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そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

短編① シャーラ・I・ディザスター

「お父様、お話ってなんですか?」

お父様がわたし――シャーラ・I・ディザスターを呼びつけたのは、わたしがフォル君と旅に出る前日の夜のことだった。
「シャーラ。……いよいよ明日か」
「はい!とても楽しみです!」

フォル君、とはわたしに初めてできた友人のことだ。
そして、わたしを外の世界へ連れていってくれる人でもある。
「……旅の前に、少しだけお前に話しておきたいことがある」
お父様はいきなりやや表情を曇らせながら言った。
「あの少年についてだ」
「フォル君、ですか」
わたしはなぜお父様がそんな表情をしていたのかわからなかった。
するとお父様はそんなわたしにもわかるようにか、ゆっくりと話し始める。

「シャーラ……初めて彼に会ったとき、どう思った?」
「?普通……ですが……」
困惑しながらも答えた。
お父様は、そんなわたしの顔を見ながら、うんむ、と小さく唸りながら言う。
「私は……残念ながら信用できないと思った」
「ど、どうしてですか!?あんなにいい人なのに…」
お父様の言葉にわたしは大いに驚いた。
そしてますます、わたしはお父様の考えていることがわからなくなってしまった。
フォル君が信用出来ない人だ、どういうことなのだろう。
「お前は今まで城に閉じ込められ、外の世界を知らずに生きてきた。だから人を疑ったり、騙されないようにすることがまだ出来ないのだと思う。…生きてく上で必要な力が、まだまだ備わっていないんだ」
わたしはその言葉に少しだけムッとした。
世間知らずはまだしも、生きていくには十分な力が自分にないというのは大袈裟ではなかろうか。
そして何より――
「……疑うことは、愚かなことではないですか」
人を疑うなど、したくなかった。
お父様はそれを聞いて、そうだなと頷くが、しかしだな、と否定する。
「確かに信じることは大切だ。だが信じすぎることはよくない。」
さらにお父様はこうもつけ加える。
「あのフォルという少年には、どこか信じられるものが欠けていると私は感じていた。だから、私は彼の心情を魔法を使って覗き見をしてしまった」
「魔法…」
今や世界には数多の魔法が存在する。
その中でも、上位に位置する魔法。
それが、心を読む魔法 。
完全に読めるわけではないものの、心の根底にあるものすら見透かしてしまうため、わたしの一族はそれを使うことを避けているのだ。
「申し訳ないことをしたと思っている。具体的なモノを読み取れないとはいえ、人の心を覗き見ることは人としてあるまじきことだ」
わたしは黙ってお父様の話を聞いていた。
お父様は少しの沈黙を作り、ふぅっと息を吐いて話を再開した。
「…彼の心は、正直に言ってしまえばあまりいいものではなかった」
「……」
「だがその他に、彼はものすごく大きなトラウマを抱えていた。その内にはただただ人という存在をを恐れている心、誰かに受け入れて欲しいというかすかな願いや、大きな孤独感があった」
「人を恐れている…?」
「彼の過去に何があって、どのようなものかは私にはわからない。だがね、私は彼が今も心の内で何かと必死に戦い続けているのだと思う。人を恐れている彼が、お前と旅をしようとしているのも、きっとそうなのだと」
「フォル君…」
「だからシャーラ。旅の仲間として、もし彼が心の内で何かに負けそうなときお前が彼を助けてあげなさい。お前が彼の心を救ってあげなさい」
そうわたしに言うと、お父様はいつもの優しい顔に戻った。

わたしは、正直どうすればいいのかわからなかった。
人を救うということが、どういうものか実感が湧かなかった。

でも、
「わたし……頑張ります!お父様!」
わたしにはできる。
理由もなくただそんな気がした。

その言葉を聞いたお父様は嬉しそうだった。




旅立ちの日。
わたしは城を出ようとしていた。
「すぅーっ、…………はぁーっ」
外の世界の空気を思いきり吸って吐いた。
「……よし!」
一歩だけ、踏み出してみた。

わたしにはわからない。

人を信じたり、疑ったり、楽しいことがあったり、辛いことがあったり…

ただ言えることは、この旅がわたしの人生で一番の思い出になるのだろうと期待していたということだけだ。
明日からは部屋で一人過ごしていた「いつも通り」ではなく、誰かと旅をしていく「新しい日常」なのだと。
真っ白なページに何かを書き込んでいくように、わたしの旅は幕を上げるのだと。


「―――行ってきます!お父様!お母様!」


わたしは元気よく、憧れていた世界へと飛び出していった。