読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

二章 プロローグ

降り続ける雨の音。冷たい風が僕の頬を撫でる。
傷だらけの身体が悲鳴をあげ、視界が徐々に狭まれていく。
背中からは弱々しい呼吸音が聞こえていた。
「大丈夫か!?おい!」
僕の呼びかけもむなしく、背負われた『少女』はすでに反応もできないくらいに衰弱しきっていた。


…くそ、もうだめか。ここで捕まるのか、あるいは背負っているこいつが手遅れになるかは時間の問題だ。
僕らは追われている身だ。
正確に言えば、背負っているこいつが。
だから僕がこいつを手放せば僕は追われることはなくなる。しかし…。

「っ…できるわけねぇだろうが!………おい誰か、誰かいねぇのかよ!!」
ふらつく足取りのなか、僕は顔を上げて前方を確認しようとする。
「………お、おいあんた…」
僕の視界の中には一人の少年がいた。おそらく同年代だ。
だが、今更この状況で見ず知らずの他人に、ましてや一人の少年にすがったところで何も変わらない。
けれども今だけはそんなことは考えたくなかった。藁にもすがる想いで少年に呼びかける。

「―――どうしたの?そんなにボロボロで」
すると少年はこちらに驚いた様子で問いかけてきた。
少し長めの黒髪に、茶色のコートと茶色の帽子。帽子で顔が半分隠れているせいかどこか不気味で妖しげな印象。

「がはっ…く、詳しくは後で…話す…ッ、た、助けたいんだ…こいつを」
「何で?」
「な、何でって…そりゃ、その…」
そういえば、なぜ僕はこいつを助けようとしているのだろう。理由はもうすっかり忘れていた。
そんな僕の心を見透かしたような表情で、少年はゆっくりこちらへ近付いてくる。
「理由もないなんて変だね?…見たところ、その子をここに置いていけば君だけは助かりそうなんだけど…」
「それは…」
随分と核心的な所を突いてくる。さっきそれで一瞬揺らいでしまったというのに。
「俺だったら捨ててるかな…自分が大事だからね。むしろ捨てない方が変わってる…かな?」
確かに、この少年の言うことはもっともだ。でも僕は――
「…後悔したくねぇんだ。最悪のケースが起こっちまったときに、自分が何もできなかったことに。たったそんだけだけど…人の行動理由なんてそんなもんだろ」
強く。傷だらけでも、意識が薄れていようとも、その言葉だけは、僕は強く少年へ伝えていた。
「くっふ、あは」
「あ?」
すると少年はケラケラと笑いだしていた。
「あっはっはっはっはっは!」
「な、何だよ…」
「ふふ、君すごくイカれてる」
少年は笑みを含んだ表情で顔をすぐ近くまで寄せてくる。
帽子に隠れて見えなかった茶色の瞳が、僕の目と合った。
「な、なな、な…!?」
少年の中性的な顔立ちのせいか、もしくは他人との関わりがあまりないせいかどこか緊張してしまう。
「君、名前は?」
「え、の、ノラム…フラット…だけど…」
「俺はフォル、よろしくね」
なんでいきなり自己紹介なんか…そう思っていると、フォルと名乗った少年は口元をニヤリと歪ませた。
「助けてあげるよ、君を」
「え?」

「――だから、君を助けてあげようってことさ。もちろん、背負ってるその子も一緒に、ね?」






――雨の降るなか、『あの人』は現れた。

2年経った今の僕でも返しきれない、大きな貸しを作って。