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そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

一章 ⑥

「ここがわたしの部屋です。」
シャーラが指さした先には、豪勢な扉で閉ざされた部屋があった。
バタン!と大きな扉が開かれれば、そこにはテニスコート一つ分くらいの広さの空間が広がっていた。家具の一つ一つもかなり凝ってあり、まさに王族にふさわしい内部となっている。
「これが…一人用の部屋…?」
フォルはあまりの衝撃に目を丸くしていた。
「はい!…ではどうぞおかけになってください!」
シャーラはこの部屋に慣れきってしまっているのだろう、特に気にすることなく入っていく。
「なんかすごく緊張するなぁ…。」
部屋という名の巨大な空間へ、フォルはおそるおそる入っていくのだった。




「えー……っと。じゃあおっぱいタンk…じゃなかった、『お姫様』…って呼ぶべきなのかな?」
一瞬シャーラの胸部が目に入ったせいか変な事を口走りそうになるが、なんとか誤魔化す。
「いやいや、わざわざいいですよそんな…呼び捨てでも構いませんよ?」
幸い、本人には聞こえていなかったようだ。
「さすがに呼び捨てはちょっと…。」
「そう、ですよね……ではわたしは『フォル君』って呼ばせてもらいますね!」
「え?あ、あぁ全然大丈夫だけど…。」

大分調子がくるったが、一通り雑談を終えるとフォルは昔を思い出しながら語り出した。
「じゃあ、どこから話そうかな…。」




――それから少々の間フォルはシャーラに旅話を聞かせた。

「わたしの知らないことばかりでした…!ありがとうございます!!」
大分警戒心がなくなっているのか、シャーラの瞳には星の模様がキラキラと輝いていた。
「満足できたかな?」
「はい!とても満足できました!」
彼女はフォルにペコリとお辞儀をした。だがその後彼女は突然寂しそうな表情になる。
「………やっぱりいいですよね。外って。」
「まあそうだね。色々なものを見て、感じて、触れるっていうは素晴らしい事だよ。」
にこにこと話すフォルを見て、シャーラも少し笑顔になる。
しかしその笑顔とは裏腹に出された言葉はどこか悲しそうだった。
「わたし…実は生まれてから一度も外の世界を見たことがないんです。」
「…そんなことが…?」
十数年、一度も外で太陽の光を浴びれず、また一度も空の星を小さな窓からしか眺められないというのは、フォルにとっては信じられない事だった。
おそらく王族という立場上何かあるのだろう、とは思う。しかし満足に外にも行けないとは、なかなかに酷いことである。
そう言った事から、彼女は今までずっと「人との関わり」を求めていただろう。先程彼に「呼び捨てでも構わない」と言ったのは、そのような意味合いが込められているのだ。
人との関わりを誰よりも求める少女。自分とは正反対だな、とフォルは思った。きっと誰よりも人との関わりを拒絶する自分には理解し得ないのだろう、と。

「…あ、す、すいません何か暗くなってしまって…。」
すると彼に気を使ってか、シャーラはペコペコ頭を下げ始めた。
「い、いやいやそんなにしなくていいよ…ただお姫様ってそんなに大変なんだ…と思っただけだから!」
フォルはそれをあわてて止めた。
ようやくペコペコが終了したところで、話はもとに戻る。
「大変ですよ。お姫様だからといって夢のような生活なんてものはどこにもないんです。」
でも、とシャーラは付け足す。
「今日はお父様とお母様から外出許可をもらいました。…わたし、今日初めて外の世界を見に行くんです。」
そう言って彼女は「えへへ…」とはにかんだ。
「少し不安もありますけど…できることならいつかは旅もいいかなーって思うんです。まぁ、お姫様ですからそんなことはできないですけど…。」
それを聞いたフォルも安心したように笑う。
「いいね、じゃあもし旅に出るとしたらどうしたいの?」
「そう、ですね…まずは『びる』という建物を見てみたいですね。」
「ビルか…確かにここらへんじゃ見ないからね。」
「はい!………あ、そうそうこれがありました!」
そう言うとシャーラは首にかけてあったペンダントのようなものをとった。するとペンダントは淡い光を放ちながら変化していく。
「…これは?」
変化したそれは四角い形状で平べったく、全体的に青く塗られた表面にアクセントとして金色で魔方陣のようなものが描かれていた。
「お父様とお母様がわたしにくださった『びる』の建ち並ぶ異国の道具です。『魔具』…といえばわかるでしょうか?」

『魔具』とは魔力を道具に宿し、物理的には成し得ないことを可能にした道具の総称である。応用は多彩で、世界中に普及している。

「変な形だね。何に使うの?」
じろじろと平べったいそれを見つめるフォルの目はどことなく好奇心に満ちていた。
「そうですね…魔法を使うのを補助したり…色々な情報を調べたりできますけど…基本的にあまり使う機会がないんです…。」
ガクッと肩を落とすシャーラ。
確かに箱入り娘ともなれば人との関わりはまずないであろう。実に可哀想な子だ、とフォルは感じていた。
「でも今日外に出れるんでしょ?それなら使う機会も増えるんじゃない?」
フォルの言葉にハッとなるシャーラ。すると善は急げと感じたのか、バタバタと準備らしき作業に取りかかる。
「そうですね…!ではさっそく外に行ってきます!!ありがとうございました!!!!」
そしてそのまま椅子から立ち上がると、一目散に部屋を出て走り出していった。




「………。」







一人。





「……せわしないなぁ。」
部屋に取り残されたフォルはそう呟くと、再び侵入経路を戻って城から脱け出すのであった。