そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

一章 ⑩

町は静まりかえり、人の姿は見当たらなくなっている。
空を見れば、日が大分傾いているのがわかった。
「あれ?昼間は結構にぎやかだったのに…」
そう言いながらフォルは不思議そうに辺りを見回していた。
「夜が近づくとみなさんは家に帰るきまりになっているんです」
と、その後ろからついてきていたシャーラが説明する。
「何で?」
「厄災を呼び込まないため…と昔は言われていたそうなんですが…今はただその習慣だけが残っているんです」
「やっぱりちょっと変わってるなここ…でさ、君はそろそろお城に戻らなくていいの?」
「え?あ、あぁ…そうでした!」
シャーラはハッとした顔になる。
今まで外出という経験がなかったためか、こういった習慣は気にせずに生きていたのだ。
「わたしも戻らないといけないですね…フォル君はどうするんですか?」
「俺は自分の乗ってきた飛空艇で休む事にするよ」
「城には客人を泊める部屋がありますがどうします?」
「飛空艇で休む」
「えぇ!?」
フォルはきっぱりと断った。
もし自分が城へ行けば確実に不法侵入の件がバレてしまうであろう。
それと同時に一人でいるほうが気楽でいいのもある。
「そ、そんな…それじゃあ今日のお礼に何かご馳走しようと思ったのにダメじゃないですかぁ!」
ぐすん、とシャーラが拗ねるように言う。
「あははは!まぁ俺にそんな気遣いはいらないよ」
フォルはそう言うとくるりと向きを変え、
「じゃ、そういうわけで今日はありがとうね!さよなら~」
と手を振りながらその場から立ち去ろうとする。
「え、ちょ、ちょっと待ってくださいわたしだけじゃ心細いですよぉ!」
慌ててシャーラが呼び止めようとするも、フォルは「お城はここからなら近いし…魔法もあるから大丈夫でしょ?」と言うだけでさっさと行ってしまった。
「そんなひどいです…」
頬を膨らませて怒るシャーラだが、確かにそうだと納得せざるを得なかった。
誰かに頼りすぎるのはよくないと思ってしまうのは一国の姫としてのプライドがあるからなのか。
それともただ単に恥ずかしいだけなのか。
理由はわからなかったがとにかくここからは自分で何とかしようと思ったのだ。
しかし、離れるのはさびしい。
いろんな感情が混ざりあって頭の中がこんがらがってくる。
見ればもうフォルの姿は遠くにあった。
初めてできた友達の背中を眺めながら、シャーラは胸に手を当てる。
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「…明日…も会えますよね?」
彼女は聞こえるはずもないほどの小さな声で、そう呟いてみるのだった。



――しばらく沈黙が続いた。
シャーラはその場で、フォルのことについて考えていた。
また会えるのか。また一緒に町をまわってくれるのだろうか。
彼は旅人だ。
いつまでもここにはいないということはシャーラ自身も理解していた。
そう遠くない内に別れることになってしまうだろう。
考えたくないのに、そうなった時の事が頭を埋め尽くす。
「と、とりあえず…明日くらいならきっと会えるはずですから…」
根拠もなくシャーラは自分に言い聞かせた。
そうしている内にすっかり辺りが暗くなっていることに気付いた。
「早く戻らないといけないですね…」
そう言って歩き始めようとした瞬間だった。

――ゴン!と鈍い音が鳴り響く。
硬い鈍器のようなもので殴られたシャーラは、そのまま歩くこともなく地面に倒れる。
「…お許しを。これも国のためです」
その後ろから男の声がした。
そして、後からぞろぞろと数人の騎士がやって来る。
その内の一人が気絶しているシャーラを抱えあげると、男に指事を求める。
「予定の時間までまだありますが…」
男は少し考えると、
「そうだな、確か町外れに使われなくなった処刑場があったはずだ。…そこの牢屋にいれておけ」
「了解しました!」
騎士達は統率された動きで指事された場所へ向かっていった。

「………」
男は一足遅れて進み出した。
身に付けた鎧がガシャガシャと音をたてる。
特徴的な赤みがかった尖った白髪に、鋭い目を持つ男。

男の正体は、昼間フォル達が出会った『シャイン』だったのだ。



――城下町にて。
フォルは一人で歩いていた。
バレないよう町外れに飛空艇を停めたのはいいが、ここまで離れているのはさすがに不便さを感じる。
かといって入国手続きなど目立つしめんどくさい。
そういう訳で仕方がないので歩くことにしたのだ。
「しかし遠いな…」
そんな事を言いつつ町並みを見る。
彼は彼で、シャーラについて考えていた。
人を簡単に信用してしまう。
彼が今まで出会ってきた者達とは全く異なっていた。
外出という経験がないから…だとは思うが、どうもそれとは違う。
何か別のものが他人とは違っているのだ。
わからない。
「………?」
と、考えに詰まってきたところでフォルの足が止まる。
「こんな時間に何の用かな?」
彼のまわりには、2、3人ほどの騎士が近付いてきていた。
一人一人手にはよく手入れされているであろう剣を持ち、月明かりに照らされ刀身が輝いている。
「お姫様のご命令かな?…ってそんなわけないか。これは一体誰のご命令?」
軽い調子で命令主は誰かと思考を巡らせている今も、騎士達はじりじりと歩み寄ってくる。
「来るつもりなの?いやぁ怖いなぁ…」
半笑いで挑発を始めたフォルに、一斉に騎士達が襲いかかる。
そして、その剣が、彼めがけて振り下ろされた。