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そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

一章 エピローグ

夜の静けさが辺りを支配していた。
フォルとシャーラは、静まり返った夜の城下町を抜け、城のすぐ目の前まで戻ってきたところである。
「やっと戻ってきましたぁ…」
「いやぁ長い一日だったねぇ」
シャーラはのびをしながら今日の事を改めて振り返っていた。
だがしかし、それは途中で終了した。
「ぁ…吐…」
彼女は思い出してしまったのだ。
昼間のアレを…そう、それは彼女にとっての一番の黒歴史となったものだった。
「楽しかったね!色々」
フォルはここぞとばかりに悪戯な笑みを浮かべて痛いところをついていた。
「いいじゃないですかあのことはもう!」
シャーラはポカポカとフォルにマシンガンパンチを食らわせる。
だが、すぐに唐突にその手を止まった。
彼女の脳裏に浮かんだのは、たった一つの不安だ。
「…明日には旅立っちゃうんですか?」
フォルは旅人なのだ。
いつ旅立ってしまうかなどわからない。
もし旅立ってしまえば、寂しい。
友達が離れていくのは、寂しい。
「やっと…やっとできた友達なのに…」
別れるのは嫌だ。
そんな気持ちがシャーラの心を締め付ける。
フォルはしばらく沈黙していた。
「……だったら」
しかし、悲しむ彼女を見かねたのか、フォルはようやく口を開いた。


「――さよならが嫌なら俺と一緒に旅でもしてみる?」


「……え?」
突然の勧誘に、シャーラは驚いて目を丸くした。
それは、彼女が最も望んでいることだったのだ。
「でも君はお姫様だろ?だったら国の事を優先しなk
「い…いいんですか…わたしなんかがあなたと一緒に旅をしても…」
フォルの言葉を無視してキラキラと星のように瞳を輝かせ彼女は言う。
(うーん…諦めさせて上手く別れを切り出すつもりだったんだけどな……まあいいか)
フォルは若干予想外の返答に戸惑っていたが、それもいいだろうと口元をにやけさせる。
「そうだよ。旅に出れば君の知らない世界がある!…まぁ君の両親がどう言うのかはわからないけれど……どう?乗ってみる?」
彼は大袈裟な動きでシャーラに尋ねた。
「は、はい!是非とも!!」
そう言ってぐいぐいと詰め寄るシャーラを抑えるフォルは、
「国の事とかもあるけど大丈夫なの!?…両親が許可してくれるとは思わないんだけど…」
と不安そうに尋ねる。
それを聞いたシャーラはハッとした表情になった。
「あわわ…そ、そうでした!じゃあ話をつけないといけないですね…!」
「お姫様頑張ってね~」
「何言ってるんですか!フォル君も来るんですよ!」
「えぇ!?なんでぇ!」
シャーラは無理矢理手を引いてフォルを連行する。
「当たり前じゃないですか…あなたがいないと話がつけられないんですよ!」
確かに保護者になる方も話し合いに加わらないといけないな、とフォルは納得した。
すると、唐突にシャーラがフォルの方へ振り向く。
「あともう一ついいですか…?」
「?なあにお姫様?」
シャーラはフォルの手を繋いだまま照れ臭そうにしている。
「あ…その……わたしの…呼び方の事なんですけど…」
頬を赤らめたまま彼女は続ける。
「『お姫様』…じゃなくて、ちゃ、ちゃんと名前で呼んでもらいたいな~って…」
これから旅の仲間に加わるかもしれないのに、お姫様では少々恥ずかしいものがある。
そう言った意味合いだが、どうにもこういった話は言いづらい…とシャーラは感じていた。
フォルはきょとんとした表情をしていたが、すぐにその意図を読み取る。
「あぁそうだね。……まだ決まってないけど、一応先に言っておくよ。…これからよろしくね、『シャーラちゃん』!」
それを聞いたシャーラは今までで一番の笑顔を見せると、
「よろしくお願いします!フォル君!!」
と言ってフォルの手を引いたまま城へと入って行く。
そんな彼女を見て、フォルは小さく呟いた。
「ま、こういう展開も悪くはないかな…」
「え?何か言いました?」
「いいや?なんでもないよ?」
にやにやとしている彼だが、満更悪い気もしていない。
むしろ、とても清々しい気分なのだ。

――また、人を信じれるのだろうか。
今度は、『友達』と呼べる人と共に歩んでいけるのだろうか。
そんな期待を胸によせながら、フォルはやりとおしてみることにした。
自分で選んだ…たった一つの選択を。