方がやりやすい。
「オラまず一発!!」
巻き込まれたときの勢いで、男に思いきり体当たりを食らわせた。
「がっ!」
「二発!!」
続けざまに足を撃ち抜いて二発目。
「ヌゥゥ…!」
「こいつはおまけっすよ!!!」
更に顔面パンチ。三発目。
「おごっ…!」
フエラムネの男の顔に拳がめり込む。
そのまま男が砂の壁に思いきり身体を叩きつけられると、簡単に砂の壁が壊れてしまう。
男の力の弱まりか、壁が脆くなっているようだ。
「グハッ、こんな…無様な…!」
「生憎、こっちも死ぬわけにはいかないんで」
男はゴキブリのようにのたうち回りながら、殴られた顔を押さえていた。
もはや抵抗しても無駄だろう。

「勝負あり」だ。

黙って銃を突き付けてみるものの、残念ながら僕らに殺生は許されていない。
仕方がないので痛め付けて気絶させてやろうかと銃を持ち変え、鈍器として使うことにした。
「待て!待ってください!」
「え、嫌っす」
男が妙に小者な発言を始めてしまっている。
「!そうだ…」
何かを思い出したかのように男は言うと、男はぶつぶつと何か呪文のようなものを呟く。
すると男の姿が変わり…

「――――ノラムお願い!見逃して!!」

……それはまごうことなきピアニの姿になっていた。
「………………」
さっきの分身の応用だろうか。
今度はこっちが呆れてモノも言えない。
なぜ本物がすぐそこにいるのに通用すると思ったのか。
というか中身がフエラムネを吹くおっさんだとわかっていると無性に腹が立ってくる。
僕は半分ゴミを見るような目で男を見下した。
「………嫌っす」
容赦なく銃で殴り付ける。
ゴスン!と鈍い音がしたかと思うと、ピアニの姿をしたフエラムネ男はそのままバタリと倒れ、そのまま気絶した。
「…………ノラム……」
「何も言わない方がいいっす」

物陰から覗く「本物」も、これにはドン引きだったようだった。