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そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

一章 ⑬

開けた空間は闘技場のようであり、しかしそれとは全く別の空気が感じられた。
所々に使われなくなった武器や処刑に使われた武器などが散乱している中で、シャインは想定外の来訪者を見つめていた。
「騎士達はどうした?…それと捕らえていた姫は?」
彼の視線の先には、フォルが立っている。
「聞かなくても大体予想はつくんじゃあないの?」
フォルは軽い調子でそう言った。
シャインは全てを察し、諦めたようにため息をつく。
「……運が悪いな。まさかこんな事態になるとは」
「俺も驚いたよ。騎士長様、まさかアンタが黒幕とはね」
フォルはニヤつきながら本題に入る。
「――なんで俺を殺そうとしたのかな?」
「何?」
「アンタは騎士達に俺を抹殺するように命令を出したんじゃないのか?」
フォルはシャインがしらを切っていると思ったが、どうやら違うとわかる。
(どういう事だ…?)
彼は少々不審に思った。
「じゃあ一体どういう―――」
彼が事情を聞こうとした瞬間、彼の目の前を一本の矢が通りすぎる。
「ッ!?」
突然の攻撃に驚いたフォルが矢の飛んできた方向を見る。
するとそこには、一人の騎士がボウガンのようなものを持って立っていた。
その騎士は大声で叫ぶ。
「不覚をとってしまい申し訳ありませんシャイン様!負傷のためこれくらいしかできることはありませんでした!!」
フォルは驚愕した。
何故なら彼は、先程騎士達を滅多打ちにしたのだ。
立ち上がれるはずがないのだ。
(何だ…いよいよ訳がわからなくなってきた…)
この騎士は一体どこから沸いてきたのだろう。
そんなことはいざ知らず騎士は続ける。
「しかしながらそいつは姫を利用し国を脅かそうとする悪人!どうか正義の鉄槌を!!!!」 
「…おいおい…」
フォルが弁明しようとする否や、シャインは背中に背負った剣に手をかける。
「なるほど。お前もお前でそういった策略があったか」
そう言うとシャインはすぐさま背中の剣を抜いた。
剣は黒く、鋭く…さながら物語で見る竜の牙のような形状と鋭さを持っていた。
「下がっていろ。後は私が何とかする」
シャインはそう騎士に言うと、騎士は「ご武運を!」と言ってその場から立ち去っていった。
シャインはそのまま、フォルを見据える。
「聞こう。今手を引けば見逃す」
しかしフォルは、首を横に振った。
「…どうやらどこかで妙な情報操作があったみたいだね…」
そう言うと彼は適当に落ちていた蛇腹剣を拾い上げる。
「これでも使ってみようかな。……まぁ戦って解決するのは嫌いじゃないよ」
簡単に素振りをしたあと、シャインへ向きなおる。
「――さて、と。さっさと終わらせようかな」

両者共に構えをとり、互いに殺気をぶつけ合う。
思いきり踏み込み、そして――

二人が激突するのは、その次の瞬間であった。



――上空に見える月がシャーラの銀髪を照らす。
やっとのことで処刑場を脱け出し、現在城下町に入ったところである。
もう少し頑張れば城にたどり着けるであろう。
だが彼女の視線は城でも星空でも城下町でもなく、今逃げてきたばかりの処刑場に向けられていた。
(フォル君…大丈夫でしょうか……?)
フォル・A・バイムラート。彼は彼女にとっての初めての友達だ。
彼は処刑場に用があると言っていたが、果たして大丈夫なのだろうか。
そういった心配もあってか、シャーラはどうにも一人だけ帰るのは納得がいかなかった。





――刃と刃がぶつかり合い、火花が散る。
彼らの決戦は今、始まったのだ。

「……なぜだ」
剣を振り続けながらも、シャインは腑に落ちない様子でフォルに問う。
「国を脅かそうとするためか…しかしわざわざそれだけでここに来たとは到底思えん」
「………」
嵐のような蛇腹剣の猛攻をかわしながらも、冷静に質問を続ける。

「――お前は何のためにこんなことをしている?どんな覚悟でここへ来た?何かのために誰かを犠牲にするのか、誰かのために何かを犠牲にするのか、………お前はどちらなのだ?」

するとフォルは攻撃を一旦中断し、半歩後ろへ下がった。
「どっちでもないさ」
彼は冷たくそう言うと、持っていた蛇腹剣の刃をばらけさせ、鞭のような形態へと変形させる。

――蛇腹剣は『魔具』の部類に入る武器である。
カッターの刃のように小さな無数の刃をワイヤーで繋げ、見た感じでいうと普通の剣と大差はない。
しかし普通の剣として使うのとは別に、刃をばらけさせ鞭のように使うことが可能なのである。

「ただ…」
フォルは柄を強く握りしめて踏み込む。
「今は倒す相手がいるだけだよ」
そして思いきり剣を振り、シャインを斬り裂こうと『刃の鞭』が襲い掛かった。
デタラメな扱いではあるが、それにはれっきとした人を斬る役割がある。
「クッ……!」
シャインは間一髪で『刃の鞭』を避け、フォルに向かって走り出す。
「だが私も負けるわけにはいかん。お前を倒し、国を厄災から救う!!」
フォルのすぐ懐まで潜り込み、黒剣を突き上げる。
剣が蛇腹剣と重なり、再び火花が散った。
「本当にそんな考え?」
黒剣を弾き、体勢を立て直す。
「アンタはただ誰かの手の上で踊らされているだけなんじゃないかな?本当はただ理由をつけて力を使いたいだけなんじゃないのかな」
そしてカウンターを喰らわせ、シャインの鎧の右肩部分を破壊した。
「…ッ貴様ァ!!!」
シャインが憤怒の声をあげたが、フォルは何一つ動じる事なく笑顔である。
「大事なのは自分だけだ。ただ満足できる場所さえ手に入れられればそれでいいんじゃない?」
「ふざけるな!」
シャインは声を荒げる。
「お前のような子供に何がわかる!!」
彼は黒剣を高く振り上げ、重い攻撃を連続で叩き込む。
「わからないし、正直もう知りたくもない」
どちらが正義かなんてわからない。
どちらが悪かなんてわからない。
それとも、どちらも正義なのか。
どちらも悪なのか。
人の信念のぶつかり合いは、善悪ではなく強い意思に基づいて行われるのだ。
「策略も、善悪も、人の心も全部知ったこっちゃない」
フォルはシャインの怒りの猛攻をかわす。
「お前…!」
シャインは大きく踏み込んだ勢いを利用して剣を元に構え直した。
「一体今まで何を見てきたというんだ」
「……ククク」
フォルはニヤリと口元を歪める。
「アンタの考えじゃわからないだろう。裏切られ、恐れられ、『普通』すら手に入れられなかった者の気持ちは」
彼の生きてきた人生は、人の生きるべき道筋とは大きくズレてしまっていた。
人としてあるべきものが著しく欠損した過去。
そんなことを心の奥底に封印しても尚、彼は人を信じる気になれない。
本心は明かせない。
傷は深い。
「いつか裏切るかもわからない誰かのために…俺は戦えない」
フォルは蛇腹剣を剣の形へ戻し、いっきにシャインの元へ飛び込む。
剣を振り、その刃がシャインの頬をかすめた。
(…こいつ…!この短時間で剣の使い方をほぼ修得している…!?)
デタラメな動きから、無駄のない動きへ。
明らかに変わっていた。
ヤバいと思ったのかシャインは間合いをとるため、ズリズリと後退りをした。
「お前がどんな覚悟で戦っているかはわかった」
剣先に意識を集中させる。
「だが、お前の負けだ!」
すると剣先から徐々に柄まで炎を纏っていく。
黒剣が炎に包まれる。
「魔法…!?」
そう、騎士とはいえシャインはこの『魔法の国』の民なのだ。
シャインは勢いよくフォルに剣を突き立てて突き進んでいく。
「――オォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
炎と斬撃が、フォルを追い詰める。
「やばっ…」
フォルが途中でバランスを崩し、蛇腹剣を弾かれてしまう。
くるくると弧を描きながら蛇腹剣が地面に突き刺さった。
「終わりだ」
「――――!」
シャインはその隙を見計らい、黒剣を思い切り突き出した。



――鮮血が、その場を紅く染める。
「が…ぁ……ごはッ………」
黒剣の刃が、フォルの腹部を貫いていたのだった。