そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

二章 ⑥

薄暗い中で、ピアニの小さく荒い息遣いが聞こえてくる。
2年前もそうだった。あのとき背負っていたこいつも、小さく荒い、すぐに聞こえなくなってしまいそうな弱い息遣いだった。

ただあの時と今の状況は少しだけ違っていた。

「…さすがにびびりすぎっすよ…あと脇腹掴まないで痛い痛い!」
「あ、あんたがお化けとか変なこと言うからでしょ!!」
「ひでぇ責任の押し付け方っすね…」

今回のピアニの息遣いは、ただ幽霊にびびって呼吸が乱れているだけなのだ。
事件の調査中に僕が幽霊もどきを発見してからと言うもの、この有り様だ。
「でもね、ノラム」
「なんすか…あと僕の手握らないで痛い痛い痛い」
なんとか服の裾を掴ませる。
ピアニは相変わらずカクカク震えていた。
「お化けは恐いけど…あんたと一緒にいるとちょっと安心するっていうか…」
「どーいう意味っすかそりゃ」
「ううん、やっぱなんでもない」
呆れ気味に返したはずだが、なぜかピアニは笑っていた。
頼りにされてるのか、2年前のあのときから時折こんなやりとりがよくある。
だが結局、あのときのピアニを助けたのは『あの人』で、僕は助けようとして途中で力尽きてしまったが。


「…ふぅ、大分恐くなくなってきたかも」
しばらく経つとどうやらいつもの調子を取り戻したようだった。
「あの、さ」
「まだ何かあるんすか」
今日はやたらと話しかけてくる気がする。
いつもはテキパキと仕事をこなすピアニとのギャップに、少し戸惑いながらも返事をする。
「…あんたは何もしてないかもだけど…その、さっきはありがとう…ね」
何に対しての感謝なのか、僕は残念ながらいまいちよくわからなかったが、とりあえず「どーいたしまして」と呟いてみることにした。




―――また少し建物内を調べつつ歩いていた。
結局、建物内の調査でいい情報は得られなかった。
残す場所はシャインが倒れていたという広場だ。
もうすでに取り調べ前の調査報告書があるわけだが、一応行ってみることにした。


どことなく闘技場のような場所。
先程の薄暗く狭い通路とは違い、広く、そして空が見えている。
地面には様々な壊れた武器が散乱しており、廃墟のようなおざましさも感じた。
だが、それよりも先に視界に入ったモノがあった。
「…誰かいる」
広場の中心に一人の人間が立っていた。
体格的に男だろうか。
しかし、ここに来ているのは僕らだけのはずだ。
「ね、ねぇあれってもしかしてさっきのお化け…?」
「どー見ても人間っすよ」
「そ、そうよね…」
僕もピアニも、謎の人物の存在に不信感を募らせていた。

「そこにいるのは誰っすか!」
ためしに聞こえるよう大声で呼んでみる。
すると、謎の人物は気付いたようでこちらを振り向いた。
しかし、
「……………!?」
後ろからはそうでもなかったが、謎の人物の姿はあまりにも異質だった。
紫色の髪にぱっちりと開いた眼球。黒いローブを着こんだ姿…どれをとっても怪しさがあるが、それ以上に異質なものがあった。
「フ、フエラムネ…?」
男の口にはフエラムネがくわえられていた。
なぜフエラムネなのか。正直びびる。
「ぴひゅーぴーしゅるるー」
「!?」
「しゅぴるーぴーぴぴぴ」
突然フエラムネを吹く男。
「ぴーぴーぴーひゅるるー」
「人間の言葉でお願いします!!!!!」
「ぴょっ!?」
切実に叫ぶ。
どうやら通じたらしく、くわえていたフエラムネをボリボリ食べると、人間語で話してくれた。
「…これはどうも、お二方」
謎のフエラムネ男は、意外にも丁寧な言葉遣いだった。
「えーっと…」
ピアニはまだひきつった表情のままだ。
「私が何者か気になっているようですね?」
「え、あ、はい」
目を不気味にぎょろつかせる男。

「私は…ある依頼を受けてここへ来た、ただの魔術師ですよ」

そう言った男の顔は、どこかニヤついていたように感じた。