そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

二章 ④

「…つまり、あなたがこの事件の主犯じゃないってこと?」
ピアニが疑わしさを交えた瞳で見つめる先――騎士長シャインが話した、魔法の国での事件の概要はこうだ。
『姫の誘拐』はシャインが主犯ではなく、命令されてやったことらしく、また誘拐までは順調に進んだものの何者かによってシャインは倒され、計画は阻止されてしまったということらしい。
実際姫が幽閉されていた建物内にはいくつか戦闘の痕跡があったという。

「じゃあ誰だっていうんだ?騎士長であるあんたに命令できる人間なんてそうそういないぞ」
ブルーアイズの質問にシャインは少々ぎこちない様子で答える。
「…ディザスター王だった」
「何だって?」
「私が城内の自室で休憩をしていた時、突然部屋に入ってこられたのだ。そう、あれは…どう見てもディザスター王だった。私も信じられない事だったが…」
すると、ブルーアイズの隣で話を聞いていたリニアが資料を取り出した。
「その事なのですが…ディザスター王はその日王室から出ていない、という証言が王室を警備していた騎士から聞きました」
「何だと!?じゃああれは…あのディザスター王は何だったのだ?」
驚愕の表情を浮かべるシャイン。
嘘をついている、と言ってしまえばそこでおしまいだ。しかし今の彼の表情を見るにどうも嘘をついているようには見えない。
だとしたら一体…。
「『ニセモノ』ってことっすか」
僕がそう言うと、同じ考えだったのか他の三人もゆっくり頷く。
「そう考えるべきよ。…少なくともあたしはこの人が嘘をついているようには見えないわ」
「俺も同意だ」
「私もです」
もしそれが正しいとして、そのニセモノは一体何者で、何の目的があったのだろう。
「ニセモノ…か、何者かは見当がつかないが目的が何かは心当たりがある」
シャインはそう呟いて眉間にシワを寄せた。本人もショックだったのだろうか、無理に冷静さを保っているようにも見える。
「私もあまり詳しくは知らないが…もしかするとそのニセモノはディザスター王家に代々受け継がれているという『魔女の力』を利用しようとしていたのではないか?」
「魔女の力…?」
聞いたこともないワードだ。
そう思っているとリニアが事件の資料を取り出した。
「強力な魔法を扱えるという一種の才能のようなものです。…ただ、才能といっても異常なレベル。普通の人間ではいくら訓練してもたどり着けないくらいの才能…そうですね、例えるなら生まれた瞬間に全ての言語を完璧に話せるくらいすごいです」
「とんでもねぇっすね!」
そんな力を持つ者がいたのなら、それは立派な動機になりうることだ。
…ニセモノ説は、筋が通っている。
だがシャインが何かしら嘘をついている可能性もある。
そうは思えないとは言いつつも、今の段階ではまだ断定できるものではない。

「――ちょっといいかシャインさん」
「?…たしか、ブルーアイズと言ったか…何かあるのか?」
ブルーアイズは手持ちの資料とにらめっこしていた。
「ニセモノは後々調べるとして…俺は俺で一つ気になっている事があるんだ」
そう言ったブルーアイズは資料のある部分を指で指し示す。
そこにはシャインの倒れていた現場についてがまとめられていた。
「あなたは『何者かに倒された』と言っていた。現場からも戦闘の痕跡が見られたからそれは確かだろう」
「…何が言いたいのだ」
「確かあなたは魔法の国一の剣士だったはず…それなのに、一体誰があなたを倒したんだ?」

沈黙。その中でシャインだけがゆっくりと口を開く。

「―――わからない。そこの記憶だけが酷く曖昧だ…」
シャインは頭に巻かれた包帯を気にしながらそう言った。
「……」
ブルーアイズは半ば飽きれたような表情である。
「ただ、」
「?」
「…悪夢を見ていたような、恐怖の感情だけが残っている。…自分では、いや、人間では敵いそうにもない強大な何かがいたような気がする」

……嘘臭い。すごく。
ここまでくるとさすがに怪しむ。
「そんなもんが実在するんすか?」
「一応、現場には強力な魔法を使われたような痕跡が残されていたらしいけど…なーんか引っ掛かるのよね」
手帳をパラパラ捲るピアニ。
「現場の建物の損傷は魔法で説明がつくとして…問題は倒された本人の『鎧』の方ね」
「鎧…っすか」
ピアニは資料と手帳との情報を見比べる。
「人の拳のような凹みがあったの」
そこでブルーアイズが補足を入れる。
「その凹みだが…実際の人の拳の大きさと比べると何倍も大きく、またその凹み周辺の部位は熱か何かによって溶けかかっていたらしい」
単純に考えてみれば『巨大な熱を纏った拳で殴られた』という結論にたどり着くが、そんな事ができるものなのだろうか。
だとすると…。

「もしかしたらそれ、魔女の力ってのを持ったお姫様がやったんじゃねーすか」
「そう考えるべきだろうな」
僕の仮説は、ブルーアイズとシャインとリニアも納得したようである、しかしピアニだけはどこか府に落ちていないように見えた。
「どうしたんすか?」
「…いや、なんでもないわ」
「そ、そうっすか」

僕は多少の違和感を感じつつ、取り調べは終了した。






―――取り調べが終わり、僕らは個人個人で先程立てられた仮説を調べることになった。
シャインは、その結果が出るまではまだ釈放されないとのことだ。

「ねぇ、ノラム」
ピアニはあれからどうも様子がおかしい。
「どうしたんす?」
「さっきの話…あんた本気でそう思ってる?」
「え…」
「おかしいと思わない?だって、そのお姫様が国一の剣士を倒せる実力を持ってるっていうならそもそもニセモノはそのお姫様の誘拐にシャインさんを使わなくてもいい訳だし…犯人がシャインさんだったらなおさら自分が敵わない相手を誘拐しようと計画するとは思えないわ」
「あ…!」
言われてようやく先程の違和感に気が付いた。
僕はやっぱり馬鹿だったのだ。
情けない…。
「ブルーアイズとリニアの先輩達はそれに気付かないまま…」
「いや、気付いてると思う」
「じゃあ何で…」
ピアニは周りに誰もいないことを確認する。
「わからないけど…あの先輩達、あたし達にもシャインさんにも何か隠してる気がする。」
「考えすぎっすよ…」
「だといいけど…」

――とにかく、この件についてもう少し考えてみるべきだ。
この事件は何か裏がある。

僕もそんな気がし始めていた。