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そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

二章 ⑦

依頼。
フエラムネを食べていた奇妙な男はそう言った。
「ところで、お二人はここ数日前にこの国を訪れた…『帽子の少年』について何か情報はありませんか?」
男は唐突に聞く。
「帽子の…?」
僕らのことを探っているような、そんな口振りで。
帽子の少年…そう呼ばれそうな人物は僕の記憶の中では僕とピアニを助けてくれた『あの人』しか思い浮かばないが…。

…さすがにそれはないだろう。例えもしそうだったとしても、何を考えているのかわからない男に教えるつもりなどそうそうないが。
「知らないっす」
なのでそう答えておくことにした。
「あたしもそんなヤツは知らないわ」
ピアニに関してはあの時既に気絶していたので知らない。
ひとまず「情報なし」という答えに相手がどう反応するかだ。
「ふむ…」
男はまたフエラムネを食わえつつこちらを見ていた。
「これはこれは、どうやら私は自分の依頼と無関係な人間と出くわしてしまったようですね…」
「で、その依頼っていうのは何なの?」
「……」
ピアニの質問に男は黙っている。
「そもそもあなたは何者なの?見たところ一般人には見えないけど」
「……」
やはり男は黙ったままだった。

いくらかの沈黙の後。男は食わえていたフエラムネを噛み砕き、
「残念ですが私の依頼についての質問には答えられません…」
表情一つ変えずに言った。
…ますます男の怪しさが増していく。
ピアニもまた男を不審そうに見つめていたが、
「………そう、ならいいわ。お邪魔して悪かったわね」
深くは突っ込まずにあっさり身を引こうとした。
「え!?何でっすか!?めっちゃ怪しいっすよこいつ!」
僕はこいつの判断に納得がいかなかった。
かといって深く突っ込むのもめんどくさくて嫌だが。
「ノラム。一応あたし達はあくまで『姫誘拐事件』の再調査でここに来てるのよ…確かにあいつめっちゃ怪しいけど」
「あ、そっか」
言われてみれば別に僕らは不審人物をお縄にしろなんて任務は受けていなかった。
あの男が何をしようと僕らには関係ないことだ。
というよりは、下手すればあのフエラムネ男も僕らと同じ国警の他人に言えない重要任務で来た…なんてことも有り得るため無闇に任務外の行動をしない方がいいのである。
「だからほら、あたし達も任務に戻りましょ。ここらへんは調べ尽くされてあまり手掛かり残ってなさそうだし」
「そっすね…」
僕はとりあえずピアニに従うことにした。

「…あ、最後に一つだけいいですか」

「…まだ何かあるんすか」
溜め息をつき、僕はめんどくさそうに男の方へ振り向こうとする。




―――はずだった。




「ッ!!?」
その時、目の前を何か大きな塊がすばやく通過した。
塊は僕の後方の壁にブチ当たり、壁に大きく穴を開けていた。
一瞬僕は訳もわからずかたまったが、すぐにそれが誰の仕業かわかった。
「てめー…一体何のつもりっすか…」
フエラムネの男だ。
「お二人にはまことに申し訳ないのですが…先の質問で我々の関係者ではないと判断しましたので、排除させてもらいます」
男がフエラムネを食わえる。
「は?いきなり何言って…」
「 死 ん で く だ さ い 」
言い終えるまもなく、気の抜けたフエラムネの音が鳴った。
すると男の周りの土が不自然に浮かび上がる。
「魔法…!?」
次の瞬間、男が先程の土の塊が無数に放った。
咄嗟に回避の姿勢をとり、一発一発を的確に避けつつピアニの元へ駆け寄る。
「ちょっとこりゃまずいっすよ…!一旦逃げるっす!!」
「え、ちょ待っ」
少々強引にピアニの手を引き、来た道を全速力で戻るのだった。

「…クク、逃がしませんよ」


男の笑い声が、後ろの方で聞こえたような気がした。







―――再び薄暗い通路。
「やべぇ…道どうだっけ…」
「え、あんたまさか迷って」
「そそそそんなわけねーっすよ!!!ほ、ほらもうすぐ出口っすよ多分!」
「多分って言ったわね!絶対迷ってるわよねこれ!?」
勢いよく逃げ出したはいいが完全に迷った。
一応今のところフエラムネの男は着いてきていないようだが…。

「とにかく、選択肢としては『今ここであたし達がアイツを何とかする』か『今は逃げて後で他の人に何とかしてもらう』か、ね…」
「どっちも嫌っす」
「そうよね…」
うんうんと二人一緒に考え込む。

しかし、
「……見つけました」
気が付くとすぐそこにフエラムネの男が迫ってきていた。
近くで見るとますます不気味である。
「うわああああ出た!!!!見つけるの早すぎっすよ!」
「そりゃ魔法使えば見つけるの早いわよあんた…」
ビビる僕らにも動じず、男は何食わぬ顔でフエラムネを取り出す。

「今度こそ死んでください」

フエラムネを食わえると、ぴーひゅるるるぅと気の抜けた音色が辺り一面に反響した。
「まずいっすよ!」
銃を取り出しすぐさま男に向ける。
しかし視界は魔法により発生した小さな砂嵐により塞がれてしまう。
どうやら、男はフエラムネを吹くことで魔力に指令を送り魔法を使っているようだ。
「ッ!くそ!」
視界が塞がれ、能力どころか狙うこともままならない。

だが次の瞬間、その砂嵐は突然消え失せる。
その中にフエラムネの男はいた。
しかし。
「1…2…3…4人…?」
魔法による幻覚か、分身か。


男の姿は、確かに4人になっていたのだ。