そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

一章 ⑤

フォル・A・バイムラートは城内にいた。
そこかしこにある廊下に敷かれた赤い絨毯は、城の内装をより一層豪華にしている。
勿論、普通は一般人など入れない場所であるらしく、先程入り口にいた騎士のような人物に「見学したい」と言ったところ、見事な門前払いをくらってしまったのだ。
しかし彼は諦めなかった。むしろどんどん「中を見たい」という好奇心が沸き上がり、ついには門番の死角を狙って俗に言う不法侵入をする形になってしまったのである。
「予想通り…の中身だけどなかなか…」

「あ、あの…」

フォルが一人で感想を述べていると、唐突に誰かに声をかけられる。どうやら自分の世界に浸っていたせいか、人の気配に気づけなかったらしい。
声からして女性のものだろう。丁寧な敬語で、ほんわりとしている性格が声に現れていた。
「ん…君は?何か用?」
声のする方へ振り返ると、そこにはフォルよりも背の低い、小柄な少女が彼を不思議そうに見つめていた。
少女は見るからに高そうな衣服を身にまとっている。フワフワとしたスカートに、腰までかかっている長い銀髪。星形の模様が入った瞳を持つ彼女は、どことなく幻想的に見えた。あと胸が大きい。
「あ…、わたしはこの国の姫の『シャーラ・I・ディザスター』といいます!」
「へぇ、この国のお姫様かぁ~……………お姫様!?」
さらっと城の主登場にビビるフォル。
「そうですけど……その、あなたは…どこのどなた様ですか?」
彼の驚きのリアクションが大きいせいか、多少困惑しながらシャーラと名乗った少女は本題へ戻す。
「あぁごめんね。俺は『フォル・A・バイムラート』。別に怪しいものじゃあないさ…。」
にこりと薄い笑いを浮かべながらそう言う彼は、見るからにかなり怪しかった。
「あ、いえいえ怪しいだなんてそんな!」
しかしシャーラはそういった感情は持たなかった。
普通ならば「うわ、不審者だ!」といった反応が返ってくるはずなのだが…彼女は、まるで人を疑うことを知らない純粋な子供のようであった。
「では何をしにここへ来たんですか?…確かここは一般の方は入れないはずなのですが…。」
フォルはそんな彼女の質問に適当な誤魔化しを入れていく。
「その、旅しててこういうお城は珍しいからさ…見学したいって無理言って入れてもらったんだ。」
本当は『無理言って入れてもらった』のではなく『無理矢理入った』のだが、勿論そんなことは言えない。
「そうなんですか、旅人さんでしたか…!」
すっかり騙されているシャーラは相変わらずどこかずれた返答をする。
「旅人さんってことはここ以外にも色々な場所に行ったりしたんですか?」
「そうだね…かなりいろいろな場所をまわったかな。」
フォルがそう言うと、シャーラはキランと瞳を輝かせる。
「でしたら…もしよろしければちょっとわたしの頼みごとを聞いてもらえませんか?」




――どういうわけか、フォルは成り行きでシャーラの頼みごとを聞くことになった。本来ならとっとと撤退しているところではあるが、たまにはこういうものもいいだろう、と彼は思っていた。
「で?頼みごとって何かな?」
ニコニコと笑顔でフォルはシャーラに聞く。
「その…わたしにいろいろ旅のお話を聞かせてほしいなーと…。」
「旅の話…?わざわざなんで?」
するとシャーラは照れ臭そうに頬をかく。
「わたしこの城の外のことあまり知らないので…旅人さんと出会う機会にいろいろ聞いてみたかったんです。」
「お姫様ってそんなに世間知らずで大丈夫なの?」
「だ、大丈夫ですよ!…多分。」
妙におどおどするシャーラを変なヤツだなと思いながらも、フォルは話を進める。
「しかしここで立ち話もアレだなあ…。どこか座れる場所ないかな?」
キョロキョロと辺りを見回すも、城の内部をまだ把握できていないフォルには行くあてがなかった。
「そうですね…わたしの部屋とかどうですか?わたし今から自室に戻るところだったんですよ。」

こういう場合、年頃の女の子の部屋に招かれたら普通は断ったりするはずだが、フォルにそういった気遣いはなかった。
「そうだね…じゃあそうさせてもらうよ。」
やましい考えはないものの、同年代の女の子の部屋にズカズカ乗り込んでいくあたり、フォルも変なヤツの一種なのだろう。

人はそれを『無自覚系変態』と定義した。