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そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

一章 ⑪

騎士長シャインは、古びた処刑場の中心にいた。
その瞳には、どこか迷いも感じられる。
しかし彼には、果たすべき任務があった。
「シャーラ姫の身柄の確保…か。王は一体何を考えているのだ」
数日前、ディザスター王は突然そう彼の元へ持ちかけてきたのだ。

――この魔法の国のディザスター王家は生まれつき魔法の扱いに長けた力を持っているが…シャーラは、さらに一際大きな力を持ち、下手をすれば国ごと崩壊させる魔法を使いかねない。
そのために城に隔離しているが、安全のため取引に協力してほしい

…という訳だった。
少々ふに落ちない点があるが、他でもないディザスター王の考えでもあるので応じることにしていた。
忠義を尽くすのは騎士のつとめなのだ。
シャインは下手に考えるのはやめにしようと、静かにその場で待つ事にした。





――誰もいないはずの城下町に、数人の人影があった。
「いきなり襲ってくるなんてアンタらそれでも騎士なの?」
そのうちの一人…フォルは、淡々と説教していた。
騎士達は地面に正座させられており、ある者は鎧が砕け、ある者は刃が折れた剣を横に置き、またある者は顔にアザを作っていた。
「いやもうホントすいません!ちょーはんせいしてます!ゆるしてください!」
情けなく騎士達は謝罪を始めたのをフォルは冷ややかな視線で見下す。
「嫌だ」
彼は間接をゴキゴキ鳴らしつつ「どうしてか弱い民間人を襲ったの?」と笑顔で聞く。
(か弱い…?)
(さっきコイツおれらを一発でボコしてたよな…)
(というか人なのかコイツ…)
(今笑ってるけど相当怒ってるぞ…?)
ヒソヒソと会話をしている騎士達だったが、フォルが一際大きくグキリと間接を鳴らすと、
「うわああああああすいません全部吐きます!!!」
とへこへこ頭を下げるのだった。




――フォルは大きくため息をついた。
「処刑場…?ここから逆方向じゃないか…」
彼は騎士達から事情を聞き出し、適当にその場で殴って気絶させて放置してあの場を立ち去った。
騎士達が言っていた事情はこうだ。

どうやら騎士長であるシャインが、自分を大きな犯罪を犯した罪人である…という情報を流し、騎士達に自分を抹殺するように命じたという。現在シャインは報告待ちのため町外れの処刑場にいるらしいとの事だった。

「…訳がわからない」
そう。
訳がわからないのだ。
もちろん彼は大きな犯罪を犯したわけでもない。
強いて言うなら不法侵入程度なのだが、それだけで抹殺しろと命じるだろうか。
何か他に騎士長の意図があるのかと考えたが、さすがに今日出会ったばかりの人間にするのは一体どういうことなのか。
「まぁ…会えばわかることだけどね」
月は雲に隠れて見えない。
暗闇に隠れたフォルの身体には、淡い光を放つ紅い模様があった。
身体中を巡る血管のように、彼の内に秘めている力を示すように、それは奇怪に脈打っている。
しかし彼はそれを気にもとめず、さも当たり前というかのようである。
「まさかただの勘違い…だなんて言わないよね?」
フォルはケラケラと笑いながら、処刑場へ歩いていった。




――ぴーひゅるるる…と、気の抜けた笛のような音色が聞こえる。
男は家々の屋上を行き来しながら、町の状況を見ていた。
「目的は魔女の強奪と国の混乱を招くことですが…上手くワタクシの思い通りに動いたようですね………人に化けて騙すなど簡単簡単。人は見掛けだけで物事を判別してしまいますからね…あの騎士達も、騎士長も」
男の目玉がギョロギョロ蠢く。
「ま、面白くなることを期待してますよ」

そう言うと、男はその場をあとにした。
彼は不気味に微笑する。
これから起こる仕組まれた戦いを楽しみにしながら。

その去り際にはまた、ぴーひゅるるる…という音色が聞こえるだけだった。