そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

一章 ⑦

朝とは違った…いや、朝以上の賑わいが城下町を活気づかせている。その状況はさながらお祭りのようであった。
時刻はもうそろそろで正午になる頃である。
フォルはあれからしばらく城下町をうろついていた。
「お姫様は先に城下町にいるはずだけど…大丈夫なのかな?」
そんなことを考えていると、ふと変なモノがあることに気づく。
「………」
それはどこにでもありそうな樽である。
中身も何ら変わりない酒か何かなのはわかるのだが、問題は中身ではない。樽の上部…正確に言えばそのすぐ背後から、ぴょこんとアホ毛のようなもの飛び出している。特徴的な銀色をしたそれは、どこかで見たような気がしてくる。そして、微かではあるがときおり人間の指のようなものもちらちらと視界に入った。

彼には、それがなんなのか想像はついていた。
すると彼はズカズカとその樽のそばまで歩みより、後ろに生えているアホ毛に向かって声をかけた。
「…何してるの?お姫様」
「ひゃあぇ!?」
急に話しかけられたことによりビクン!と驚いた『ソレ』は、樽もろとも盛大に地面に倒れこむ。
「ふぉ…ふぉ、ふぉふぉふぉっふぉっふぉっ!!?」
「バ●タン星人…?」
『ソレ』は腰までかかる特徴的な銀髪を持つ少女だった。仰向けに倒れた少女…シャーラは、まだ驚きによって頭が回らないのか、手足をバタバタとさせている。幸い、樽の中身はこぼれていないようだ。
「ふぉはっ…!フォル君…ど、どどうしてわかったんどひゅか…?」
ろれつも回らないまま精一杯声をあげるも、「いや、バレバレだから」と軽く言われてしまう。

人が溢れている割には彼らのやり取りは上手く人目のつかない所で行われていたようで、変に目立つこともなかったようだ。
そんな彼らを横目に、フォルはしゃがみこんでシャーラの顔を除きこむ。
もちろん、笑顔で。
「…で?何でつけてきたんだい?」
するとシャーラはお尻についた砂をはたきながら起き上がった。
「あの、ものすごーくお恥ずかしいのですが…」
彼女は気をまぎらわすように、倒してしまった樽を元に戻しつつ、話し始めた。
「…い、いざ外に出ると道がわからないし…その、一人だとすごく心細くて…ですね」
樽を戻した後も、彼女の目は宙を泳ぎ必死に誤魔化そうとしている。しかし相当恥ずかしいらしく、顔は真っ赤になっていた。
フォルはそんな彼女を呆れた表情で見つめていたが、大きなため息をつくとゆっくり立ち上がる。
「…じゃ、ついてくる?」
「…………お、お願いします…」
顔が真っ赤のまま、シャーラは申し訳なさそうにフォルについていくのだった。


――しばらく歩いていると大通りに出た。
城下町一番のにぎわいを見せるここは、様々な種類の店が建ち並んでいる。
「うはぁすごいです!すごいです!」
「人がいっぱいだね…」
シャーラとそれの付き添い人である(なってしまった)フォルは、共に辺りのにぎやかさに感動していた。
「そうだ、お姫様」
「?何ですか?」
何か気になった事があるのか、フォルはシャーラに確認する。
「君は…お姫様、なんだよね?」
「そうですけど…どうかなさったんですか?」
「いや、ちょっとね」
彼は辺りを見回しつつ続けた。
「君って城下町の人達とかに顔知られてないの?」
「え?知られてるわけないじゃないですか?」
するとシャーラはきょとんとした表情で答える。
「自国の人にも姿すら見せていないのかい?」
驚いてフォルがさらに聞くと、シャーラは人差し指をピンと立て、
「わたし達王族は正式に王位を継承されないと詳しい事は世間に公表されないんですよ」
「…何でそんな決まりが?」
「えっと…子供の頃に確かお父様から聞いたのですが…わたしが『魔女』の血筋を継ぐ者だかららしいです。」
「『魔女』の…血筋…?」
魔女の血筋。
この世界には強力な魔導師の一族といったものは珍しくはないのだが、『魔女の血筋』というのはフォルは初耳だった。
するとシャーラは昔の記憶を思い出すように言葉を紡いでいく。
「昔、『魔女』と呼ばれた人達がいたのはご存知でしょうか?」
「昔話とかに出てくるあの魔女?」
「そうですね。イメージ的には合っています」
「そうなの…?」
魔女、というのは普通昔話ではよく悪役で登場し、意地悪でしわくちゃなオババというイメージだと思う。
しかしフォルのそばで歩くこの少女には、全くそういったイメージは感じられない。
「…………」
「あ、あの…あまりじっくり観察しないでくださ…近いです…」
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隅々まで観察しようとするフォルをシャーラはぐいと押し戻す。
当の本人は何故拒まれたのかわからないようで、頭上に「?」を浮かべていた。
「…まぁ、特徴としてはどんな『魔法』でも知っているものであれば使える、という辺りですね」
「魔法、ねぇ…」
要するに魔女の血筋というのは、『魔法を使う』ということにおいて特別な素質を持つ一族なんです、とシャーラはまとめる。
(特別…か)
フォルはその言葉が引っ掛かったが、自分が関わるような事ではないので今は深く考えない事にした。
「フォル君、よろしければ見せますよ?魔法」
シャーラはムン、と胸を張りながら例の『魔具』を取り出す。
「んー…そうだね。魔法を使う人はよく見かけたけど…本場の魔導師も見てみたいね」
「おまかせください!」
そう言って彼女は辺りを見回すと、大通りから少し離れた所に噴水のある広場を見つけた。
「あそこなんかがいいんじゃないですか?」
「あぁ、そうだね。…あまりまわりの人達に迷惑かからないようにしないと」
フォルが軽めに注意をすると、「わかってます!」とシャーラはトタトタ先に走っていった。
「……せっかちなのかな…?」
走っていく彼女の背中を眺めながらフォルは呟いた。
「…やれやれ」
彼は頭の後ろをグシャグシャとかきながら、彼女のあとを追おうとする。



――と、刹那鋭い殺気にも似た視線を背中で感じとる。
「ッ…!?」
フォルは勢いよく視線の方向へ振り返るも、それの主とおぼしき人影は見つからず、ただ人混みがあるだけだった。
(気の…せい…?)
平和に慣れてもう感覚が狂っているのか、それともすぐに気配を消すほどの技量を持った人物がいるのか。
彼にはわからなかったが、自分の気のせいだと言い聞かせる。
それよりも今は早くシャーラの元へ行くことが先決だと、彼女の元へ急ぐのだった。






――彼が去ったその後方。一人の男の紅い眼がフォルとシャーラをとらえていた。