そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

二章 ⑧

「分身ってそんなんありっすか!?」
唖然とする僕をよそに、魔法によって四人に増えたフエラムネの男のうち一人が前に出る。
「ありなんですよ」
続けて残りの三人も前に出た。
「魔法なら当然のことです」
「人を始末するのにルールなんて」
「ないんですから」
…順に喋っていく様を見ると何とも言えない変な気分になってくる。
「な、なんか気持ち悪いわね…」
「僕もそう思ってたところっす」
「ククク、さぁ死んでもらいます」
本物を含めた四人が一斉に笑い始める。
同時に、やつらの周りの砂や土が一気に舞い上がった。
それはみるみるうちに無数の塊に変化し、そして、
「うっそだろお前…」

雨のようだった。

次々と降り注ぐ塊の大群になすすべもなく、無様に逃げ回るしかなかった。


塊による被害で周囲が瓦礫の山になっている。

分身して魔力を消費しているのにここまで被害を出すというのは、なかなかにヤバい相手である。

若干の擦り傷は負ったものの、ピアニ共々なんとか逃げ切り、腰に下げていた銃を引き抜く。
「今度はこっちの番っすよ」
引き金を引いた。
バン!と乾いた破裂音がした。
狙いは付けずとも、弾は吸い込まれるように一点に向かっていく。
例え砂埃が舞っていようとも辺りが薄暗くとも目標が視認できれば問題はない。
すぐさま本物を含めた四人のうちの一人を正確に貫いた。
被弾した一人は、撃たれた所からパラパラと砂のようなものを溢れさせ、干からびた地面のようにひび割れ、崩れていった。

…残念ながら、それは分身の方だったようだ。

「やっぱ本物を見分けられないとキツいっすね…!」
今のところ分身に対しての対抗策がない。
このまま戦いが長引けば、弾に限りがあるこちらが不利となる。
「ピアニ!どれが分身だと思うっすか!!?」
「右から二番目!!!」
言われたとおり右から二番目のフエラムネ男を撃った。

…分身だった。

「やっぱだめねー…」
ピアニはやっぱりかーという表情をしていた。
「普通はそうっすね」
「どうする?このまま4分の1の確率にかけて戦う?それとも諦める?」
半分投げやりに質問をされる。
「ピアニが打開策を考えてくれる!」
「……………………………そうね!」
「なんすかその間」
「自信ない…」
「がんばれ!」
「うん、がんばる…」
心なしかいつもより声が小さい。
だがピアニの顔は、気合いを入れたのか小さい声とは裏腹に真剣そのものだった。
策を練るため、周囲を確認した後やや離れた場所へ避難する。

…ようし、その調子で何とかしてくれ。
頑張ってくれないと死ぬ。
「その程度の実力では殺されるのも時間の問題ですね」
男は余裕たっぷりといった顔でにやついている。
その数、四人。
男の口にはまたフエラムネが咥えられていた。
f:id:sometime1209:20150209180424j:plain
これまた四人。
「ぴーひゅるるるぅー…」
相変わらず緊張感のない音だ。
しかしこの後に繰り出されるのは先程の威力に匹敵する攻撃だ。
「弾は…」
まだまだ手持ちは残っていた。が、こんな攻撃を繰り返されれば間違いなく尽きるだろう。

とりあえず、今は防御としてだけ……

「なんとかなるっすかね…」
誰に言うわけでもなくぼやく。
「死んでください!」
フエラムネのピー!という音に呼応して土や砂の弾丸が放たれる。
「ッ…!」
なるべく避けられるものは避け、どうしても当たりそうなら撃ち落としていく。
建物内部なので、物陰に入ることで攻撃を回避する。
だが完全には避けられない。
右頬と左の脇腹を少し掠った。
「いっ!って、ぇなぁ!!!!」
そのままバランスを崩し2、3メートルほど転がった。





弾丸が止み、ところどころ建物の天井は壊れ、夜の空が覗いていた。
月は雲に隠れていたが、光は僅かに射し込んでいる。

…そうか、そういえば僕は倒れていたっけ。

なんとか身体を起こす。
立ち上がって衣服に付着した砂を叩くと、薄ら笑いで近付いてくる四人の姿が見えた。
「そんな『オモチャ』では」
「私の魔法は避けられませんよ」
「諦めてください」
「降参したら楽に殺してあげます」
「結局殺すんすか…」
はぁーっとため息をつく。
残り弾数を確認しつつ、こいつを倒せば快適な睡眠時間だ、と自分に言い聞かせる。

「……?」

と、ここで分身を含めた四人のうち一人が妙な動きをしているように見えた。
何かはわからないが………。

そう思ってもう一回見るが、四人は揃って真っ直ぐに歩いていた。

…気のせいか。

ところどころ月の光が射し込んでいるせいか、目が光に慣れて暗い場所が見えにくくなった気がする。
「チッ、ますます不利になったっすね」
そう言って向かってくる四人を睨み付ける。
まだ大丈夫、傷は浅い。
僕は銃を握りしめた。