そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

二章 ⑤

『厄災の国』。
しかし名前が不吉なのか世間では『魔法の国』と呼ぶのが一般的らしい。
僕とピアニはその今回の魔法の国の事件があった城下町へと足を運んでいた。

「ふぁ、調べ直しっつってもなんだかまだねみーっす」
「ノラムあんたね…ちょっとやる気になったと思ってたのにもうそんななの!?…ってかこの時間にもなってまだ眠いの!?」
時計を見るともう4時を過ぎている。
確かにちょっとおかしいくらいの睡眠欲だが先程取り調べという無理をしてきたのでその反動が出たのだろう。
「頑張れる程度には頑張るっすよ…」
僕はピアニに適当な相づちをうちつつ城下町の中心にそびえる城を見る。
大きな屋敷のようにも見えるデザインだが、レンガ造りのその見た目と雰囲気はまさに王の住む城だ。
「でけぇ城っすねぇ」
「あれが例のお姫様の住んでた城よ。…もっとも今はいろいろあって自分磨きの旅に出ちゃったみたいだけどね」
ピアニは自前の手帳をパラパラ捲っている。
「でもいいな…一度でいいからあんなお城に住んでみたい!」
手帳を捲る手を止め、今度はうっとりと城を眺める。
大方、ひらひらフリフリのドレスを着て自分がお姫様になった妄想でもしているのだろう。

……ドレス姿か。悪くはなさそうだが。
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「あー…妄想中すまんすけど調べ直しって具体的に何するんすか?」
はっ、と妄想世界からピアニが現実世界へと帰還する。
「そうね、まずは現場に行ってみる…とか。あくまでもあたし達は『裏組織』なんだから聞き込みは秘密裏って点ではNG、オススメはできないわね」
予想はしていたが、やはりこうなるのか。
だがそれしかないならば、さっさと終わらせるに越したことはない。
まずは現場に行ってみることにする。




――町外れの現在は使われていない処刑場が問題の傷が残っていた場所だという。
僕らは通路に残されていた牢と、その牢ごと破壊された瓦礫の山を見比べていた。
「こりゃまたえらいことにボロボロっすねぇ」
シャインと第三者が戦った広間とは別に通路には一般の騎士とも争った形跡があり、通路の正面と後ろとのギャップがすごい。正面はもはや通路の原型をとどめていなかった。ところどころに転がった鎧の破片とおぼしき物体が戦闘の激しさを物語っている。
「滅茶苦茶な壊れ方ね…いくら騎士が相手でもここまでするものなの…?」
「魔具か何かじゃねすか?今の時代魔具も魔法も異能力もあるんすから何でもアリって感じっす」
実際これだけ見ても何とも言えないのが事実である。
せめてもっと落とし物とかあれば話は別なのだが…推理漫画や推理小説でもないかぎりそういったことは稀だろう。
他の場所も調べてみるべきだろうか。

そう考えていると不意に視界の隅で何かが動いたのが見えた気がした。

「あ…?なんすかあれ」
「どうしたの?」
「今向こうで何か変な人影みたいなのが…」
僕がそう言うとピアニの顔がみるみると青ざめていく。
「え、ちょっとやめてよ!あたしお化けとかそういうの苦手なんだけど…」
ピアニがそう言った瞬間、僕は笑いを堪えきれずに吹き出してしまった。
「何笑ってんのよ!」
「ぶは…だって、だってこの年齢で…ぶはははは!」
狭い通路に僕の大きな笑い声が響く。
「まったくピアニは怖がりっすね~!お化けじゃないってすぐ見てきてやるから『怖がりなピアニちゃん』はそこで待ってるっすよ~」
だがその瞬間、服の裾を掴まれすごいパワーで引き寄せられる。
そしてそれとは別に震えた声が僕の耳に入る。
「………………いで……」
「え?」
「…お願い…します…一人に…しないで…」
表情を見ずとも完全に涙目になっているのがわかった。
先程馬鹿にされて恥ずかしかったのか、お化けがいるかもしれないという中で一人でいることが怖いのか、あるいはそのどちらもなのかはわからないが、とにかくピアニを今一人っきりにするのはさすがに可哀想だ。
まさかここまで幽霊が怖いとは知らなかった。
そういえば夜ホラー映画をテレビでやっているときは早めに寝ていたような…。
「…わかったっすから手を離すっす」
「…うん」
完全にお化けにびびる情けない頭脳担当の相棒と共に、僕は事件の調査ついでに人影を追うことにした。