そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

このブログを見る皆様へ

ようこそおいでくださいました!(^U^)
申し訳ございません、このようなブログで。
「そめちめ」という名で色々と活動させていただいている者です。
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イラストのみ見たい方推奨。版権イラスト多め。

このブログでは主にオリジナルの作品、イラストを公開したり、Twitterでは語り切れない趣味のことや日々のこと等をつらつらと書いています。
(オリジナルのイラストの公開や漫画本のレビュー等も視野には入れておりますがまだ未定です)
イラストについてはこういったものを予定しています。↓
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【公開中】
〈オリジナル〉
AMRITA(アムリタ)
不定期更新のストーリーもの。現在三章を更新中。

〈趣味系統〉
・工作
仮面ライダーのマスク等、趣味のものを作る予定。


その他未定……


というわけで、私のブログが少しでも誰かの暇潰しにでもなれば幸いです。

ごゆっくりどうぞ!

三章 暗躍②

 再び街の郊外、その廃ビルの一室。

元々薄暗かったこの部屋も、雨模様の空と日が傾き出したことでより一層光のない空間に仕上がっている。

そんな中で、赤茶色の髪の双子ーークレスとデクレは、つまらなさそうに土砂降り雨の叩きつける窓を眺めていた。

「ねーぇランペイジさぁーん。¨臆病者¨さんを始末しに行くんじゃあなーいの?」

双子の姉、クレスはとうとう辛抱ならず、呑気にくつろぎながら未だ行動を起こそうとしないランペイジに不満をぶつける。

弟のデクレも口には出さないものの、何もない部屋で待機している今の状況に飽き飽きしているようであった。

しかしながら、どういうわけなのか、当のランペイジはこの状況でもなお窓際でのんびりとしているのだ。

 「あぁ……そのつもりだったがその前にやることができた」

それどころか、楽しげに彼はニヤリとその口角を上げている。

「唐突ですね」

「勝手に変えないでよー!」

対する双子は揃って仏頂面だった。

せっかくのやる気も、突然の予定変更によって削がれてしまった。

そのせいか、双子はますますランペイジに不満を持つようになっていた。

だがランペイジはそれを歯牙にも掛けず、ニタニタとせせら笑ったまま続ける。

「ちょっといいことを思い付いてな」

「「いいこと?」」

すると、ランペイジはおもむろに部屋の奥に控えている「それ」を指差した。

B-00という名の例の機械人形だ。

「¨アイツ¨だよ。せっかく貰ったんだ、使ってみなきゃ損だってな」

ランペイジはそう言って窓から離れ、ツカツカと部屋の奥まで歩いたかと思うと、そのままそこに控えていた機械人形ーーB-00の頭を軽く叩いた。

すると、ギギギと歯車の音が鳴り、B-00が起動を始める。

『ア……アァ…………A……aaAア』

それは唸り声に似た、ノイズ混じりの音声。

ランペイジはその耳障りな音に思わず顔をしかめた。

「チッ、燃費の悪いヤツだ。すぐに魔力が枯渇しやがる」

彼は舌打ちをすると、今は用済みだと言わんばかりにB-00の体を蹴り飛ばす。

B-00はそのまま壁に打ち付けられ、ガシャンと無様な音を立てると、再び停止した。

まるでゴミと同等の扱いである。

「あーあ、もっと魔力保有量の多い人間のエサがありゃあなー」

ランペイジは蹴飛ばしたモノのことなど全く気にしないどころか、それがさも当然だと言わんばかりの振る舞いだ。

「…………やーなかんじ」 

クレスが小声で呟く。

 ランペイジに加担している身とはいえ、さすがの双子も彼の態度には難色を示すばかりだ。

だがそんなことは露知らず、ランペイジは身勝手にも双子に次の命令を下す。

「つーわけでてめぇらはエサの調達に行ってこい。10匹くらいいりゃあさすがに足りるだろ」

 「はいはーい」

投げやり気味に返事をするクレス。

デクレは返事もせずにそそくさと準備を始めている。

とはいえ、命令を受けるのは何も嫌なことばかりではない。

まず第一に、報酬が良い。雇い主のランペイジは最近どこからか多額の金を手に入れているらしく、報酬を渋る理由がないという。

第二に、仕事内容は現状困難を極めるようなモノではないこと。人を拐ったり見張りをする程度だ。双子にとって、この程度は造作もないことだった。

そして第三に、命令で外に出ている間はランペイジのようなろくでなしグラサンナルシスーツ野郎と顔を合わせなくてもよいということ。

大体半分くらいはこれが理由であった。

とすれば、命令を受けた双子が真っ先に起こす行動は一つである。

「じゃあ行こっか、デクレ」

「うん、クレス」

さっさと出発。

にこやかに手を取り合い、双子は部屋から軽やかに外に飛び出していく。

トタトタと忙しない足音。

彼らがこの廃ビルを降りるまでに、三十秒もかからなかった。

 

「なんだあいつら……嫌な顔するくせに命令の実行までがはえーのが何かムカつくな……」

静かになる室内。

部屋に残ったランペイジは、その様子を微妙な表情で見ていたのだった。

 

 

 

「あー!やっと戻ってきたッス!」
場所は再びライト達のアジト。

「あはは……ごめんね、ただいま」

ライト達が待つこと数分、部屋を出ていたフォル達がようやく戻ってきていた。
「待たせてすみません、皆さん」
フォルの後から入ってきたシャーラが遅れて頭を下げる。
「いやいやいいッスよお姫様がそんなん!」

慌ててシャーラの頭を上げさせるノイ。

まだ緊張しているのか、それとも恐れ多いのか。不良達にとって、シャーラのお姫様らしからぬ腰の低さは未だに落ち着かないようだった。

「……っていうか、二人で一体何を話してたんスか?」

ライトはそう言って訝しげにフォルとシャーラを見る。

「それは……」

「それは、ねぇ」

フォルとシャーラは顔を見合わせていた。それもどこかバツの悪そうに。

「えっなんスかこの雰囲気?え、何?」

実際のところはというと、フォルが少しだけシャーラに過去のことを打ち明けた程度なのだがーー今日出会ったばかりの不良達に言うことではない、ということで内密にしているのだ。

「ちょっと、やっぱ何かあったんじゃーー」

ライトが更に詮索しようとする。

しかしすぐさま、フォルがそれを遮るように、口の前でそっと立てた人差し指を当て、一言。
「秘密」
「え!?じゃ、じゃあシャーラさん教えてくださいッス!」
「えっ、ひ、秘密ですっ!」
シャーラも咄嗟に慣れない嘘で追求を逃れようとする。

ここはフォルの意志を尊重したようだ。
「なんなんスかもうー!!!」

ライトが叫ぶ。

妙なはぐらかされ方をしたおかげで、彼はますます二人の秘密のやり取りが気になって仕方がないようであった。

 「まァまァアニキ。今はいいじゃないッスかそんなの」

もどかしそうにもがくライトをノイがなだめる。
「そうそう、そんなことよりアタシはまだまだシャーラさんとお話したい~」

チトセもライトの意に反してマイペースだ。

「「「落ち着いたほうがいいッス」」」

それに加え、舎弟三人にすら口を揃えて言われてしまう。

「んだとお前ら揃いも揃って!!!」

ライトは憤慨した。

「特にチトセ!!お前特にシャーラさんとくっつきたがり過ぎだろ!!!!!許せねぇ!!!!!」
その上会話の機会に恵まれないあまり、とばっちりでチトセに謎の言い掛りをつけ始めるまでになってしまっていた。
「おっ、ここでやる?アニキ!」
だが、いちゃもんを付けられたチトセも何故か乗り気だ。

「ちょ、ちょっと待ってください!お二人とも喧嘩は……!」

互いにガンを飛ばしつつ、ポキポキと指を鳴らしていくライトとチトセ。

それに不穏な空気を感じ取ったシャーラが慌てて止めに入る。

が、

「おーやれやれーッス、一人だけ抜け駆けしたチトセを許すなー!」
周りの不良達ーーノイは止めないどころか、なんとむしろその流れを煽っていた。

「久々のくーでたーだー!」

「ひゅー、ひゅー!」

「やっちまえー!」

舎弟三人もまるでスポーツの試合を観戦するかのように野次を飛ばす。

「えぇ……そんな」

シャーラは訳がわからなかった。

 どうやらこれは彼らにとっては日常茶飯事らしい。

本気で喧嘩をしているわけでも、本気で怒っているわけでみない、ただの拳コミュニケーション。

言葉より、行動より、その拳で語り合う。

シャーラ、いや常人には到底理解しえない、彼らだけの不良世界の話。

はた迷惑もいいところだが。

「…………」

「…………」

 そうしてしばらく、そんなコミュニケーションからなる睨み合いが続く。

そして、

「よっしゃ来いやあああああ!」
「アタシが次の頭だあああああああ!」

とうとう開戦。

「えぇ!?えぇえ!?」

あまりに脈絡のない喧嘩の勃発に、呆気にとられてしまうシャーラ。

もはやこうなっては止めることができない。

ただ決着がつくを待つしかないのだ。
「…………騒がしくなるなぁ」

その一連の様子をたった一人、フォルはまるで他人事のように傍観していたのだった。

 

 

 

 

 夜のルクリフィアの町。

多量の雨粒がコンクリートの壁を叩きつけ、黒雲に雷が走っている。

そんな嵐の夜に 、デクレとクレスの双子は廃ビル近くの屋根の下で雨宿りをしていた。

「ねぇ、デクレ」

クレスがデクレに呼び掛ける。

「なあに、クレス」

デクレがクレスに返事をした。

「不思議なんだよね~」

「何が?」

「ほら、アイツ。ランペイジとかいうやつのこと」

クレスが思い出すのも嫌、というような顔でその名前を出した。

「実はちょっと前に、アイツのこと気に入らなかったからさ、こっそり寝首掻いて金品奪ってやろうと思ったんだけど……」

「けど?」

クレスは女の子らしからぬ物騒な話を繰り広げているのだが、デクレはそれに臆することなく平然と会話を続ける。

「なんでだろなー?できなかったんだよねーそれが」

「それはどういう意味、クレス?」

クレスは「んー」と声を洩らして顎に指を当てた。

「なんかねぇ、『攻撃しようとすると攻撃するのをやめちゃう』って感じ?」

妙なジェスチャーを交えながら、クレスはデクレにそう説明する。

「変だね、それ。もしかしてアイツの異能力?」

「そうかもー。下手に手を出せないのやだなー」

相手が異能力持ち、それもどのような能力かを知らないままに正面から戦闘を仕掛けるのは無謀だ。

それでも挑もうとするのは、余程自信のある魔術師、異能力者、あるいは身の程を知らない愚か者である。

何らかの手で不意討ちを防いだ相手とあらば尚更、双子も警戒してかからねばならない。

「あーあ!」

クレスは雨の音に掻き消されないくらいの大きな溜め息を吐いた。

彼女は唇を尖らせ、しばらく拗ねるような態度を見せていたが、ふと、急に両手を元気よく真上に伸ばして叫んだ。

「まぁいいや!この際憂さ晴らしに色んな人に八つ当たりしちゃおうよ!どうせ餌になるんだしぃ」 

クレスは、にひーっと屈託のない笑顔をデクレに向ける。

まるで自らが過激な発言をしているなど思ってもいないかのようだった。

「そうだね、クレス」

それに対し、デクレは眉一つ動かさずに頷く。

「決まりだね、デクレ。雨宿りなんてしてる場合じゃないよ!」

一気にテンションが上がるクレス。

「それにさぁ」

「それに?」

「雨って結構好きなんだよね、私」

「洗い流してくれるから?」

「行いも、その証拠も、ね」

双子は示し合わせたように同時に笑いあった。

彼らはそっと手を繋ぐとそのまま、吹き荒れる滝のような雨の中を、ロケットのように突っ切っていったのだった。

 

 

次第に夜は明け、次の朝を迎える。

 

フォルとランペイジ。別々に動いていた時が今、重なろうとしていた。

 

三章 隠家③

「ただいま戻りました!」
それからしばらくして、シャーラとチトセは最初の部屋に戻ってきていた。
それに反応して、物陰からツッパリ頭の先端がびよんと姿を現す。
ノイである。
「おかえりなさいッス~……っておお!その格好イケてるッスね!」
彼はシャーラの新たなお召し物に興味津々なようだった。
「ありがとうございます!これは……」
「¨アタシの¨ジャージだ。どーだフランスパン、恐れ入ったか!」
シャーラが言い終えるのを待たずに、チトセが得意気に鼻を鳴らした。
やけに¨自分の¨ジャージであることを強調する辺り、彼女のジャージへの愛着が伺える。
「フランスパ…………!?あァでも可愛い……」
流れるような煽りにノイは一瞬頭に血が昇りかけたのだが、シャーラの姿を見た瞬間に我に返る。
普段乗せられている挑発も、シャーラの前では無惨にも吹き飛ばさてしまうようだ。
「あの…………ところで、フォル君はどちらへ?」
 ふと、シャーラは、ノイと一緒に待っていたはずのフォルの姿が見当たらないことに気付いた。
「そーいや何か調子悪そうにしてたんであっちの空き部屋を貸したッス」
ノイは居住用部屋のある扉を指す。
「……ありがとうございます、少し様子を見てきますね」
シャーラは数秒、何かを考えていた様子だったが、すぐに空き部屋へと向かっていった。
「健気だ……俺もあんな女の子が近くにいてくれたらなー!」
「チッ、健気じゃなくて悪かったな!」
ノイがシャーラの後ろ姿を追うのを、チトセは不機嫌そうな顔で睨みつける。
「……まあ確かに、あの子はいい子すぎてアタシが申し訳なくなってくるわ……」
「だろ?だからオマエももう少し……」
「それとこれとは話が別だ!!!」
シャーラもいなくなり、いつものごとく徐々に険悪になっていくノイとチトセ。
だがその一触即発の雰囲気の最中、タイミングを見計らったかのように、ガチャッ、と扉が開く音がした。

「はー……よーやく終わったぜ」
 すると、シャーラが向かっていったのとは逆方向から、くたびれた少年の声がした。
ライト・E・シャープである。
彼の背後には、なに食わぬ顔で、レミ、ソラ、シドの舎弟三人が続いていた。
「「アニキ!」」
ライトもまた、丁度自らの用件を終えて戻ってきた所のようだ。
「何度説明したことやら……結構疲れたぜ」
ライトは大きく溜め息を吐いた。相当骨の折れることだったようである。
「「「アニキ、お疲れ様ッス!」」」
「いや、原因お前らだからな!!」
全く反省してなさそうな問題児三人。
ライトはもう一度溜め息を吐くと、ドサリとその場に座り込んだ。
「あーーーー……………………あ?」
そのまま疲れた顔で部屋の天井のシミを見つめていたライトだったが、ふと、部屋に戻ってからの違和感に気付く。
「あれ、フォルさん達はどこへ?」
「「アニキ、そのくだり二回目!」」
あまりの既視感に、ノイとチトセの声が重なっていた。





 依然として雨が降っていた。
まだ夕方にもなっていないはずなのだが、もやのような薄黒い雲が、町全体を取り囲むように覆っている。
 フォル・A・バイムラートは空き部屋の中で一人、不吉な色の空を眺めていた。
「……また逃げてきちゃった」
逃げるようにあの場所から去り、どれくらいか時間が経っている。
ほんの些細なことのはずだった。受け入れられた者達と、そうでない者がいただけのこと。
だがーーーー

 するとその時、ガチャン、と元気な音を立てて部屋の扉が開いた。
「ここにいましたか、フォル君!」
明るい声と共に現れたのは、美しい銀髪を携えた少女だった。
「…………あぁ、シャーラちゃんか」
フォルが振り返ってその名を呼ぶ。
「何かあったの?」
「実は先程、ノイ君からあなたが何やら気分が優れないようだったと聞いたのでで……」
「………………そうなんだ」
「一瞬行くべきか迷ったのですが、やはりご気分がすぐれないとなると心配だったので……迷惑、でしたか?」
「いいや」
フォルが少し俯く。
シャーラ・I・ディザスターという人間は常に純粋で、常に輝きを放っていた。
彼女の言葉はいつも、彼女の本心から湧き出ていた。
彼女の顔はいつも、彼女の心を正直に写し出していた。
そこに嘘偽りはない。
だからこそーーその正直な心が、フォルの心を強く締め付ける。
「……なんでもないよ、俺の気のせいだったみたい」
対するフォルが咄嗟に作る表情はいつも、誤魔化すような偽物の笑顔。
それは例え、彼にそのつもりがなくとも、まるで機械のように、ある種の防衛反応のように自動で形作られるモノだった。
そうすれば、本心を隠せる。
信用できない他人に、うっかり心を開いてしまうこともない。
今までもずっとそうして騙してきた。

なのに。

「…………どうして、そうやって無理に笑うのですか?」
その笑顔を、シャーラは悲しく見つめていたのだ。
「そんなこと……」
「ありますよ!」
とぼけようとしたフォルに、シャーラはきっぱりと言い切った。
どうやら、今回の偽物は一段と不自然に出来上がってしまったらしい。
それは瞬時に見抜かれる程に薄っぺらく、とうとうシャーラにも、その表情の歪さを知られてしまったのであった。
「…………」
何も言い返せなかったフォルは、わざとらしく視線を反らす。
「今までも……そうやって無理をなさっていたのですか?」
シャーラの問いにフォルは答えない。
「わたしと出会った時も、今思い返せばそんな顔をしていたように思います……ずっと、そうだったのですか?」
フォルは答えない。
「それにあの時、ライト君達と初めて会ったとき……フォル君は旅出に特に深い理由はないって言ったときも、笑ってなかったように思います…………もしかして、旅に出た理由に関係しているのですか?」
フォルは答えない。
答えることが、できなかった。

「……………………そうですか」
そこまで言ったところで、シャーラは質問を止める。
「すいません。そんな無理矢理問い質そうとしていたわけではないんです。ただーー」
彼女は尚も冷静に言葉を紡いだ。
「ただ、あなたが苦しんでいるのなら、わたしはあなたの¨友人¨として、あなたの苦しみを共に分かち合う義務があります。…………それだけです」
シャーラは俯いた。
こともあろうに、彼女はいくら問い質しても答えないフォルへの怒りを見せるどころか、むしろ、彼の力になれない己の無力さを嘆いているように見えた。
「…………」
 そんな彼女の様子を、フォルは黙って見つめていた。
今まで出会ったどの人間とも違うその態度に、言葉に、何かを感じながら。
そして、

「……少しだけ、話すよ」

彼は少しだけ、その重い口を開くことにした。

「ーー俺には『十年より前の記憶がない』。知ってるのは名前と¨あの化物の姿¨になれる能力のことだけだ」
 フォルは僅かではあるが、シャーラに自らに関することを話し始めた。
彼の旅の目的は、すっぽりと抜け落ちた自身の記憶を探すこと。
そして、自身の正体を知ること。
圧倒的な力、そして人ならざる姿を持った異形の形態、ドラゴニュート。
フォルの力の全てであり、また彼が最も嫌悪する力の全てである。
その正体を、彼は知りたいのだ。
「だけど、あの力は俺を人間から遠ざける。…………だから、俺は自分から他人と深く関わることを避けた。どうせ近付けないならと、嘘の笑顔で本心を悟られないようにした」
そこまで言ったところで、彼は「違うな」と首を振った。
「きっと本当は、こうしているのが楽なだけなんだ。そうすることに、慣れてしまっただけだ」
そう話す彼の目はどこか遠く、過ぎ去ってしまった何かを見つめていたように見えた。
「だから、今はまだこのままでいさせて欲しい。……酷いヤツだと思うけど」

 フォルの口からは、それ以上語られることはなかった。
「わたしは……」
シャーラは何かを言おうとして一瞬、言葉に詰まる。
何も知らない自分が、彼に一体どんな言葉をかけられるというのか。つい最近まで、外の世界に出たことすらなかった自分が。
だが、

「ーーわたしはそれでも、あなたと友人でありたいのです!」

それでも、彼女は言葉をかけてあげたかった。
黙り込むくらいなら、伝わらずとも伝えようとしたかった。
それは彼女の身勝手なエゴイズムかもしれない。
しかし、その言葉の根底にある気持ちだけは本物だ。
「……そっか」
すると、そんな気持ちが伝わったのか、フォルの表情が少しだけ柔らかくなった。
シャーラの慈愛に満ちたその表情は、時に悪意をも絡め取り、引きずり込んでしまえそうな程妖艶で麗しい。
だがフォルにはその暖かな微笑みが、まるで昔から探し求めていたモノのように懐かしく見えていたのだ。
「……ありがとう」
彼は誰に聞こえるわけでもない声で、思わずそう呟いていた。
「え?何か言いましたか?」
「…………そういえばそのジャージ、結構似合ってるよ、ってね」
だが少し照れ臭かったのか、咄嗟に癖で誤魔化してしまうフォル。
「む、また嘘つきましたね!」
先程と違い、フォルの表情は完璧な作り笑顔だったのだが、もうシャーラには通用しないようだった。
「バレた?」
「……ずるい人ですね」
「ふふ、そうかもね」
しかしそれでも、彼らの間にあった隔たりは、僅かではあるが小さくなっていた。
信じ合える間柄ではなくとも、彼らが友人であることに、確かに意味は存在するのだ。
「本当は何て言ったんですか?」
「……秘密」
「もー!!!」
意地悪く口を閉ざすフォル。
「それよりもさ、皆待たせてるだろうし皆の所に戻らなくきゃね」
そしてこともあろうに、彼は無理矢理話を切って撤退することを試みる。
「あっこら!ちょっと待ってください!」
逃がすまいと、すかさずシャーラがその後を追う。

 フォル・A・バイムラートという人物の真意は、シャーラにはまだわからない。
だが彼女は、いつかフォルの本当の笑顔を見てみたいと、ひっそりと思うようになっていたのだった。

三章 隠家②

 不良達のアジトの奥に、廃墟にしてはまだ小綺麗な質素な部屋があった。

 元は何かの居住スペースのような場所であったようだが、今では建物を占領する不良達の私物が乱雑に置かれ、所謂押し入れような場所となっている。
中でもチトセの私物の割合が多く、彼女以外の出入りもあまりないため、ほぼ彼女専用の部屋と言っても差し違えないだろう。
 そんな部屋で、シャーラ・I・ディザスターは懸命に戦っていた。

「…………どうやって脱ぐんでしょう、これ……」

ーーーー服と。
 外は雨が降り続き、止む気配はまだない。
彼女はここに来る途中で濡れてしまった服を脱ごうとしているのだが、先程からぎこちない手つきでブラウスのボタンを掴んだり弄ったりしているだけで、満足に脱ぐことができていないようだった。
「そんなの穴に通せばいいだけでしょ!」
そんな彼女の様子を見ていたチトセが呆れ気味に言う。
「ええ、っと……こうして……あ、あれぇ?」
「だからそこで穴に……」
「ん、んん~???」
アドバイスを入れるが一向に改善されない。むしろ悪化しているようにも見える。
どうやらこのお姫様は、果てしなく不器用であるどころか、私生活すらままならないようである。
「~~~~~~~あーもう!!!」
見るに耐えかねたチトセは、シャーラの着替えを手伝い始めていた。
「わ、すいません!手間取らせてしまって」
「あんたいつもどうやって服着てるんだよ……」
チトセはシャーラに気を付けの体勢をとらせたまま、手際よくボタンを外していく。
「城にいた時はお手伝いさんが手伝ってくださって……旅に出てからはフォル君に手伝って貰ってます」
あっけらかんとした様子で答えるシャーラ。
「マジかよ……」
衝撃的な事実にチトセは開いた口が塞がらなかった。
これが一般人と貴族との価値観の違いなのだろうか。
いいや、どう考えてもシャーラが特殊事例過ぎるだろ、とチトセは困惑した。
「手のかかる妹ができた気分だ」
「妹……じゃあチトセお姉様ですね!」
「言ってる場合か!」
えへ、と何故か嬉しそうに笑うシャーラ。
チトセは、はぁ、とため息をついた。
「アニキもびっくりの問題児だな……」
「気になっていたのですが、チトセちゃんはどうやってライト君と知り合ったんですか?」
「ん?アニキと?」
シャーラの問いかけに、チトセは一瞬困ったような表情を浮かべる。
「話すのは構わないけど、お姫様にとってはあんまり楽しくない話だぞ」
それに対し、大丈夫です、と頷くシャーラ。
「その……せ、せっかく友達になりましたし、できればチトセちゃんのことや、ライト君達のことをもっと知りたいんです」
¨友達¨というワードに若干の気恥ずかしさを感じながら、シャーラは囁くような声で言った。
「…………そだな、旅の話も聞かせてもらったしな」
それを聞いたチトセが、少しだけ安心したように微笑む。
「よし、それじゃあ……」
こほん、と軽い咳ばらいをすると、チトセはライトとの出会いの経緯を話し始めた。


「だーれもいなくなっちまったッスねェ……」
 時を同じくして、アジト二階のノイの個人スペース内。
フォルとノイは二人寂しく、諸用で別の部屋に行ったシャーラ達を待っていた。
「随分と暇になっちゃったね」
「いつものことッスよ、いつもこーしてダラダラしてるッス」
「へーそうなんだ」
フォルは床に乱雑に転がった雑誌を無造作に広げては、興味のない内容だとわかるとすぐに閉じて別の雑誌に手を伸ばす、ということを繰り返していた。
ノイの趣味なのだろうか、一般的な情報誌から店に置いてある無料の冊子まで、ありとあらゆるジャンルのものがそこら中に散らばっていたが、それらが片付けられている様子はない。
「あっそうだ」
 唐突に、フォルは雑誌漁りをしていた手をピタリと止めた。
「そういえば、なんで君達は自分より年下のニット帽の彼の舎弟になったの?」
「あーそこやっぱ気になるッスよね」
ノイは待ち構えていたかのような態度で言う。
「……俺らは皆ライトのアニキに救ってもらったから今ここにいれるんス」
「救ってもらった?」
フォルが訊くと、ノイはやたら自慢気に鼻を鳴らした。
「ヘヘッ、その経緯は結構しんみりしてて泣けると評判ッスよ」
俺が言ってるだけなんスけど、と小声で付け足しつつ、ノイは大袈裟な身振り手振りで語り始めたのだった。



「アタシの家はどこにでもあるような平和な家庭だった」
記憶を一つ一つ手繰り寄せるようにして、チトセは語る。
彼女は平凡な家庭に生まれた。
貧しくも豊かでもなく、かといって家庭内に暴力が蔓延っていたわけでもない。
いつものように両親共に働き、チトセ自身もまた学校へ通う、ある程度普通の暮らしだ。
「……ただ、みんな忙しくてさ、家族揃って一緒に何かをするって機会がほとんどなかった」
特別不幸というわけでもない、ありふれた暮らし、ありふれた人生。
だがその暮らしの中で、着実に積み重なっていた孤独があった。
満たされない心は次第に、彼女を非行へと駆り立てるようになっていった。
心の隙間を歪んだ形で埋めようとしたのだ。
「嫌気が差して家族に黙って家を出た。学校にも行かなくなったけど、それでもアタシの家族はアタシのことなんか気にも掛けなかった。……だからとうとう親が信じられなくなって、アタシはそこら中でケンカばっかするようになった」
バカみたいでしょ、と笑ってみせるチトセ。
「……それでもその時は、こんなアタシなんかを心配してくれる友達がいた。なのに、次第にその優しさが怖く感じた。自分がどうしようもなく小さい人間だと思い知らされているような気がしてね」
チトセは自嘲気味に言ってのける。
「劣等感しか感じられなかった。優しさが苦痛だった。だからそいつからもーーーー唯一差しのべてくれる手からも、逃げた」


「俺らは所謂、現実から逃げてきた¨臆病者¨なんスよ。理由もホントくだらねェ、周囲と馴染めなかったとか、家族が冷たかったとか、ケンカっ早かったとかでいつも息苦しい思いをして、とうとう耐えきれずに逃げ出した連中なんス」
そう語るノイの表情は冷静だった。
後悔や葛藤、憎しみ、哀しみ、寂しさ。
しかしそれらの感情に苦しんでいる様子はもうない。
彼に、いや¨彼ら¨にとって、それらはもうとっくに過ぎた出来事なのだ。
「逃げて逃げて逃げ続けて……そこら中で暴れまわって、利用されて、ドン底突っ走って…………そんな時ッス。¨アニキ¨に出会ったのは」
喧嘩に明け暮れていた者、頼れるものもなく彷徨っていた者、管理外区域でハイエナのように息巻いていた者。
経緯に差異あれど、ここにいる少年少女達は皆、「ライト」という一人の少年と出逢った。
「そっからは自分の中にあった淀んだ何かも吹っ飛んじまって。色々考えすぎてたんじゃねェかなって思えるようになったんスよ」


「アニキと出会ってからは変わったよ。そりゃ始めっから仲良くできなかったけど…………いっつもみんなでばか騒ぎしながら一緒のテーブルで飯を食うんだよ……そしたら、なんか、気付いちゃってさ。これが本当の家族の形なんだって。血の繋がりとか関係なしにね」
チトセはライトに出逢ったことで、欲しかった¨家族の形¨を見つけた。


「俺らの事情なんて端から見ればなんてことのない些細なモノッス。けど、たったそんだけを……俺らの空っぽだった部分を唯一理解してくれたのがアニキだったんスよ」
ノイはライトに出逢ったことで、己が心の隙間を埋めてくれる¨理解者¨を手に入れた。

 彼らの中で、いつしかライトという少年の存在は、心の拠り所であり、目指すべき目標となっていったのだった。



「……い、いい話ですぅぅえぐっ、えぐっ、うぅ……」
シャーラは話の後半から涙をボロボロと流しながら聞いていた。
「そんな泣くほどか?」
「だってっ、ライトぐんはっ、まだまだ若いのに、みんなのっ、みんなのお兄さんみたいになってぐれてっ!」
「まぁアニキがいればどんなことも大丈夫って信じてるけど………………っておい鼻水垂れてるぞ!せっかく着替えさせたのにまた汚す気か!」
「へっ?」
シャーラは自らの格好を見て驚く。
「あれ、いつの間に着替えを!?」
「気付けよ!」
チトセは鈍感すぎるシャーラを部屋のスタンドミラーの前へ連れていった。
「これは……」
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それはジッパーの付いた薄手の運動に適した上着だった。つまるところのジャージである。
動きやすさを重視した青いスパッツと短めのスカート、伸縮性のある白の運動着。そして上にはジャージを羽織り、髪は目に前髪がかからぬようピンで止められ、後髪もポニーテールに結われることで涼しげになっている。
「おおっ、なんだか身体が軽くなったような気がします!」
普段とは違う格好にテンションが上がるシャーラ。
当然ながら、チトセの持っているのは一般的なジャージであり、これといって高価なブランド品等とは程遠い代物だ。
だが日頃から運動用ではない衣類を纏っていたシャーラにとって、この運動着の生み出す身軽さは画期的なものであった。
「チトセちゃん、ありがとうございます!」
「そ、そう……!気に入ってもらえたようでなにより」
チトセは満面の笑みを向けてくるシャーラに若干狼狽えつつも、不思議とその表情には笑みが浮かんでいたのだった。



 フォルもまた、ノイの話をしばらく聞いたまま黙っていた。
(アニキ、ね……)
フォルは、はぁ、と息を吐く。
本当の家族を知らない、誰からも理解されない。そんな社会の異端とされている者達を受け入れる勇気。
それを持つことは決して楽なことではない。
 フォルはまだライトという人間については殆ど知らない。
もしかしたら、ライトはそれがどういうことか深く考えないままノイ達を迎え入れたのかもしれない。或いは、偽善者の自惚れた行為に過ぎなかっただけなのかもしれない。
しかし、ここにいる者達は皆ライトによって救われているのは事実だ。
(羨ましい、のか……?)
彼は自分に問い掛ける。
異なった存在。誰からも理解されない存在。かつてはそうだったと、ノイは言った。
だが、彼らは拠り所を見つけた。救い上げてもらった。
自分とは違う。ただの¨化物¨である、自分とは…………
フォルはそんなことを思うと、何故だか自分だけが、世界から独り取り残されているような気がするのだ。
「?フォルさんどうかしたんスか?」
 すると、ノイは黙ったままでいるフォルを奇妙に思ったのか、訝しげに彼の顔を覗き込んでいた。
「……いや、別に」
「あーもしかして話聞いてて眠くなっちゃったッスか?俺もあるんスよねェ長い話聞いてっとコックリコックリ……」
そんなわけないだろ、とフォルは内心思ったが、
「ちょっと疲れちゃったみたい。申し訳ないんだけど、どこか休めそうな空き部屋はないかな」
好都合だとノイの言葉に乗ることにした。
とにかく今は、この場所を離れたかった。
自分はここにいてはいけない、そんなように思えて仕方がなかったのだ。



「さて、みんなのとこへ戻るよ」
「そうですね。もたついて思ったより時間がかかっちゃいました」
「アンタのせいだぞ!」
「す、すみません」
チトセの的確な指摘に謝罪するシャーラ。
あまり皆を待たせてはいけないと、彼女らは部屋を後にすることになっていた。
「アンタらこの豪雨でこれからどうするの?ウチは一応お泊まりOKだけど」
「いえ、お構いなく。雨が弱くなったらご迷惑をかけないうちにどこかの宿に泊まるつもりでーー」

ーーシャーラが言葉を言い終える間もなく、ピシャリ、と雷が大きな音を立てながら遠くで落ちた。

「…………やっぱり、泊まらせていただいていいですか?」
バツの悪そうな顔でシャーラは自らの発言を取り消した。
どうやら雨は止むどころか、更にその勢いを増しているようだ。
「フフッ、わかりやすいなアンタ」
シャーラのあまりに華麗な手の平返しに、チトセは思わず噴き出してしまう。
「も、申し訳ないです……」
「いーじゃんいーじゃん。お互い腹を割って話した仲なんだしさぁ」
「それはそうですが……」
「それよりホラ、フォルさんに泊まるって伝えてきたほうがいいんじゃないの?」
ポン、とチトセはシャーラの背中を押す。
「……そうですね、わかりました!ありがとうございます、チトセちゃん!」
そう言って、シャーラが走り慣れない様子でトタトタと駆けてゆくのを、チトセは軽く手を振りながら見送った。
「……懐かしいな」
その後ろ姿に、かつての友人の姿を重ねながら。





 一方、舎弟を連れて事情説明をしているライトは、というと。

「だーかーらぁー!!!もっかい最初から説明すんぞ!!!あの可愛くて胸の大きな人はーーーー」
こじんまりとしたアジトの空き部屋に、ライトの声が響き渡る。
一体何度目の説明だろうか。
舎弟達の理解がどうしようもなく乏しいがために、ライトは何度も何度も同じ説明をひたすら繰り返していたのだった。
「アニキ!すんませんよくわかんないッス!!!」
「……………………お前ら……」
だがライトはへこたれなかった。
諦めてはいられない。
たとえストレスで電気が腕から洩れても、彼はアニキとしての宿命があるのだ。
彼はもう一度、その声を張り上げて言った。
「……もう一度説明するぞォォォ!!!!」

ここまで、約十三回目の説明し直しである。

三章 隠家①

あれからしばらくルクリフィアの町を歩いていたフォル、シャーラ、ライト、ノイ、チトセの五人は、いつしか中心部から離れ、比較的人通りの落ち着いた場所へ来ていた。

「大分歩きやすくなったね、シャーラちゃん」
「え、えぇ……あはは……」
悠々自適に歩んでいくフォル。その背後から、シャーラはまるで生まれたての小鹿のように、足をガクつかせながらついてきていた。
「シャーラさん大丈夫ッスか?なんならそこのベンチで休むとか……」
「い、いえ、お構いなくっ」
彼女は心配そうに自分の顔を覗き込むライトを制し、不安定な足取りながらも一歩一歩着実に足を前に運んでいく。
息も絶え絶えに歩くその姿は、見ている側までヒヤヒヤさせられる。

――シャーラ・I・ディザスターには致命的に体力がなかった。
というのも、一国の姫であり、箱入り同然に育てられた彼女は、フォルに出会う以前では外出すらしたことがなかったのである。
故に彼女が運動盛り真っ只中の年齢であっても、その体は錆びた機械のように思うように動かない。それどころか、必要最低限の体力すら持ち合わせていなかったのだ。

「シャーラさんこれ思ったより結構ヤベェんじゃねェスか?」
「めっちゃ顔色悪いぞこのお姫様……」
ノイとチトセは額に冷や汗をかきながら、なんとかしてあげて、と訴えるようにシャーラの保護者であるフォルに視線を向けた。
しかしフォルは動かない。
彼は両手を上げていた。……¨お手上げ¨という意味だろうか。
この少年、どこか薄情である。
「残念ながらあの子の体力作りの邪魔はできないね」
等と言っていたが、一瞬悪い笑みを見せたかと思うと、
「……そうそう、初めて城下町に出たときなんて、少し歩いただけで気分が悪くなって路地裏で吐」
「いやあああああそれ以上言わないでください!!」
うっかり自分の恥ずかしい秘密を洩らしそうなフォルを慌てて止めるシャーラ。
「はーっ、はーっ、はーっ……」
思わず声を張り上げてしまったために、さらに体力が減少する。
だが彼女は歩みを止めようとは思わなかった。
いや、止められなかった。
フォルがいつ自らの恥ずかしい秘密をバラすか気が気ではないからである。
ふと視線を正面に向けると、彼はこちらを随時確認しながらニタニタと笑っていた。
どうやら彼はこの「小さな脅迫」によって体力のないシャーラを歩かせようとする魂胆らしい。
少しは体力をつけろ、というフォルの意図が見えるのは勿論であるが、同時にどこか面白半分でやっている節も見受けられる。
(うぅぅ、こんなことならもっと日頃から運動しておくべきでした……)
千鳥足になっている最中、シャーラはそんなことを思いながら、食らいつきながらなんとか他の四人の後をついていくのだった。

それから数分後。
更に人は少なくなり、周囲の建物の背もそこまで高くないものが多くなってきていた。
「なんか、降りそうだね」
ぼんやりと空を見つめていたフォルが呟く。
彼らがこの町にやってきた時からずっと、空は塗り潰されたようにグレー一色だった。
しかしそれは僅かながら薄黒い面が増えていき、雲行きは徐々に怪しくなっているように見える。
「君達のアジトまであとどれくらい?」
念のためフォルはライトに尋ねる。
「もうすぐッスよ。あ、ホラ見えてきた」
ライトがそう言って指し示した方向には、使われなくなった建物が並ぶ廃墟街のようなものが確認できた。
当然ここまでくればさほど高い建物ではないが、どうやらその廃墟らも元はビル街であったようだ。
「あの辺りの廃ビルの一つをオレらの根城にしてるんスよ」
「……へぇ」
フォルは少しだけ不審に思った。
先程からあった違和感。おそらくは、あれほど発展していた中心街とこの辺り一帯はえらく寂れ具合の落差からくるのであろう。
中心街から遠ざかれば、建物も比較的落ち着いたものになるということは当然で、一見何もおかしな点はないように思われる。
しかしここは違った。異様に廃墟が多い。
まるで忘れられ、置き去りにされたような、そんな雰囲気がどことなく漂っていた。
そんな不思議な空気を味わいながら、フォルは廃墟の増えた街並みを眺める。
「もっと先まで行くと更に廃墟だらけだね」
「あぁー……あっちは……」
思わせぶりに渋い顔を見せるライト。
「何かあるの?」
フォルはすかさず追求する。

「ーーあっちは¨管理外区域¨よ」

彼の疑問に答えたのはチトセだった。
「都市の発展から置き去りにされた廃墟街。あっちでたむろってる連中はろくなやつがいないわ」
ノイがそれに続ける。
「俺っちも一回あそこに行ったことあるんスけどよォ、無法地帯もいいところッスよ」
どうやら彼も管理外区域には嫌悪感を露にしているようだ。
「そんな場所が…………」
フォルは眉間にシワを寄せる。
「まーでも安心して欲しいッス」
するとライトがずいっと顔をフォルに近付け、
「オレらはたまにその管理外区域に住み着いたならず者をシメに行ったり、そいつらの被害を受けてる連中を助けたりしてるんスよ」
どうだ、と言わんばかりに鼻を鳴らしてみせる。
えらく自信満々な態度だ。
「へぇ、実際にちゃんと助けられてるの?」
「それはもう……!」
「あぁ、一応アタシはライトのアニキ助けられてあの¨管理外区域¨から逃れてきたけど……」
尊大な態度のライトの後ろでチトセが小さく主張する。
「てかアジトにいるアニキの舎弟の殆どがアニキに助けられたって感じ」
「俺もそうッスよ~」
「そうなんだ」
意外そうにライトを見つめるフォル。
「つまり実績もバッチリというわけだね」
「えへへ、まぁ、そんなとこッスかね」
誉められて照れ臭そうに笑うライト。
この辺りはやはり年相応なのか、彼自身の無邪気な様子が表れている。
「というわけでシャーラちゃんも、どうやら管理外区域ってとこは危ないみたいだから気をつけてね~…………ってあれ、シャーラちゃん?」
フォルが背後のシャーラの方へ向き直って危険を知らせるも、何故か彼女は反応を示さない。
ただひたすらぽてぽてと歩いているだけのシャーラだが、慣れない外出による疲労なのか、その表情はなんとも一国の姫のイメージとは程遠い、険しいものになってしまっていた。
「もしもーし…………あらら聞こえてないねこれ。大丈夫かな」
まさに上の空。脱け殻。歩くだけのロボ。
そんなシャーラをフォルは若干可哀想に思ったのか、とうとう彼はよちよち歩きのお姫様に手をさしのべることを決める。
すると、

「ーーーー雨?」

その時、シャーラへとフォルが伸ばした掌の上に一粒の水滴が落ちた。
気のせいかと思う間もなく、すぐに二粒、三粒が掌に落ち、瞬く間にいくつもの雨粒が乾いたアスファルトの地面を濡らし始めた。
「降ってきたッスね」
ライトも雨に気付く。
「アニキ、傘ないし強くなる前にアタシらも早くアジトに戻ろう」
「今のうちに走れば大丈夫じゃあねェッスか、アニキ!」
「……みてーだな」
舎弟二人に促され、ライトはフォルとシャーラにも呼び掛ける。
「フォルさん、シャーラさん、オレらのアジトすぐそこなんで走るッスよ!」
「仕方ないか……了解」
「へ、は、走るってそんな……ってきゃあっ!?」
迅速な行動だった。
フォルは今にも天に召されそうになっているシャーラを問答無用でおぶり、そのままライト達が案内する後をついていくことにしたのだった。


ーーアジトにつく頃には雨はかなり強くなっていた。
雨粒はバシャバシャと音を立てながら容赦なく地面を叩きつける。
降りだしてからアジトまでさほど時間はかからなかったのだが、既にライト、ノイ、チトセの三人はまるで滝修行の後のように全身ずぶ濡れになっていた。
折角雨を凌げる場所へ到達できてもこれでは無意味だ。
シャーラの方も、フォルにおぶられた都合上、降り注ぐ雨をダイレクトに背中に受けてしまっている。
フォルはというと、顔周りは帽子である程度被害を食い止めていたのだが、背負っていたシャーラの汗が背中に吸い付いたがために、結果なんとも言えない嫌な湿り気に悩まされることとなっていた。

「んじゃ改めて……ここがオレらのアジトッス」
トレードマークのニット帽を脱ぎ、髪から滴り落ちる水を払いながらライトが指差したのは、街の一角のひとつの小さな廃ビルだった。
廃墟、といっても先程見えた管理外区域のものと比べても状態は悪くない。
風化もそれほど見られず、窓や戸等もきちんと付いたままである。
どうやら建物が放置されてからさほど時間は経っていないようだった。

「よ、ようやく着いたんですね……」
意識を取り戻したシャーラがうわ言のように呟く。
「フォル君もおんぶありがとうございます。なんだかクルマに乗せていただいたような……そんな心地よい気分でした……乗ったことありませんが」
「クルマはおんぶなんかよりもっと快適だよ」
疲れからか意味不明な台詞を発したシャーラを冷静に制するフォル。
「それより大丈夫、立てる?」
「えぇ、はい。なんとか」
「吐いたりしない?」
「は、吐きません!!!!!」
フォルはゆっくりとシャーラを下ろす。
少しだけおぼつかない足取りであったが、どうやらシャーラは自力で立てるまで体力が戻っていたようだ。
「……わたし、自分が腑甲斐無いせいで皆さんに迷惑かけちゃいましたね」
申し訳なさそうに頭を下げるシャーラ。
自分のペースに合わせずに皆が歩いていれば、雨足が強くなる前にここへ辿り着けたのだろうか、と彼女はぼんやり考えた。
よもや自らの体力のなさがこうして誰かの足枷になってしまうとは、シャーラ自身あの城にいた頃には思いもしなかったのである。
「え、ちょ、わ、待って、んな風にお堅くせず自然な感じでいいんスよシャーラさん!」
王族に頭を下げられ、妙な緊張を感じたライトが慌ててなだめる。
「そうですか……?で、でも自然な感じというのは……すいません、あまりそういうのに慣れていなくてどうしたらいいのか…………」
戸惑いながら顔を上げるシャーラ。するとそんな中、フォルがぼそりと隣で呟いた。
「呼び名をもっとフランクな感じにしたら?」
「フランク……な、なるほど!」
シャーラはそう言って数秒黙りこんだかと思うと、何かを決したような顔で不良達三人組に向き直る。
「えーっと……ライト¨君¨!」
「おす!」
「ノイ¨君¨!」
「ハィ!」
「チトセ¨ちゃん¨!」
「はーい」
どうやら言われた通り、シャーラはさっそくフランクな呼び方を実践することにしたようである。
「ど、どうですか……?」
彼女は僅かに顔を赤くしながら、おそるおそる不良三人の顔に視線を向けた。
「なんか……すげェドキっとするッス……!」
左胸をおさえながらノイが答えた。
「アタシら¨くん¨とか¨ちゃん¨ってタマじゃないから照れるな……」
チトセも照れ臭そうに頬をかく。
「シャーラさんこれ……別の意味で緊張するッスね……」
「えぇ!?や、やっぱりやめた方が……」
「いやいやいや!!!このままでいいッスよ!!っていうかこのままにしてくださいッス!!!」
「そうですか……?」
「そうッスよ!!!」
三人の中で一番もっともらしい反応を見せるライト。
シャーラにはいまひとつその意味がわかっていなかったようであったが。
「ーーーーえーっと、オホン、そんなことより……」
わざとらしい咳払いをして調子を戻すライト。
「ここはさっきも言った通り、管理外区域の手前んところにあった空きビルをオレ達が使ってるんスよ」
彼はもはや動くこともない自動ドアを手で開け、フォル達に中へ入るように促す。
「じゃあおじゃましまーす」
フォル達が入っていくと、まず意外と廃墟にしては小綺麗であることに気が付いた。
多少埃っぽさは感じられたものの、廃墟らしい不気味さは一切なく、動力は届いていなかったが設備や家具はそのまま残っている。窓もひび割れてはいるがしっかりとついており、雨風を凌ぐには申し分なかった。
さらに奥へ進むと、ところどころにカラースプレーで描かれた変なラクガキが目につく。不良達が描いたのだろうか、それは上の階へ続く階段へ向かうに従い多くなっていた。
ライト達が主に使用しているのは二階部分のようだ。
「でもいいの?廃墟とはいえ勝手に住み着いちゃって……」
「あーいいんスよいいんスよ」
フォルの疑念をライトはすぐに否定する。
「ここも半管理外区域みたいなもんなんで、アンモクのリョーカイ?ってヤツッス」
「なんですかそのアンモクのリョーカイって……ひゃ!?」
「はいはーいお姫様には聞かせられないお話だよー」
不良達の知られざる脱法事情を純粋無垢で清廉潔白なシャーラに聞かせるわけにもいかず、フォルはすかさず彼女の耳を塞ぐ。
ライト達がここを半管理外区域と呼ぶのも納得で、あちら程ではないにしろこちらにも少なからずルールの抜け穴のようなものが存在しているようだ。

「さて、この二階がオレらの居住スペースッス」
ライトは一番に階段を駆け上がって言った。
この二階は一階とは異なり、ライト達が住まうにあたって大々的な改装が施されていた。
元々居住スペース付の事務所跡のようなものだったようだが、事務所にあたる部屋にあるものが殆ど撤去されており、代わりにどこから持ってきたかもわからない畳やマットで六つ程のエリアが形成されていた。
個人の部屋のつもりなのだろうか、そのエリアは申し訳程度の仕切りで区切られ、扉のようなものはない。
とはいえ、元の部屋がそれなりに広いため、場所の取り合いになっている様子はなかった。各々が各種自らの趣味や必要品を持ち込んでいるようだ。
だが個人のエリアといっても、布団やベッド等までは見当たらないため、おそらく大体の生活用品は居住スペースにあると思われる。

「雨で濡れたし着替えた方がいいなー」
ライトがニット帽を外しながらそう呟いた。
「フォルさん達も風邪引くし着替えた方がいいよ」
チトセもまた自らのジャージを脱ぎながら言う。
「俺は帽子とコートを脱げばいいけど……シャーラちゃんは着替えないとマズいね。透けてるし」
「へーそ、そうなんスか」
フォルの言葉を聞き、意識してしまったのか露骨に視線をシャーラから逸らすライト。
逆にノイは横目でチラチラとシャーラを見始めたため、隣にいるチトセに蔑んだ瞳を向けられていた。
「着替えがないから今はとりあえず服は貸してもらおう、シャーラちゃん………………ダメだ、また聞いてない」
フォルもフォルで、シャーラを下心にまみれた視線から救うために濡れた服を乾かすことを提案した……はずだったのだが。
「ここが噂の隠れ家、『アジト』なんですね!」
当の彼女は雨で濡れていることなどお構いなしに、まるで新しい玩具を買ってもらった子供のように目を輝かせ、話を聞く耳すら持たない状態となっていた。
彼女は物珍しそうに周囲を見渡しながら、本でしか知ることのできなかった¨アジト¨への興奮を抑えきれないでいるようだ。
彼女の悪い癖だった。のめり込めばなかなかに抜け出せない。

「こちらには一体何がーーーーわっ!?」
そんな好奇心旺盛な性分が招いた事故か、シャーラが奥の方へ進もうとした瞬間、目の前に現れた二人の少年と一人の少女の三人組と追突してしまう。
「ひっ、だ、誰だアンタ!!!」
「ちょっとなぁにぃ?」
「侵入者か!?」
一人はガタイのいい大柄な少年。一人はスカート丈の長いセーラー服を着た少女。一人はライトくらいの年齢であろう短髪の少年。
彼らがライト達が言っていた舎弟だろうか、いずれも目の前に現れた謎の銀髪の美少女を警戒しているようだった。
「どこから来た!?」
ガタイのいい大柄な少年が問う。
「アニキに何か用でも?」
セーラー服を着た少女が問う。
「…………」
短髪の少年は黙ったまま、シャーラの濡れて透けたブラウスを凝視していた。
「え、えっと……」
一度に三人に迫られたシャーラが困惑の表情を見せていると、ライトがひょこっと彼女の後ろから顔を出し、
「シド、レミ、ソラ、この人はオレのお客さんだぞ」
三人の少年少女に向けてそう御した。
この「シド」「レミ」「ソラ」というのはどうもこの三人の名前らしく、それぞれ、大柄な少年がシド、セーラー服の少女がレミ、短髪の少年がソラ、というらしい。
「「「……はッ、アニキ!」」」
息ピッタリの反応を示す三人。
だがそれも一瞬で、すぐに彼らは各々畳み掛けるようにシャーラへの質問を繰り出す。
「お客さんって一体!?」
「どんな関係なんですか!?」
「………………おおきい……」
一人だけ反応が違うが。
「待てお前ら!一個一個説明するから」
ライトの声でまたもや三人が止まる。
その様はまるで躾けられたサーカスの動物達のようだ。
¨アニキ¨と呼ばれているあたり彼らの扱いには慣れているようである。

「じゃあハイほら、シャーラさんはとっとと着替えて!」
ライトが三人に事情を説明する間、チトセがきょとんと立ちつくしていたシャーラに呼び掛ける。
「は、そういえばそうですね……でも替えの服を持っていなくて」
「アタシの貸してやるからいいよ」
「え、でも……」
「いーの!!」
ほらいくぞ、とチトセは遠慮するシャーラの背を若干強引に押しながら、着替えさせるために奥の部屋へと連れていった。

「……あらら、行っちゃった」
コートと帽子を外して軽装になったフォルが呟く。
すると、ライトもチトセも出払った中、一人取り残されたノイがひょっこりと顔を出した。
「フォルさんも着替え貸すッスよ。こっから上の階、俺らの物置きなんで服とか結構余ってるし…………前の所有者のものっぽい変な着ぐるみとかもあるんスけど」
「いや、このままで大丈夫だよ」
ノイの着替えの提案にフォルはやんわりと断りを入れる。
「…………それより、雨がやむまではしばらくここにいさせてもらうことになる、かもね」
フォルが窓の外へ視線を向けると、多量の雨粒が勢いよく窓を叩きつけていた。
窓はガタガタと不安定に揺れ、しばらく収まる気配はない。

こんな大雨は久々だ。
ライト達には少しの間迷惑をかけてしまうであろうことをフォルは薄々感じながら、とりあえず今はシャーラの着替えが済むのをぼんやり待つことにしたのだった。

三章 暗躍①

フォル達がライト達のアジトへと向かっている一方その頃。

街の校外。
賑やかなルクリフィアの中心部とは違い、人の姿を見ることのないほどに寂れている。
明かりが点ることのない廃ビル、シャッターの開かない、かつて商店街があったであろう通りはとうの昔に寂れ、辺りに点在する標識と信号だけが、風化しても尚その役目を果たし続けていた。
町が発展していくにつれ、新しいものが古いものを淘汰していくのは世の常である。
ここは町の新たな管理体制への移行により、その存在意味を失なった建物が多く点在していた。
いずれは町の中心部同様に作り替えられてゆくであろうこの過去の町だが、今現在移り変わりの狭間に位置する時であるせいで、今尚取り残されたままの地域が点在している。
そうした場所には決まって管理体制から外れた存在――所謂裏の社会と呼ばれる世界の住民が、まるで死骸を食らうハイエナのように寄り付き、管理外のこの町に巣くっていたのだった。

そんな場所の、とある廃ビルの一室。
嫌に湿り気のある空気が壁や天井に染み付いており、床には何処の誰が棄てたかもわからないゴミや家具だったものがそこかしこに転がる。
天井に取り残された電灯が、誰の手に渡ることもなく薄暗い部屋の中心で鎮座し続ける机を照らしていた。
その机の上に一人、そして部屋の隅にまた一人と、電灯は不安定に明滅を繰り返しながら、二つの人影を照らし出している。
その内の机に腰かけている一人。
サングラスをかけたスーツの男は、暇そうにブラブラと足を遊ばせていた。
年は若い。中肉中背で、さしずめ二十代前半といった具合だ。
染めているであろうブロンドの髪、ナイフの切り傷のように細く鋭い瞳……出で立ちの荒々しさは勿論、どうやら暴力沙汰も手慣れているようにも見えた。
ランペイジ・エイデム。
この過去の町に寄生する、ゴロツキと呼ぶにはあまりに多くの人を殺し、殺人鬼と呼ぶにはあまりに殺人への執着のない、ただ弱者をいたぶることのみに快楽を求める人間の名である。
よほど暇であるのか、彼は退屈そうな顔で、部屋の隅に控えていたもう一人に言葉を投げかけた。
「あ~あ、なんだってガキなんて雇っちまったのかなァ」
なんとも軽々しい、冗談めいた口調。
ランペイジは大きくため息を吐いた。
「用心棒、なんて最初は冗談かと思ったぜ。……まぁ、後から利用価値があると思って雇ったのは俺自身だけどな」
「…………」
つらつらと語るランペイジだったが、部屋にいるもう一人から返ってくる言葉はなかった。
「……ハァ。やっぱり反応なしか」
彼は最初からわかっていました、とでも言いたげに肩を落とす。
彼が自分の横へ目をやると、そこには電灯の明滅に合わせて姿を見え隠れさせるもう一人の存在が、まるでネジの巻かれていない玩具のように微動だにせず佇んでいた。
しかしというもの、その人影は何も男の言葉を無視しているわけではない。

――それは人間ではなかった。
着ている衣服こそ特徴のない一般的なデニムのパンツに、フード付のパーカー。
フードを目深に被った姿だけなら普通の人間とそう大差はない。
だが、フードの奥に見えるその容貌は、明らかに人間のそれとはかけ離れていた。
その瞳には、人間としての輝きはなかったのである。
それは機械で構成されていた。
骸骨のような形状の顔を形成する灰色の皮膚には、電子回路のような無数のラインが浮かび上がっており、その頭部に取り付けられている半透明のカバーの中には、人間の脳とおぼしき臓器が何かの液体に浮かんでおり、時折中の液体がゴボゴボと泡立っていた。
人間と同じ体型、服装をしていながらも、その姿はまさに無機質な機械そのものだった。
ただじっと、その紅く発光する瞳をフードの下から覗かせているのみである。

ランペイジはその機械人形の姿を改めて一望すると、くくっと笑みを溢し、
「こいつが笑い話の一つも出来ねぇのはちと残念だが……¨あの人¨も太っ腹だなぁ?戦闘データを録って渡す条件でこんなヤベェモンをくれるんだからよ」
まるで自分が城を持った権力者とでも言わんばかりに、彼は悠々自適に笑った。
彼がとある人物から譲り受けたこの機械人形は、戦闘を目的とした兵器である。
訳は割愛するが、どんな偶然か、彼は何日か前に出会ったある人物から研究を手伝って欲しいと頼まれたのだ。
怪しい話ではあったが、ランペイジは自分に対して不利益がないことを確認すると、喜んでそれを引き受けたのだった。
「…………んァ?」
するとランペイジは何かに気付いたのか、笑うのを中断して部屋の扉の方へ目を向ける。
丁度その時、まるでタイミングを見計らったかのように、部屋の外からコツコツと軽く扉をノックする音が聞こえてきた。
誰かがこの廃ビルの一室へとやってきたのだ。
「おぉ、ようやく話し相手になるやつが帰って来た」
ランペイジは待ち望んでいたとでも言わんばかりに喜んだ。
同時に、彼の視線の先、風化して今にも外れそうなドアノブがカタリと下に回され、僅かに錆び付いて凹んでいる部屋のドアがゆっくりと開かれた。
「思ったよりも大分早かったじゃねーか」
部屋に入ってきたのは、少年と少女の二人。
子どもだった。
見た目は十代前半程度。背丈こそ多少の差はあれど、髪色、瞳の色、顔立ち共に非常に似通っている点に血の繋がりが現れている。
彼らはつがいの双子なのだ。
「仕事の腕には自信がありますから、僕達」
少年が言った。
「でもこれよーじんぼーの仕事じゃないよ~」
続いて少女も口を開いた。
声の調子は一定で、強弱のない気だるそうな話し方は双子で共通している。
一見普通の子どもなのではあるが、彼らの瞳に宿る闘志は、獲物を欲さんとする獣のそれに親い。
その気になればいつでも仕留めてみせる、という自信に満ちていたのだ。

そう、彼らこそがランペイジの言っていた「用心棒」なのであった。
「…………えーっと、どっちがどっちだっけ?」
ランペイジがおちょくり半分で用心棒の二人に訊くと、彼らは双子らしく揃った動きでお互いの顔を見合わせる。
そして、まず目立たないグレーのシャツを着た少年が呆れた顔で「デクレ=シェード」と名乗り、続いてもう一方の白いフリルのスカートを履いた少女が「クレス=シェード」だと名乗った。
名前を覚えられていないことが気に入らなかったのか、彼らは双方共に仏頂面でランペイジを睨んだ。
だがランペイジは薄情にも、訊いておきながら心底どうでもよさそうな顔で会話を続行した。
「へーまぁいいや、ところで俺が頼んだ通りちゃんと連れてきたか?」
「…………今持ってきます」
ランペイジの不躾な態度にデクレは内心舌打ちをするも、じっとりとした足取りでドアの方へと向かった。
彼は一旦部屋から出ると、外から何やらリボン付きの大きめの白い袋をずるずると引きずり出してくる。
大きさは人間、それも大柄な男が入るほどであり、中身が入っているのか、袋はパンパンに膨れ上がっていた。
「かわいいラッピングだね、デクレ」
そう口にしたクレスはしゃがみこみ、デクレの運んできた袋をまるで犬でも手懐けるように優しく撫でる。

しかし次の瞬間、彼女は突如立ち上がり、
「じゃっ、お寝坊さんを起こしてあげよっ!」
ほんの数秒前に優しく撫でていたことが嘘のように、なんと袋を乱暴に蹴り始めたのだった。
「いーち!にーい!さーん!よーん!」
一回、二回、三回、四回…………そこまで蹴りつけた所で、何やら袋がひとりでに蠢き出した。
「ヴッ……ヴグッ……」
不気味な唸り声を上げ、苦しそうにモゾモゾと動く袋。
クレスはそれを見て、自らの気分が高揚していくのを感じていた。
「ねぇ!ほら!ねぇ!ねぇ!ねぇってば!ほら!早く起きなよ!」
彼女は自分がスカートをはいていることも気にせず、容赦なく蹴りのスピードと強さを上げていく。
「ゲホッ、ゲホッ!グフッ……」
それに伴い、今まで芋虫のように這っていただけの袋が、今度は陸に打ち上げられた魚のように虚しく跳ねた。
それは無生物ではありえない挙動だ。
そう、いるのである。袋の中には何か、それも生きているものが。
「……コイツもう起きてるよ、クレス」
それまでクレスが袋を蹴りつけるのを冷静に傍観していたデクレが、これまた冷静に彼女の蹴りを制止した。
「ちょっと消化不良~……」
クレスはまだ物足りなそうな顔をしていたが、ふぅと息を吐くと、残念そうに袋から足を退ける。
「おうおう怖い怖い。なんだ、そいつに恨みでもあるのか?」
スーツの男がからかい半分で訊くとクレスは、「別にぃ」とはぐらかすように答える。
「イライラしてるんだよね、クレス。……さっき帽子のお兄さんに負けたから」
デクレが申し訳なさそうに声を上げるが、クレスはそれについては黙りを決め込んでいた。
「帽子の?何のことだ?」
「いえ、気にしないでください……あなたに雇われる前の話です」
それより、とデクレはランペイジの言葉を遮って話題を変える。
「アレ、どうします?起こしちゃいましたよ」
そう言ってデクレが指差したのは、先程までクレスが蹴っていた大きな袋だった。
持ってきた時とは異なり、今ではゴソゴソと気味の悪い音を立てながら部屋の入り口辺りで蠢いている。
「ヒィ……ハァッ……!な、なんだよこれ……おい誰か!助けてくれ!」
すると袋の中からなんと、人間の男の声が聞こえてきた。

――袋に入っていたのは、人間丸々一人だったのである。

袋の中の人物は、自分が今置かれている状況への恐怖からか、震える声で袋の外に助けを求めていた。
デクレはそんな彼を興味がなさそうに一瞥すると、
「初仕事は¨コレ¨でいい?ランペイジさん」
クレスと同様にして、今度はデクレが人間の入った袋を思いきり蹴り飛ばし、そのままランペイジのもとに差し出す形となった。
「上出来だ。……用心棒なんかよりこっちの仕事の方がよっぽど向いてんじゃねぇの?」
ランペイジは自分のサングラスを指で押し上げ、ニヤニヤと笑いながら言う。

「な、な、なん、何だ!?そこに誰かいるのか?!」
するとランペイジの声に反応して、袋の中の人物が吃りながらも言葉を紡いだ。
自らの状況がわからない。
何故捕らわれているか、何故身体が痛むかも不明なまま、彼は必死に脱け出そうともがく。
しかし彼の悲痛な叫びも虚しく、デクレとクレスの二人は、もう自分の仕事は済んだとでも言わんばかりに、袋の人物への無関心を貫いた。
「おい、誰か!誰か!!」
袋の人物は再び叫ぶ。
しかし状況は変わらなかった。
だが彼のもとに一人だけ、ゆっくりと近付いてくる足音があった。
ランペイジである。
「あー……そこの袋のヤツ?一回しか言わないからよぉく聞いておけよ」
薄気味悪いせせら笑いを浮かべたランペイジは、袋をじっとりと睨むように見据える。
「な、え、何だアンタ……?」
突然の聞こえてきた声に戸惑う袋の人物。
だが、この右も左もわからぬ状況下で人間の気配を感じ取れたことが嬉しいのか、彼は構わず助けを求める声を上げた。
「まぁいい早く助けてくれ!アンタすぐ近くに――――ぐあッ!」
しかし返ってきたのは腹部への強烈な痛み。
「一回しか言わねぇっつってんだろ!ウダウダ言ってねぇで黙って聞いてろ!!」
先程の痛みとは段違いの重みを持ったそれは、ランペイジの蹴りによるものだった。
彼は袋の人物の助けを請う態度など気にも留めていないどころか、袋の人物の話を聞く耳すら持っていない。
受け身を取ることもできずただ壁まで転がっていく袋。
不意の痛みから恐怖に怯える袋の人物に対し、ランペイジは静かに、そして落ち着きのある声で語りかける。
「今、ここに生きた人間の魔力を死ぬまで吸うことで動力にして動く機械人形がある。…………だがよ、こいつはまだまだ本調子になるまで動力の魔力が足りてねぇわけなんだわ」
つまりは、だ。と彼は続ける。
「こいつはもっと人間から魔力を吸収したい、わかるか?」
「機械人形……?魔力の吸収……?死……?」
痛みを堪え、袋の人物は語りかけてきた人物の忠告通り、注意深くそれを聞いていた。
当然、袋に閉ざされた身では耳から入る情報が全てだ。
語りかけてきた人物は、ここに人間から魔力を補充する機械人形があると言っていた。
それも死ぬまで魔力を吸うということである。
そして、その機械人形は魔力が足りていないため、人間から魔力を吸い取る必要があるとも言った。
とすると、その機械人形はすぐさまここで人間から魔力を吸収するということなのだろうか。
では、誰から?
この場で最も魔力を奪いやすいのは誰なのか?
袋の人物は、自分が恐ろしい結論を出そうとしてしまっていることに驚く。
しかし、今の状況からして答えは明らかであろう。
悲しいことに、この状況が全てを物語っていたのだ。
「ひ、そ、そ、それって、つまり……」
袋の人物はすぐに恐れおののいた。
だがそれは単に自らが出した恐ろしい想像によるものからだけではない。
感じ取ったのである。
語りかけてきた人物――ランペイジの醜悪な、邪悪な、劣悪な笑みを。
「あ~悪いなぁ律儀にちゃーんと聞いてもらってよ」
まるで悪魔の申し子だ。
「あ……あ……!」
そう、彼はわざと教えたのだ。
これから死ぬ人間が絶望にうちひしがれる様を見るためだけに。
無意味に足掻く、その姿を見るためだけに。
「やめろ、やめてくれ!何故俺なんだ!!代わりは他にいくらでもいるだろう!?何故俺でなければ……」
ランペイジからはこの光景がどう見えているのだろう。
クレスによって可愛らしくラッピングされた袋に閉じ込められ、外の様子を知ることもなくただただ恐怖を植え付けられて怯える人間を見るのは、さぞシュールであり滑稽なことに感じられただろうか。
あるいは、ありふれた反応しか見せないつまらない存在に見えているのだろうか。
だが、これだけは言える。

彼は――笑っていた。

「……悪いが、代わりを待ってられるようにこの人形はしつけられてねぇんだわ」
ハァ、とランペイジは小さく恍惚のため息を吐く。
この瞬間を待っていたのだ。
実に、実に、楽しみに。
他人の命運を自らの手で握る、この瞬間を。
彼は自らの甘美の一時の味を噛みしめ、そして袋の人物へ最後の言葉を送ったのだった。
「じゃあな」

「ちょっと、待――――」

その瞬間、ドスッ、と何かが刺されたような音が部屋に響く。

「あ……が……」

続いて聞こえたのは何者かの呻くような声。
それが袋の人物の発したものであることは誰が聞いても明らかであった。
袋の中身を貫いたもの。
刺さっていたのは小型の刃物だった。
しかしそれは普通の刃物ではない。
本来刃物の持ち手があるであろう部分から無機質な管のようなモノが伸びており、その管の道筋を辿っていくと、それはパーカーを被った人物――機械人形の首筋から生えていたモノであるとわかった。
しかし当の袋の人物は、その機械人形の異様な姿も、自らが腹を貫かれた姿も見ることはできない。
何も見えない袋の中で、じんわりと全身に痛みが広がっていくだけだった。

この得体の知れない声の主は何者なのか?

この痛みの原因は?

何故自分がこんな目に?

袋の人物の頭は一瞬にして疑問に覆い尽くされる。
だがそれと同時に彼は、自らに向けられた理不尽な仕打ちに対し、心の底から激しい怒りが込み上げてくるのを感じていた。
「ほんと……何なんだよ……お前ら……!」
彼は殆ど絞り出すような声で、伝わるはずもない怒りを、名前も知らぬ誘拐犯に当てる。
しかし、当のランペイジはそれを何事もなかったように受け流すどころか、キヒヒと薄気味悪く笑い、
「じゃあホラ、しっかり食えよ、『B-00』」
と無情にも淡々と命令を下した。
すると、「B-00」――そう呼ばれた機械人形は命令に反応するようにその目を紅く光らせる。
そして、B-00のうなじから伸びた刃がさらに袋の人物の内臓を抉ると、少量の血が飛び出し、袋から滲み出て無機質なグレーの床を紅く彩った。
「……!」
この時点で既に、袋の人物は自らの言葉を紡ぐことすらままならなくなる。
もはや動くことも叫ぶこともできないのだ。
「グ……」
そして次の瞬間、無様に床に這いつくばった袋の人物の身体が突如、まるでヒビでも入ったかのようにビキビキと不気味に音を響かせた。
骨が折れたわけではない。
それどころか、何かを壊した様子もない。
この刃だ。B-00の突き立てた刃が、袋の人物の身体に魔力吸収のための¨根¨を張っているのである。
「ググ……グ……」
B-00が不快な機械音を響かせ、その瞳が再度不気味に光った。
そしてそれに連動するように、突き立てた刃を介して人間の身体からB-00へ、まるで植物の根が栄養を吸い取るかのごとく、刺し口から魔力が吸収されていく。
「ウグ……ア……」
袋の内部はもはや定かではない。
呻き声が内部から洩れ、袋は小刻みに痙攣を繰り返しているだけだった。

それは数秒の間続き、そして――――とうとう動かなくなったのだった。

「死んだな」
ランペイジが確認するまでもなく言い捨てる。
すると、その僅か十秒余り。
袋の人物の死体は、まるで落としたガラス細工のようみるみるうちに身体が砕け始めた。

生体に存在する魔力は、生まれたその時から体内に存在する、いわば「核」のような役割を持ち、魔法を行使する際に大きく影響する。
だがそれを奪われたということは、その「核」がなくなってしまったということ。
つまり、芯の部分のみをなくし、外肉だけが残った状態である。
当然そんな支えを失った身体は、その形状を維持することが出来なくなり……やがて身体は「崩壊」し、跡形もなくなってしまうのだ。
勿論袋の人物も例外ではない。
ボロボロと崩れていく魔力の抜け殻は、最終的にその破片すらも残さず、空気に溶けるようにして消滅した。
そう、本来残るべき死体は、ものの数分も経たない内に血の一滴も残さず、消え失せてしまったのである。

「何度か見てもまだキモチワルイ光景~」
クレスが舌を出してうぇぇと声を上げる。
「相変わらず呆気ないですね」
対してまるで他人事のように言ってのけるデクレ。
だが彼も表情には出さなかったが、この光景に生理的嫌悪感を抱いていることが見てとれる。
しかしたった一人、そんな光景を目の当たりにしても尚平静さを保つ人物がいた。
主犯であるランペイジだ。
「……さて、エサやり完了、と」
彼はまるでそれが当然のことであるかのような調子で言ってのける。
慣れきっているのだろうか。
これには先程袋を痛め付けていた双子も白い目を向ける。
「エサ、ですか。吸いとった魔力もこの機械人形の血肉にでもなると?」
デクレが訊くと、ランペイジが頷いた。
曰く、このB-00は対魔術師用兵器として外気からの魔力干渉を防ぐ機構のため、大気中からではなく生物やモノの内部から魔力を吸い取り稼働しているという。
しかもその過程で対象のデータ、記憶等を読み取り、自らの糧とするのである。
ランペイジが言っていたエサとはもちろん魔力補給のことであるが、それとは別にデータの吸収も目的としていたのであった。
「……だがまぁ、こんな感じでB-00が魔力吸収した相手は粉々になっちまう。証拠隠滅としてなら完璧なんだろうが、一々エサを捕ってこにゃあならねぇわけだ」
ランペイジは心底面倒くさそうな顔で吐き捨てる。
「……」
すると、その言葉にデクレが何かを感じたのか、探るような口振りでランペイジに問い掛けた。
「そういえば、最近ちょくちょくこの辺りの不良達が殺害されている事件が起こっているそうですが……もしかして、あれもあなたですか?」
ここ最近になって、街の校外に住み着いた不良をはじめとした無法者らが変死体となって発見される事件が増加した。
デクレはそれを、ランペイジの仕業なのではと仮定してみたのだが……
「あァ?……殺したら死体も残らねぇのに誰が殺害されたなんて判断できんだよ」
呆れ顔で否定するランペイジ
どうやら違ったのだろうか。
しかしデクレがそう思っていたのも束の間、ランペイジは直ぐ様に口元を緩め、
「まぁ……あるとすれば、俺個人の趣味でやってたりするかもな」
「…………そうですか」
デクレは無愛想な受け答えをして引き下がる。
すると今度は、それと交代するようにクレスの方が前へと出てくる。
「はいはーい、私も質問~!ランペイジさんってこんな危ない機械人形さんを使って一体何が目的なの~っ!?」
クレスは元気に声を張り上げ、B-00という名の戦闘兵器の用途を探る。
最もな疑問だ。問題はこの危険な存在を、ランペイジはどう運用するつもりなのだろうか。
「……そうだな、色々試してぇこともあるが……まず手始めに逃げた¨臆病者¨の始末でもするかな」
「臆病者?なぁにそれー」
クレスが怪訝そうに訊く。
「なに、昔いたんだよ。オトモダチを見捨てて一人逃げ出した臆病者がな」
含みのある言い方でランペイジは語り、再び口元を緩ませた。
どうやら次なる標的も決定済みらしい。
それどころか既に、どう獲物を追い詰め、どう獲物をいたぶるかについてでも考えているのだろう。
その表情が、心なしか楽しそうに見えた。

しばらく楽しげに考えを巡らせていたランペイジだったが、不意に双子の方に視線を落とす。
「そういえば、そういうお前らの目的はどうなんだよ?」
訊かれっぱなしは不公平だと思ったのか、ランペイジは今度は自分から双子へ質問を投げ掛ける。
「僕達の目的、ですか?」
「私達の目的?」
「……当たり前だ。普通のガキがこんな仕事で小遣い稼ぎするわけねぇだろうに」
揃った動きでランペイジを見据えるクレスとデクレの二人。
すると何を思ったのか、お互い目配せで合図のようなものをとると、彼ら双子は交互に口を開くのだった。

「……僕達の目的はひとつですよ」
デクレが言う。
「それを手にする為なら、どんな手段でも構わない」
クレスが言った。

部屋の中が一度、静寂に包まれる。
風化した壁の隙間から入り込んだ風がさらりと頬を撫で、部屋の内部で溶けてなくなっていく。
余計な雑音はなく、時の流れすら塞き止められているような静かな部屋。
双子はそんな静寂の中、ゆっくりと、声を揃えてその名を口にした。



「『アムリタ』を、ね」



彼らを用心棒たらしめ、彼らを裏世界の人間たらしめている目的。
それが彼らの言う¨アムリタ¨。

「…………ふぅん」
ランペイジの目には、彼らのそんな目的を語る決意めいた表情が、やけに印象的に映っていたのだった。

イラストまとめ~そのいち~

色々あって本編更新はまだ時間がかかりそうなので以前言っていたイラストまとめをやっていきたいと思います。


〈このブログで掲載している創作本編とは違う世界線でのキャラクター達〉

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ルフ 一人称:僕
落ち着いた性格のアルビノの少女。
ナイフやダガーを用いて戦い、ミカエラ(後述)を守ることを目的としているようです。所々野性的。
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常にクールを心掛けていますがたまに子どもっぽい一面も見せます。
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Twitterの看板娘キャラ。


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カエラ=アンゼルス 一人称:私
背中に羽を持った金髪のオッドアイの少女。
幼い外見の通り純粋で無邪気な少女です。
戦闘能力はありませんがルフの心の拠り所となっています。
f:id:sometime1209:20170206010439j:plain
しかしそんな彼女にも何やら秘密が……?


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朝日奈 雀(あさひな すずめ) 一人称:私
栗色の髪の元気で明るい女子高生。
ごく普通の生活を送っていましたがルフとミカエラに出会うことで非日常の世界へと足を踏み入れていきます。
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行き場のなかったルフとミカエラを家に招き共に生活をしています。
所謂一般人枠ですが非現実的なことにも寛容。
巻き込まれ体質ですが何故か異能の力の干渉を受けないようです。
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以上の三人の少女達がメインです。
なにやらキャラ紹介も兼ねてしまいましたが、どうぞこの本編外のキャラクター達もよろしくお願いします。


〈その他版権〉
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宮本武蔵(Fate/Grand Order)
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リーリエとミヅキwithニャビー(ポケットモンスター サン&ムーン)
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ガヴリールとヴィーネ(ガヴリールドロップアウト)
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トールとカンナカムイと小林さん(小林さんちのメイドラゴン)
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夕立改二と吹雪改二と睦月改二(艦隊これくしょん)


流行りものやその時にやっていたアニメのイラストを描くことが多いですね。


とまぁそんなわけで慣れないイラストまとめをやりつつ、次回更新に向けて頑張っていきたいと思います!

ではでは!