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そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

一章 ⑫

「―――…っ、」
頭がガンガンする。
血こそ出ていないものの、かなりの痛みが残っているようである。
「………」
シャーラが目を開けると、そこには石造りの天井があった。
「ここは…?」
起き上がって周りを確認すると、うっすらと射し込む月明かりに照らされた鉄格子が目に入った。
独特のホコリ臭さからすぐに牢屋だということがわかった。
どうやら捕まってしまったらしい。
気絶していたことからかなり時間が過ぎたのだろう。
使用されていない牢屋なのか捕まっているのは彼女だけのようだ。
恐る恐る鉄格子の外を覗くと、薄暗く細長い通路が左右に広がっていた。
「しかし一体誰が…?」
彼女は自分を連れ去らった人物の顔は見れていなかったため、犯人はわからなかったが、連れ去らった理由は何となく予想できていた。
おそらく姫という立場から。もしくは自分の持つ『魔女の力』が原因なのだろう。
シャーラが思い当たるのはそれくらいしかなかった。
初めての外出でこんなことになってしまうとは、彼女自身も全く予想打にしていなかった。
少し他人と違うだけで、こんなに変わってしまうものなのか。
「わたしは…」
何故自分だけなのだろう。
普通に友達を作り、普通に遊び、普通に暮らしたかった。女の子らしくしていたかっただけなのだ。
たったそれだけであった。
涙が、シャーラの頬を伝わりこぼれ落ちる。
「なんで…なんで…」
壊れた人形のようにただただそれだけが口から出ていく。
何故こんな境遇に生まれたのだろう。
これからどうすればいいのだろう。

「…………?」
しばらくひたすら自問自答を繰り返していると、遠くから足音が聞こえてくる。
自分を捕らえた人物なのだろうかと身構えたが、すぐに違うとわかった。
「あ…」
何故ならそれは、シャーラの知る人物だったからである。
少し長めの黒髪に、茶色いコートを着た少年。
生まれて初めてできた、友達。
「…お姫様?」
キョトンとした表情でシャーラを見つめるその人物こそ、彼女の友達である『フォル・A・バイムラート』であった。



――フォルは牢に入れられているシャーラの姿を見た。
「どうしたの?こんなところで…って泣いてるの?」
ボロボロ涙を溢しているシャーラの姿にフォルは驚く。
「ふぉるくん…うぅ……あなたこそどうしてここへ?」
目に溜まった涙を拭いながら彼女は言った。
フォルはフフフと不気味な笑みを浮かべる。
「こちらはこちらでひどい目に合わされたからね…ちょっとここにいる犯人に用があるんだ」
するとシャーラは顔を俯かせる。
「…怖くは…ないんですか?」
「いいや?ないよ」
「そうですか…」
彼女は下を向いたままである。
「わたしは怖くてたまりません…もう自分の中の得体の知れない力すら怖くて怖くて…どうしたらいいんでしょうか…」
再び目に涙が溜まっていた。
フォルはそんな彼女を見据えたまま言う。
「そうだね。確かに自分がどうなってるかすらわからないっていうのは怖い事だ。でもそれは当たり前だろ?」
「……」
「自分だけで自分を理解しようとするなんて限界がある。だから他人と関わって自分を見てもらうんだ」
自分を理解したいから、互いに相手の事を見ている。
相手を理解したいから、他人と関わって自分を理解していく。
「だったら…」
シャーラは、ゆっくりと口を開く。
「世間知らずで他人に迷惑ばかりかけても…こんなおかしな力があっても…わたしは『人間』として生きていていい存在ですか?」
フォルは、ニコッと笑った。
「当然さ。それが人間じゃないのかな?」
人に迷惑をかける事は誰にでもある。
魔法が普及したこの世界でちょっとばかり他人と違っていたとしても、何ら不思議ではない。
どれもこれも全部混ざり合ってできたそれこそが、人であるから。
「…化け物には無理な話さ」
「え?」
「いいや、なんでもないよ」
フォルは自虐的な自分の言葉を誤魔化しながら、くるりと向きを変える。
「じゃあお姫様。最後に一つ」
「なんですか?」
フッとフォルが微笑する。

「その壁を破壊して脱出しなよ。君のその『魔女の力』で『人間』を助けられるか試してごらん?」

彼はそれだけ言うと、通路の先へと進んでいった。




――フォルが行ってしまった後に、シャーラはやっとの事で恐怖心を抑え込むことができた。
彼の言っていた事。
彼女自身の力で人助けができるのか。
やってみなければわからないが、何故だか今はとても自信が持てた。
幸い周囲に人の気配はない。
シャーラはペンダント状にしていた魔具を手に取り、四角く平べったい形状へと変化させた。
立ち上がり、鉄格子の方へ体を向ける。
「よし…」
そして、集中して魔力を込め…解き放った。
目の前を塞いでいた壁が発生した衝撃波によって破壊され、外の世界が露になる。
「で、できました…やった!」
外からは冷たい夜風が流れてきた。
確かに、できる。
力の使い道をやっと見つけた。
シャーラはその喜びを噛み締めながら、自分を捕らえていた場所から脱け出すのだった。




―――フォルは歩みを進めていた。
目的は処刑場にいるシャインに会うことである。
「まぁだけど…そんな簡単に会えるわけないよねぇ…」
そんな彼の前には、おそらくシャインの命令によって集められた騎士達が、剣を携えていた。
「なんだ貴様は!」
騎士達は構えをとりながらフォルを警戒している。
「やぁやぁお勤めご苦労様みなさん」
そんなことはお構いなしにフォルはケラケラと笑いながら騎士達へ近付いていく。
「侵入者なら容赦せんぞ!!」
「どうぞお構いなくかかってきてよ」
「貴様!!!!」
彼の挑発に乗った騎士達が突撃してくる。
それをフォルは―――

「げんこつの差し入れどうぞ」

軽めの打撃で凪ぎ払っていく。
見るとその打撃を行っている左腕は元の腕とは違い、どことなくドラゴンと思わせるような鱗と鋭い爪があった。
淡く光る真っ白な皮膚に紅い模様。
そして、金色の鎧のようなものとメーターのようなものをつけたその腕は、軽々と騎士達の鎧を破壊していく。
「ぐわああああああああああ!!」
騎士達の悲鳴や絶叫や断末魔が飛び交う中、フォルはニヤケ顔でただただ左腕だけを滅茶苦茶に振り回していた。


――打撃の嵐が止んだ後は、瓦礫の山がフォルの視界を埋め尽くしていた。
騎士達の姿は見えず、そこにはフォル一人だけが立っている。
「はぁ…これくらいやれば起き上がってこないかな?」
容赦ない攻撃だったが、彼は騎士達を殺すつもりはないらしく、瓦礫の隙間から呼吸ができる穴くらいは開けておくのだった。
「さて、騎士長様に会いに行こうかな~」
そう言うと彼は土埃が舞う中を再び歩き出した。

ここに来た本来の目的を、果たすために。