読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

そめちめとブログと創作放出場

主にオリジナル作品、自分の日記などを載っけていきます。

このブログを見る皆様へ

ようこそおいでくださいました!(^U^)
申し訳ございません、このようなブログで。
「そめちめ」という名で色々と活動させていただいている者です。
Twitterhttps://twitter.com/sometime1209
主な活動拠点。日々のくだらないあれこれやラクガキ等を投下。
Pixiv→http://touch.pixiv.net/member.php?id=13569199
イラストのみ見たい方推奨。版権イラスト多め。

このブログでは主にオリジナルの作品、イラストを公開したり、Twitterでは語り切れない趣味のことや日々のこと等をつらつらと書いています。
(オリジナルのイラストの公開や漫画本のレビュー等も視野には入れておりますがまだ未定です)
イラストについてはこういったものを予定しています。↓
f:id:sometime1209:20160729194425p:plain
f:id:sometime1209:20160729194852p:plain
f:id:sometime1209:20160729194617p:plain
f:id:sometime1209:20160729194747p:plain

【公開中】
〈オリジナル〉
AMRITA(アムリタ)
不定期更新のストーリーもの。現在三章を更新中。

〈趣味系統〉
・工作
仮面ライダーのマスク等、趣味のものを作る予定。


その他未定……


というわけで、私のブログが少しでも誰かの暇潰しにでもなれば幸いです。

ごゆっくりどうぞ!

三章 隠家①

あれからしばらくルクリフィアの町を歩いていたフォル、シャーラ、ライト、ノイ、チトセの五人は、いつしか中心部から離れ、比較的人通りの落ち着いた場所へ来ていた。

「大分歩きやすくなったね、シャーラちゃん」
「え、えぇ……あはは……」
悠々自適に歩んでいくフォル。その背後から、シャーラはまるで生まれたての小鹿のように、足をガクつかせながらついてきていた。
「シャーラさん大丈夫ッスか?なんならそこのベンチで休むとか……」
「い、いえ、お構いなくっ」
彼女は心配そうに自分の顔を覗き込むライトを制し、不安定な足取りながらも一歩一歩着実に足を前に運んでいく。
息も絶え絶えに歩くその姿は、見ている側までヒヤヒヤさせられる。

――シャーラ・I・ディザスターには致命的に体力がなかった。
というのも、一国の姫であり、箱入り同然に育てられた彼女は、フォルに出会う以前では外出すらしたことがなかったのである。
故に彼女が運動盛り真っ只中の年齢であっても、その体は錆びた機械のように思うように動かない。それどころか、必要最低限の体力すら持ち合わせていなかったのだ。

「シャーラさんこれ思ったより結構ヤベェんじゃねェスか?」
「めっちゃ顔色悪いぞこのお姫様……」
ノイとチトセは額に冷や汗をかきながら、なんとかしてあげて、と訴えるようにシャーラの保護者であるフォルに視線を向けた。
しかしフォルは動かない。
彼は両手を上げていた。……¨お手上げ¨という意味だろうか。
この少年、どこか薄情である。
「残念ながらあの子の体力作りの邪魔はできないね」
等と言っていたが、一瞬悪い笑みを見せたかと思うと、
「……そうそう、初めて城下町に出たときなんて、少し歩いただけで気分が悪くなって路地裏で吐」
「いやあああああそれ以上言わないでください!!」
うっかり自分の恥ずかしい秘密を洩らしそうなフォルを慌てて止めるシャーラ。
「はーっ、はーっ、はーっ……」
思わず声を張り上げてしまったために、さらに体力が減少する。
だが彼女は歩みを止めようとは思わなかった。
いや、止められなかった。
フォルがいつ自らの恥ずかしい秘密をバラすか気が気ではないからである。
ふと視線を正面に向けると、彼はこちらを随時確認しながらニタニタと笑っていた。
どうやら彼はこの「小さな脅迫」によって体力のないシャーラを歩かせようとする魂胆らしい。
少しは体力をつけろ、というフォルの意図が見えるのは勿論であるが、同時にどこか面白半分でやっている節も見受けられる。
(うぅぅ、こんなことならもっと日頃から運動しておくべきでした……)
千鳥足になっている最中、シャーラはそんなことを思いながら、食らいつきながらなんとか他の四人の後をついていくのだった。

それから数分後。
更に人は少なくなり、周囲の建物の背もそこまで高くないものが多くなってきていた。
「なんか、降りそうだね」
ぼんやりと空を見つめていたフォルが呟く。
彼らがこの町にやってきた時からずっと、空は塗り潰されたようにグレー一色だった。
しかしそれは僅かながら薄黒い面が増えていき、雲行きは徐々に怪しくなっているように見える。
「君達のアジトまであとどれくらい?」
念のためフォルはライトに尋ねる。
「もうすぐッスよ。あ、ホラ見えてきた」
ライトがそう言って指し示した方向には、使われなくなった建物が並ぶ廃墟街のようなものが確認できた。
当然ここまでくればさほど高い建物ではないが、どうやらその廃墟らも元はビル街であったようだ。
「あの辺りの廃ビルの一つをオレらの根城にしてるんスよ」
「……へぇ」
フォルは少しだけ不審に思った。
先程からあった違和感。おそらくは、あれほど発展していた中心街とこの辺り一帯はえらく寂れ具合の落差からくるのであろう。
中心街から遠ざかれば、建物も比較的落ち着いたものになるということは当然で、一見何もおかしな点はないように思われる。
しかしここは違った。異様に廃墟が多い。
まるで忘れられ、置き去りにされたような、そんな雰囲気がどことなく漂っていた。
そんな不思議な空気を味わいながら、フォルは廃墟の増えた街並みを眺める。
「もっと先まで行くと更に廃墟だらけだね」
「あぁー……あっちは……」
思わせぶりに渋い顔を見せるライト。
「何かあるの?」
フォルはすかさず追求する。

「ーーあっちは¨管理外区域¨よ」

彼の疑問に答えたのはチトセだった。
「都市の発展から置き去りにされた廃墟街。あっちでたむろってる連中はろくなやつがいないわ」
ノイがそれに続ける。
「俺っちも一回あそこに行ったことあるんスけどよォ、無法地帯もいいところッスよ」
どうやら彼も管理外区域には嫌悪感を露にしているようだ。
「そんな場所が…………」
フォルは眉間にシワを寄せる。
「まーでも安心して欲しいッス」
するとライトがずいっと顔をフォルに近付け、
「オレらはたまにその管理外区域に住み着いたならず者をシメに行ったり、そいつらの被害を受けてる連中を助けたりしてるんスよ」
どうだ、と言わんばかりに鼻を鳴らしてみせる。
えらく自信満々な態度だ。
「へぇ、実際にちゃんと助けられてるの?」
「それはもう……!」
「あぁ、一応アタシはライトのアニキ助けられてあの¨管理外区域¨から逃れてきたけど……」
尊大な態度のライトの後ろでチトセが小さく主張する。
「てかアジトにいるアニキの舎弟の殆どがアニキに助けられたって感じ」
「俺もそうッスよ~」
「そうなんだ」
意外そうにライトを見つめるフォル。
「つまり実績もバッチリというわけだね」
「えへへ、まぁ、そんなとこッスかね」
誉められて照れ臭そうに笑うライト。
この辺りはやはり年相応なのか、彼自身の無邪気な様子が表れている。
「というわけでシャーラちゃんも、どうやら管理外区域ってとこは危ないみたいだから気をつけてね~…………ってあれ、シャーラちゃん?」
フォルが背後のシャーラの方へ向き直って危険を知らせるも、何故か彼女は反応を示さない。
ただひたすらぽてぽてと歩いているだけのシャーラだが、慣れない外出による疲労なのか、その表情はなんとも一国の姫のイメージとは程遠い、険しいものになってしまっていた。
「もしもーし…………あらら聞こえてないねこれ。大丈夫かな」
まさに上の空。脱け殻。歩くだけのロボ。
そんなシャーラをフォルは若干可哀想に思ったのか、とうとう彼はよちよち歩きのお姫様に手をさしのべることを決める。
すると、

「ーーーー雨?」

その時、シャーラへとフォルが伸ばした掌の上に一粒の水滴が落ちた。
気のせいかと思う間もなく、すぐに二粒、三粒が掌に落ち、瞬く間にいくつもの雨粒が乾いたアスファルトの地面を濡らし始めた。
「降ってきたッスね」
ライトも雨に気付く。
「アニキ、傘ないし強くなる前にアタシらも早くアジトに戻ろう」
「今のうちに走れば大丈夫じゃあねェッスか、アニキ!」
「……みてーだな」
舎弟二人に促され、ライトはフォルとシャーラにも呼び掛ける。
「フォルさん、シャーラさん、オレらのアジトすぐそこなんで走るッスよ!」
「仕方ないか……了解」
「へ、は、走るってそんな……ってきゃあっ!?」
迅速な行動だった。
フォルは今にも天に召されそうになっているシャーラを問答無用でおぶり、そのままライト達が案内する後をついていくことにしたのだった。


ーーアジトにつく頃には雨はかなり強くなっていた。
雨粒はバシャバシャと音を立てながら容赦なく地面を叩きつける。
降りだしてからアジトまでさほど時間はかからなかったのだが、既にライト、ノイ、チトセの三人はまるで滝修行の後のように全身ずぶ濡れになっていた。
折角雨を凌げる場所へ到達できてもこれでは無意味だ。
シャーラの方も、フォルにおぶられた都合上、降り注ぐ雨をダイレクトに背中に受けてしまっている。
フォルはというと、顔周りは帽子である程度被害を食い止めていたのだが、背負っていたシャーラの汗が背中に吸い付いたがために、結果なんとも言えない嫌な湿り気に悩まされることとなっていた。

「んじゃ改めて……ここがオレらのアジトッス」
トレードマークのニット帽を脱ぎ、髪から滴り落ちる水を払いながらライトが指差したのは、街の一角のひとつの小さな廃ビルだった。
廃墟、といっても先程見えた管理外区域のものと比べても状態は悪くない。
風化もそれほど見られず、窓や戸等もきちんと付いたままである。
どうやら建物が放置されてからさほど時間は経っていないようだった。

「よ、ようやく着いたんですね……」
意識を取り戻したシャーラがうわ言のように呟く。
「フォル君もおんぶありがとうございます。なんだかクルマに乗せていただいたような……そんな心地よい気分でした……乗ったことありませんが」
「クルマはおんぶなんかよりもっと快適だよ」
疲れからか意味不明な台詞を発したシャーラを冷静に制するフォル。
「それより大丈夫、立てる?」
「えぇ、はい。なんとか」
「吐いたりしない?」
「は、吐きません!!!!!」
フォルはゆっくりとシャーラを下ろす。
少しだけおぼつかない足取りであったが、どうやらシャーラは自力で立てるまで体力が戻っていたようだ。
「……わたし、自分が腑甲斐無いせいで皆さんに迷惑かけちゃいましたね」
申し訳なさそうに頭を下げるシャーラ。
自分のペースに合わせずに皆が歩いていれば、雨足が強くなる前にここへ辿り着けたのだろうか、と彼女はぼんやり考えた。
よもや自らの体力のなさがこうして誰かの足枷になってしまうとは、シャーラ自身あの城にいた頃には思いもしなかったのである。
「え、ちょ、わ、待って、んな風にお堅くせず自然な感じでいいんスよシャーラさん!」
王族に頭を下げられ、妙な緊張を感じたライトが慌ててなだめる。
「そうですか……?で、でも自然な感じというのは……すいません、あまりそういうのに慣れていなくてどうしたらいいのか…………」
戸惑いながら顔を上げるシャーラ。するとそんな中、フォルがぼそりと隣で呟いた。
「呼び名をもっとフランクな感じにしたら?」
「フランク……な、なるほど!」
シャーラはそう言って数秒黙りこんだかと思うと、何かを決したような顔で不良達三人組に向き直る。
「えーっと……ライト¨君¨!」
「おす!」
「ノイ¨君¨!」
「ハィ!」
「チトセ¨ちゃん¨!」
「はーい」
どうやら言われた通り、シャーラはさっそくフランクな呼び方を実践することにしたようである。
「ど、どうですか……?」
彼女は僅かに顔を赤くしながら、おそるおそる不良三人の顔に視線を向けた。
「なんか……すげェドキっとするッス……!」
左胸をおさえながらノイが答えた。
「アタシら¨くん¨とか¨ちゃん¨ってタマじゃないから照れるな……」
チトセも照れ臭そうに頬をかく。
「シャーラさんこれ……別の意味で緊張するッスね……」
「えぇ!?や、やっぱりやめた方が……」
「いやいやいや!!!このままでいいッスよ!!っていうかこのままにしてくださいッス!!!」
「そうですか……?」
「そうッスよ!!!」
三人の中で一番もっともらしい反応を見せるライト。
シャーラにはいまひとつその意味がわかっていなかったようであったが。
「ーーーーえーっと、オホン、そんなことより……」
わざとらしい咳払いをして調子を戻すライト。
「ここはさっきも言った通り、管理外区域の手前んところにあった空きビルをオレ達が使ってるんスよ」
彼はもはや動くこともない自動ドアを手で開け、フォル達に中へ入るように促す。
「じゃあおじゃましまーす」
フォル達が入っていくと、まず意外と廃墟にしては小綺麗であることに気が付いた。
多少埃っぽさは感じられたものの、廃墟らしい不気味さは一切なく、動力は届いていなかったが設備や家具はそのまま残っている。窓もひび割れてはいるがしっかりとついており、雨風を凌ぐには申し分なかった。
さらに奥へ進むと、ところどころにカラースプレーで描かれた変なラクガキが目につく。不良達が描いたのだろうか、それは上の階へ続く階段へ向かうに従い多くなっていた。
ライト達が主に使用しているのは二階部分のようだ。
「でもいいの?廃墟とはいえ勝手に住み着いちゃって……」
「あーいいんスよいいんスよ」
フォルの疑念をライトはすぐに否定する。
「ここも半管理外区域みたいなもんなんで、アンモクのリョーカイ?ってヤツッス」
「なんですかそのアンモクのリョーカイって……ひゃ!?」
「はいはーいお姫様には聞かせられないお話だよー」
不良達の知られざる脱法事情を純粋無垢で清廉潔白なシャーラに聞かせるわけにもいかず、フォルはすかさず彼女の耳を塞ぐ。
ライト達がここを半管理外区域と呼ぶのも納得で、あちら程ではないにしろこちらにも少なからずルールの抜け穴のようなものが存在しているようだ。

「さて、この二階がオレらの居住スペースッス」
ライトは一番に階段を駆け上がって言った。
この二階は一階とは異なり、ライト達が住まうにあたって大々的な改装が施されていた。
元々居住スペース付の事務所跡のようなものだったようだが、事務所にあたる部屋にあるものが殆ど撤去されており、代わりにどこから持ってきたかもわからない畳やマットで六つ程のエリアが形成されていた。
個人の部屋のつもりなのだろうか、そのエリアは申し訳程度の仕切りで区切られ、扉のようなものはない。
とはいえ、元の部屋がそれなりに広いため、場所の取り合いになっている様子はなかった。各々が各種自らの趣味や必要品を持ち込んでいるようだ。
だが個人のエリアといっても、布団やベッド等までは見当たらないため、おそらく大体の生活用品は居住スペースにあると思われる。

「雨で濡れたし着替えた方がいいなー」
ライトがニット帽を外しながらそう呟いた。
「フォルさん達も風邪引くし着替えた方がいいよ」
チトセもまた自らのジャージを脱ぎながら言う。
「俺は帽子とコートを脱げばいいけど……シャーラちゃんは着替えないとマズいね。透けてるし」
「へーそ、そうなんスか」
フォルの言葉を聞き、意識してしまったのか露骨に視線をシャーラから逸らすライト。
逆にノイは横目でチラチラとシャーラを見始めたため、隣にいるチトセに蔑んだ瞳を向けられていた。
「着替えがないから今はとりあえず服は貸してもらおう、シャーラちゃん………………ダメだ、また聞いてない」
フォルもフォルで、シャーラを下心にまみれた視線から救うために濡れた服を乾かすことを提案した……はずだったのだが。
「ここが噂の隠れ家、『アジト』なんですね!」
当の彼女は雨で濡れていることなどお構いなしに、まるで新しい玩具を買ってもらった子供のように目を輝かせ、話を聞く耳すら持たない状態となっていた。
彼女は物珍しそうに周囲を見渡しながら、本でしか知ることのできなかった¨アジト¨への興奮を抑えきれないでいるようだ。
彼女の悪い癖だった。のめり込めばなかなかに抜け出せない。

「こちらには一体何がーーーーわっ!?」
そんな好奇心旺盛な性分が招いた事故か、シャーラが奥の方へ進もうとした瞬間、目の前に現れた二人の少年と一人の少女の三人組と追突してしまう。
「ひっ、だ、誰だアンタ!!!」
「ちょっとなぁにぃ?」
「侵入者か!?」
一人はガタイのいい大柄な少年。一人はスカート丈の長いセーラー服を着た少女。一人はライトくらいの年齢であろう短髪の少年。
彼らがライト達が言っていた舎弟だろうか、いずれも目の前に現れた謎の銀髪の美少女を警戒しているようだった。
「どこから来た!?」
ガタイのいい大柄な少年が問う。
「アニキに何か用でも?」
セーラー服を着た少女が問う。
「…………」
短髪の少年は黙ったまま、シャーラの濡れて透けたブラウスを凝視していた。
「え、えっと……」
一度に三人に迫られたシャーラが困惑の表情を見せていると、ライトがひょこっと彼女の後ろから顔を出し、
「シド、レミ、ソラ、この人はオレのお客さんだぞ」
三人の少年少女に向けてそう御した。
この「シド」「レミ」「ソラ」というのはどうもこの三人の名前らしく、それぞれ、大柄な少年がシド、セーラー服の少女がレミ、短髪の少年がソラ、というらしい。
「「「……はッ、アニキ!」」」
息ピッタリの反応を示す三人。
だがそれも一瞬で、すぐに彼らは各々畳み掛けるようにシャーラへの質問を繰り出す。
「お客さんって一体!?」
「どんな関係なんですか!?」
「………………おおきい……」
一人だけ反応が違うが。
「待てお前ら!一個一個説明するから」
ライトの声でまたもや三人が止まる。
その様はまるで躾けられたサーカスの動物達のようだ。
¨アニキ¨と呼ばれているあたり彼らの扱いには慣れているようである。

「じゃあハイほら、シャーラさんはとっとと着替えて!」
ライトが三人に事情を説明する間、チトセがきょとんと立ちつくしていたシャーラに呼び掛ける。
「は、そういえばそうですね……でも替えの服を持っていなくて」
「アタシの貸してやるからいいよ」
「え、でも……」
「いーの!!」
ほらいくぞ、とチトセは遠慮するシャーラの背を若干強引に押しながら、着替えさせるために奥の部屋へと連れていった。

「……あらら、行っちゃった」
コートと帽子を外して軽装になったフォルが呟く。
すると、ライトもチトセも出払った中、一人取り残されたノイがひょっこりと顔を出した。
「フォルさんも着替え貸すッスよ。こっから上の階、俺らの物置きなんで服とか結構余ってるし…………前の所有者のものっぽい変な着ぐるみとかもあるんスけど」
「いや、このままで大丈夫だよ」
ノイの着替えの提案にフォルはやんわりと断りを入れる。
「…………それより、雨がやむまではしばらくここにいさせてもらうことになる、かもね」
フォルが窓の外へ視線を向けると、多量の雨粒が勢いよく窓を叩きつけていた。
窓はガタガタと不安定に揺れ、しばらく収まる気配はない。

こんな大雨は久々だ。
ライト達には少しの間迷惑をかけてしまうであろうことをフォルは薄々感じながら、とりあえず今はシャーラの着替えが済むのをぼんやり待つことにしたのだった。

三章 暗躍①

フォル達がライト達のアジトへと向かっている一方その頃。

街の校外。
賑やかなルクリフィアの中心部とは違い、人の姿を見ることのないほどに寂れている。
明かりが点ることのない廃ビル、シャッターの開かない、かつて商店街があったであろう通りはとうの昔に寂れ、辺りに点在する標識と信号だけが、風化しても尚その役目を果たし続けていた。
町が発展していくにつれ、新しいものが古いものを淘汰していくのは世の常である。
ここは町の新たな管理体制への移行により、その存在意味を失なった建物が多く点在していた。
いずれは町の中心部同様に作り替えられてゆくであろうこの過去の町だが、今現在移り変わりの狭間に位置する時であるせいで、今尚取り残されたままの地域が点在している。
そうした場所には決まって管理体制から外れた存在――所謂裏の社会と呼ばれる世界の住民が、まるで死骸を食らうハイエナのように寄り付き、管理外のこの町に巣くっていたのだった。

そんな場所の、とある廃ビルの一室。
嫌に湿り気のある空気が壁や天井に染み付いており、床には何処の誰が棄てたかもわからないゴミや家具だったものがそこかしこに転がる。
天井に取り残された電灯が、誰の手に渡ることもなく薄暗い部屋の中心で鎮座し続ける机を照らしていた。
その机の上に一人、そして部屋の隅にまた一人と、電灯は不安定に明滅を繰り返しながら、二つの人影を照らし出している。
その内の机に腰かけている一人。
サングラスをかけたスーツの男は、暇そうにブラブラと足を遊ばせていた。
年は若い。中肉中背で、さしずめ二十代前半といった具合だ。
染めているであろうブロンドの髪、ナイフの切り傷のように細く鋭い瞳……出で立ちの荒々しさは勿論、どうやら暴力沙汰も手慣れているようにも見えた。
ランペイジ・エイデム。
この過去の町に寄生する、ゴロツキと呼ぶにはあまりに多くの人を殺し、殺人鬼と呼ぶにはあまりに殺人への執着のない、ただ弱者をいたぶることのみに快楽を求める人間の名である。
よほど暇であるのか、彼は退屈そうな顔で、部屋の隅に控えていたもう一人に言葉を投げかけた。
「あ~あ、なんだってガキなんて雇っちまったのかなァ」
なんとも軽々しい、冗談めいた口調。
ランペイジは大きくため息を吐いた。
「用心棒、なんて最初は冗談かと思ったぜ。……まぁ、後から利用価値があると思って雇ったのは俺自身だけどな」
「…………」
つらつらと語るランペイジだったが、部屋にいるもう一人から返ってくる言葉はなかった。
「……ハァ。やっぱり反応なしか」
彼は最初からわかっていました、とでも言いたげに肩を落とす。
彼が自分の横へ目をやると、そこには電灯の明滅に合わせて姿を見え隠れさせるもう一人の存在が、まるでネジの巻かれていない玩具のように微動だにせず佇んでいた。
しかしというもの、その人影は何も男の言葉を無視しているわけではない。

――それは人間ではなかった。
着ている衣服こそ特徴のない一般的なデニムのパンツに、フード付のパーカー。
フードを目深に被った姿だけなら普通の人間とそう大差はない。
だが、フードの奥に見えるその容貌は、明らかに人間のそれとはかけ離れていた。
その瞳には、人間としての輝きはなかったのである。
それは機械で構成されていた。
骸骨のような形状の顔を形成する灰色の皮膚には、電子回路のような無数のラインが浮かび上がっており、その頭部に取り付けられている半透明のカバーの中には、人間の脳とおぼしき臓器が何かの液体に浮かんでおり、時折中の液体がゴボゴボと泡立っていた。
人間と同じ体型、服装をしていながらも、その姿はまさに無機質な機械そのものだった。
ただじっと、その紅く発光する瞳をフードの下から覗かせているのみである。

ランペイジはその機械人形の姿を改めて一望すると、くくっと笑みを溢し、
「こいつが笑い話の一つも出来ねぇのはちと残念だが……¨あの人¨も太っ腹だなぁ?戦闘データを録って渡す条件でこんなヤベェモンをくれるんだからよ」
まるで自分が城を持った権力者とでも言わんばかりに、彼は悠々自適に笑った。
彼がとある人物から譲り受けたこの機械人形は、戦闘を目的とした兵器である。
訳は割愛するが、どんな偶然か、彼は何日か前に出会ったある人物から研究を手伝って欲しいと頼まれたのだ。
怪しい話ではあったが、ランペイジは自分に対して不利益がないことを確認すると、喜んでそれを引き受けたのだった。
「…………んァ?」
するとランペイジは何かに気付いたのか、笑うのを中断して部屋の扉の方へ目を向ける。
丁度その時、まるでタイミングを見計らったかのように、部屋の外からコツコツと軽く扉をノックする音が聞こえてきた。
誰かがこの廃ビルの一室へとやってきたのだ。
「おぉ、ようやく話し相手になるやつが帰って来た」
ランペイジは待ち望んでいたとでも言わんばかりに喜んだ。
同時に、彼の視線の先、風化して今にも外れそうなドアノブがカタリと下に回され、僅かに錆び付いて凹んでいる部屋のドアがゆっくりと開かれた。
「思ったよりも大分早かったじゃねーか」
部屋に入ってきたのは、少年と少女の二人。
子どもだった。
見た目は十代前半程度。背丈こそ多少の差はあれど、髪色、瞳の色、顔立ち共に非常に似通っている点に血の繋がりが現れている。
彼らはつがいの双子なのだ。
「仕事の腕には自信がありますから、僕達」
少年が言った。
「でもこれよーじんぼーの仕事じゃないよ~」
続いて少女も口を開いた。
声の調子は一定で、強弱のない気だるそうな話し方は双子で共通している。
一見普通の子どもなのではあるが、彼らの瞳に宿る闘志は、獲物を欲さんとする獣のそれに親い。
その気になればいつでも仕留めてみせる、という自信に満ちていたのだ。

そう、彼らこそがランペイジの言っていた「用心棒」なのであった。
「…………えーっと、どっちがどっちだっけ?」
ランペイジがおちょくり半分で用心棒の二人に訊くと、彼らは双子らしく揃った動きでお互いの顔を見合わせる。
そして、まず目立たないグレーのシャツを着た少年が呆れた顔で「デクレ=シェード」と名乗り、続いてもう一方の白いフリルのスカートを履いた少女が「クレス=シェード」だと名乗った。
名前を覚えられていないことが気に入らなかったのか、彼らは双方共に仏頂面でランペイジを睨んだ。
だがランペイジは薄情にも、訊いておきながら心底どうでもよさそうな顔で会話を続行した。
「へーまぁいいや、ところで俺が頼んだ通りちゃんと連れてきたか?」
「…………今持ってきます」
ランペイジの不躾な態度にデクレは内心舌打ちをするも、じっとりとした足取りでドアの方へと向かった。
彼は一旦部屋から出ると、外から何やらリボン付きの大きめの白い袋をずるずると引きずり出してくる。
大きさは人間、それも大柄な男が入るほどであり、中身が入っているのか、袋はパンパンに膨れ上がっていた。
「かわいいラッピングだね、デクレ」
そう口にしたクレスはしゃがみこみ、デクレの運んできた袋をまるで犬でも手懐けるように優しく撫でる。

しかし次の瞬間、彼女は突如立ち上がり、
「じゃっ、お寝坊さんを起こしてあげよっ!」
ほんの数秒前に優しく撫でていたことが嘘のように、なんと袋を乱暴に蹴り始めたのだった。
「いーち!にーい!さーん!よーん!」
一回、二回、三回、四回…………そこまで蹴りつけた所で、何やら袋がひとりでに蠢き出した。
「ヴッ……ヴグッ……」
不気味な唸り声を上げ、苦しそうにモゾモゾと動く袋。
クレスはそれを見て、自らの気分が高揚していくのを感じていた。
「ねぇ!ほら!ねぇ!ねぇ!ねぇってば!ほら!早く起きなよ!」
彼女は自分がスカートをはいていることも気にせず、容赦なく蹴りのスピードと強さを上げていく。
「ゲホッ、ゲホッ!グフッ……」
それに伴い、今まで芋虫のように這っていただけの袋が、今度は陸に打ち上げられた魚のように虚しく跳ねた。
それは無生物ではありえない挙動だ。
そう、いるのである。袋の中には何か、それも生きているものが。
「……コイツもう起きてるよ、クレス」
それまでクレスが袋を蹴りつけるのを冷静に傍観していたデクレが、これまた冷静に彼女の蹴りを制止した。
「ちょっと消化不良~……」
クレスはまだ物足りなそうな顔をしていたが、ふぅと息を吐くと、残念そうに袋から足を退ける。
「おうおう怖い怖い。なんだ、そいつに恨みでもあるのか?」
スーツの男がからかい半分で訊くとクレスは、「別にぃ」とはぐらかすように答える。
「イライラしてるんだよね、クレス。……さっき帽子のお兄さんに負けたから」
デクレが申し訳なさそうに声を上げるが、クレスはそれについては黙りを決め込んでいた。
「帽子の?何のことだ?」
「いえ、気にしないでください……あなたに雇われる前の話です」
それより、とデクレはランペイジの言葉を遮って話題を変える。
「アレ、どうします?起こしちゃいましたよ」
そう言ってデクレが指差したのは、先程までクレスが蹴っていた大きな袋だった。
持ってきた時とは異なり、今ではゴソゴソと気味の悪い音を立てながら部屋の入り口辺りで蠢いている。
「ヒィ……ハァッ……!な、なんだよこれ……おい誰か!助けてくれ!」
すると袋の中からなんと、人間の男の声が聞こえてきた。

――袋に入っていたのは、人間丸々一人だったのである。

袋の中の人物は、自分が今置かれている状況への恐怖からか、震える声で袋の外に助けを求めていた。
デクレはそんな彼を興味がなさそうに一瞥すると、
「初仕事は¨コレ¨でいい?ランペイジさん」
クレスと同様にして、今度はデクレが人間の入った袋を思いきり蹴り飛ばし、そのままランペイジのもとに差し出す形となった。
「上出来だ。……用心棒なんかよりこっちの仕事の方がよっぽど向いてんじゃねぇの?」
ランペイジは自分のサングラスを指で押し上げ、ニヤニヤと笑いながら言う。

「な、な、なん、何だ!?そこに誰かいるのか?!」
するとランペイジの声に反応して、袋の中の人物が吃りながらも言葉を紡いだ。
自らの状況がわからない。
何故捕らわれているか、何故身体が痛むかも不明なまま、彼は必死に脱け出そうともがく。
しかし彼の悲痛な叫びも虚しく、デクレとクレスの二人は、もう自分の仕事は済んだとでも言わんばかりに、袋の人物への無関心を貫いた。
「おい、誰か!誰か!!」
袋の人物は再び叫ぶ。
しかし状況は変わらなかった。
だが彼のもとに一人だけ、ゆっくりと近付いてくる足音があった。
ランペイジである。
「あー……そこの袋のヤツ?一回しか言わないからよぉく聞いておけよ」
薄気味悪いせせら笑いを浮かべたランペイジは、袋をじっとりと睨むように見据える。
「な、え、何だアンタ……?」
突然の聞こえてきた声に戸惑う袋の人物。
だが、この右も左もわからぬ状況下で人間の気配を感じ取れたことが嬉しいのか、彼は構わず助けを求める声を上げた。
「まぁいい早く助けてくれ!アンタすぐ近くに――――ぐあッ!」
しかし返ってきたのは腹部への強烈な痛み。
「一回しか言わねぇっつってんだろ!ウダウダ言ってねぇで黙って聞いてろ!!」
先程の痛みとは段違いの重みを持ったそれは、ランペイジの蹴りによるものだった。
彼は袋の人物の助けを請う態度など気にも留めていないどころか、袋の人物の話を聞く耳すら持っていない。
受け身を取ることもできずただ壁まで転がっていく袋。
不意の痛みから恐怖に怯える袋の人物に対し、ランペイジは静かに、そして落ち着きのある声で語りかける。
「今、ここに生きた人間の魔力を死ぬまで吸うことで動力にして動く機械人形がある。…………だがよ、こいつはまだまだ本調子になるまで動力の魔力が足りてねぇわけなんだわ」
つまりは、だ。と彼は続ける。
「こいつはもっと人間から魔力を吸収したい、わかるか?」
「機械人形……?魔力の吸収……?死……?」
痛みを堪え、袋の人物は語りかけてきた人物の忠告通り、注意深くそれを聞いていた。
当然、袋に閉ざされた身では耳から入る情報が全てだ。
語りかけてきた人物は、ここに人間から魔力を補充する機械人形があると言っていた。
それも死ぬまで魔力を吸うということである。
そして、その機械人形は魔力が足りていないため、人間から魔力を吸い取る必要があるとも言った。
とすると、その機械人形はすぐさまここで人間から魔力を吸収するということなのだろうか。
では、誰から?
この場で最も魔力を奪いやすいのは誰なのか?
袋の人物は、自分が恐ろしい結論を出そうとしてしまっていることに驚く。
しかし、今の状況からして答えは明らかであろう。
悲しいことに、この状況が全てを物語っていたのだ。
「ひ、そ、そ、それって、つまり……」
袋の人物はすぐに恐れおののいた。
だがそれは単に自らが出した恐ろしい想像によるものからだけではない。
感じ取ったのである。
語りかけてきた人物――ランペイジの醜悪な、邪悪な、劣悪な笑みを。
「あ~悪いなぁ律儀にちゃーんと聞いてもらってよ」
まるで悪魔の申し子だ。
「あ……あ……!」
そう、彼はわざと教えたのだ。
これから死ぬ人間が絶望にうちひしがれる様を見るためだけに。
無意味に足掻く、その姿を見るためだけに。
「やめろ、やめてくれ!何故俺なんだ!!代わりは他にいくらでもいるだろう!?何故俺でなければ……」
ランペイジからはこの光景がどう見えているのだろう。
クレスによって可愛らしくラッピングされた袋に閉じ込められ、外の様子を知ることもなくただただ恐怖を植え付けられて怯える人間を見るのは、さぞシュールであり滑稽なことに感じられただろうか。
あるいは、ありふれた反応しか見せないつまらない存在に見えているのだろうか。
だが、これだけは言える。

彼は――笑っていた。

「……悪いが、代わりを待ってられるようにこの人形はしつけられてねぇんだわ」
ハァ、とランペイジは小さく恍惚のため息を吐く。
この瞬間を待っていたのだ。
実に、実に、楽しみに。
他人の命運を自らの手で握る、この瞬間を。
彼は自らの甘美の一時の味を噛みしめ、そして袋の人物へ最後の言葉を送ったのだった。
「じゃあな」

「ちょっと、待――――」

その瞬間、ドスッ、と何かが刺されたような音が部屋に響く。

「あ……が……」

続いて聞こえたのは何者かの呻くような声。
それが袋の人物の発したものであることは誰が聞いても明らかであった。
袋の中身を貫いたもの。
刺さっていたのは小型の刃物だった。
しかしそれは普通の刃物ではない。
本来刃物の持ち手があるであろう部分から無機質な管のようなモノが伸びており、その管の道筋を辿っていくと、それはパーカーを被った人物――機械人形の首筋から生えていたモノであるとわかった。
しかし当の袋の人物は、その機械人形の異様な姿も、自らが腹を貫かれた姿も見ることはできない。
何も見えない袋の中で、じんわりと全身に痛みが広がっていくだけだった。

この得体の知れない声の主は何者なのか?

この痛みの原因は?

何故自分がこんな目に?

袋の人物の頭は一瞬にして疑問に覆い尽くされる。
だがそれと同時に彼は、自らに向けられた理不尽な仕打ちに対し、心の底から激しい怒りが込み上げてくるのを感じていた。
「ほんと……何なんだよ……お前ら……!」
彼は殆ど絞り出すような声で、伝わるはずもない怒りを、名前も知らぬ誘拐犯に当てる。
しかし、当のランペイジはそれを何事もなかったように受け流すどころか、キヒヒと薄気味悪く笑い、
「じゃあホラ、しっかり食えよ、『B-00』」
と無情にも淡々と命令を下した。
すると、「B-00」――そう呼ばれた機械人形は命令に反応するようにその目を紅く光らせる。
そして、B-00のうなじから伸びた刃がさらに袋の人物の内臓を抉ると、少量の血が飛び出し、袋から滲み出て無機質なグレーの床を紅く彩った。
「……!」
この時点で既に、袋の人物は自らの言葉を紡ぐことすらままならなくなる。
もはや動くことも叫ぶこともできないのだ。
「グ……」
そして次の瞬間、無様に床に這いつくばった袋の人物の身体が突如、まるでヒビでも入ったかのようにビキビキと不気味に音を響かせた。
骨が折れたわけではない。
それどころか、何かを壊した様子もない。
この刃だ。B-00の突き立てた刃が、袋の人物の身体に魔力吸収のための¨根¨を張っているのである。
「ググ……グ……」
B-00が不快な機械音を響かせ、その瞳が再度不気味に光った。
そしてそれに連動するように、突き立てた刃を介して人間の身体からB-00へ、まるで植物の根が栄養を吸い取るかのごとく、刺し口から魔力が吸収されていく。
「ウグ……ア……」
袋の内部はもはや定かではない。
呻き声が内部から洩れ、袋は小刻みに痙攣を繰り返しているだけだった。

それは数秒の間続き、そして――――とうとう動かなくなったのだった。

「死んだな」
ランペイジが確認するまでもなく言い捨てる。
すると、その僅か十秒余り。
袋の人物の死体は、まるで落としたガラス細工のようみるみるうちに身体が砕け始めた。

生体に存在する魔力は、生まれたその時から体内に存在する、いわば「核」のような役割を持ち、魔法を行使する際に大きく影響する。
だがそれを奪われたということは、その「核」がなくなってしまったということ。
つまり、芯の部分のみをなくし、外肉だけが残った状態である。
当然そんな支えを失った身体は、その形状を維持することが出来なくなり……やがて身体は「崩壊」し、跡形もなくなってしまうのだ。
勿論袋の人物も例外ではない。
ボロボロと崩れていく魔力の抜け殻は、最終的にその破片すらも残さず、空気に溶けるようにして消滅した。
そう、本来残るべき死体は、ものの数分も経たない内に血の一滴も残さず、消え失せてしまったのである。

「何度か見てもまだキモチワルイ光景~」
クレスが舌を出してうぇぇと声を上げる。
「相変わらず呆気ないですね」
対してまるで他人事のように言ってのけるデクレ。
だが彼も表情には出さなかったが、この光景に生理的嫌悪感を抱いていることが見てとれる。
しかしたった一人、そんな光景を目の当たりにしても尚平静さを保つ人物がいた。
主犯であるランペイジだ。
「……さて、エサやり完了、と」
彼はまるでそれが当然のことであるかのような調子で言ってのける。
慣れきっているのだろうか。
これには先程袋を痛め付けていた双子も白い目を向ける。
「エサ、ですか。吸いとった魔力もこの機械人形の血肉にでもなると?」
デクレが訊くと、ランペイジが頷いた。
曰く、このB-00は対魔術師用兵器として外気からの魔力干渉を防ぐ機構のため、大気中からではなく生物やモノの内部から魔力を吸い取り稼働しているという。
しかもその過程で対象のデータ、記憶等を読み取り、自らの糧とするのである。
ランペイジが言っていたエサとはもちろん魔力補給のことであるが、それとは別にデータの吸収も目的としていたのであった。
「……だがまぁ、こんな感じでB-00が魔力吸収した相手は粉々になっちまう。証拠隠滅としてなら完璧なんだろうが、一々エサを捕ってこにゃあならねぇわけだ」
ランペイジは心底面倒くさそうな顔で吐き捨てる。
「……」
すると、その言葉にデクレが何かを感じたのか、探るような口振りでランペイジに問い掛けた。
「そういえば、最近ちょくちょくこの辺りの不良達が殺害されている事件が起こっているそうですが……もしかして、あれもあなたですか?」
ここ最近になって、街の校外に住み着いた不良をはじめとした無法者らが変死体となって発見される事件が増加した。
デクレはそれを、ランペイジの仕業なのではと仮定してみたのだが……
「あァ?……殺したら死体も残らねぇのに誰が殺害されたなんて判断できんだよ」
呆れ顔で否定するランペイジ
どうやら違ったのだろうか。
しかしデクレがそう思っていたのも束の間、ランペイジは直ぐ様に口元を緩め、
「まぁ……あるとすれば、俺個人の趣味でやってたりするかもな」
「…………そうですか」
デクレは無愛想な受け答えをして引き下がる。
すると今度は、それと交代するようにクレスの方が前へと出てくる。
「はいはーい、私も質問~!ランペイジさんってこんな危ない機械人形さんを使って一体何が目的なの~っ!?」
クレスは元気に声を張り上げ、B-00という名の戦闘兵器の用途を探る。
最もな疑問だ。問題はこの危険な存在を、ランペイジはどう運用するつもりなのだろうか。
「……そうだな、色々試してぇこともあるが……まず手始めに逃げた¨臆病者¨の始末でもするかな」
「臆病者?なぁにそれー」
クレスが怪訝そうに訊く。
「なに、昔いたんだよ。オトモダチを見捨てて一人逃げ出した臆病者がな」
含みのある言い方でランペイジは語り、再び口元を緩ませた。
どうやら次なる標的も決定済みらしい。
それどころか既に、どう獲物を追い詰め、どう獲物をいたぶるかについてでも考えているのだろう。
その表情が、心なしか楽しそうに見えた。

しばらく楽しげに考えを巡らせていたランペイジだったが、不意に双子の方に視線を落とす。
「そういえば、そういうお前らの目的はどうなんだよ?」
訊かれっぱなしは不公平だと思ったのか、ランペイジは今度は自分から双子へ質問を投げ掛ける。
「僕達の目的、ですか?」
「私達の目的?」
「……当たり前だ。普通のガキがこんな仕事で小遣い稼ぎするわけねぇだろうに」
揃った動きでランペイジを見据えるクレスとデクレの二人。
すると何を思ったのか、お互い目配せで合図のようなものをとると、彼ら双子は交互に口を開くのだった。

「……僕達の目的はひとつですよ」
デクレが言う。
「それを手にする為なら、どんな手段でも構わない」
クレスが言った。

部屋の中が一度、静寂に包まれる。
風化した壁の隙間から入り込んだ風がさらりと頬を撫で、部屋の内部で溶けてなくなっていく。
余計な雑音はなく、時の流れすら塞き止められているような静かな部屋。
双子はそんな静寂の中、ゆっくりと、声を揃えてその名を口にした。



「『アムリタ』を、ね」



彼らを用心棒たらしめ、彼らを裏世界の人間たらしめている目的。
それが彼らの言う¨アムリタ¨。

「…………ふぅん」
ランペイジの目には、彼らのそんな目的を語る決意めいた表情が、やけに印象的に映っていたのだった。

イラストまとめ~そのいち~

色々あって本編更新はまだ時間がかかりそうなので以前言っていたイラストまとめをやっていきたいと思います。


〈このブログで掲載している創作本編とは違う世界線でのキャラクター達〉

f:id:sometime1209:20170206004520j:plain
ルフ 一人称:僕
落ち着いた性格のアルビノの少女。
ナイフやダガーを用いて戦い、ミカエラ(後述)を守ることを目的としているようです。所々野性的。
f:id:sometime1209:20170206005435j:plain
常にクールを心掛けていますがたまに子どもっぽい一面も見せます。
f:id:sometime1209:20170206005656j:plain
f:id:sometime1209:20170206005758j:plain
Twitterの看板娘キャラ。


f:id:sometime1209:20170206010139j:plain
カエラ=アンゼルス 一人称:私
背中に羽を持った金髪のオッドアイの少女。
幼い外見の通り純粋で無邪気な少女です。
戦闘能力はありませんがルフの心の拠り所となっています。
f:id:sometime1209:20170206010439j:plain
しかしそんな彼女にも何やら秘密が……?


f:id:sometime1209:20170206010952j:plain
朝日奈 雀(あさひな すずめ) 一人称:私
栗色の髪の元気で明るい女子高生。
ごく普通の生活を送っていましたがルフとミカエラに出会うことで非日常の世界へと足を踏み入れていきます。
f:id:sometime1209:20170206011352j:plain
f:id:sometime1209:20170206011511j:plain
f:id:sometime1209:20170206011812j:plain
行き場のなかったルフとミカエラを家に招き共に生活をしています。
所謂一般人枠ですが非現実的なことにも寛容。
巻き込まれ体質ですが何故か異能の力の干渉を受けないようです。
f:id:sometime1209:20170206012005j:plain


以上の三人の少女達がメインです。
なにやらキャラ紹介も兼ねてしまいましたが、どうぞこの本編外のキャラクター達もよろしくお願いします。


〈その他版権〉
f:id:sometime1209:20170206012524j:plain
宮本武蔵(Fate/Grand Order)
f:id:sometime1209:20170206012710j:plain
リーリエとミヅキwithニャビー(ポケットモンスター サン&ムーン)
f:id:sometime1209:20170206012959j:plain
ガヴリールとヴィーネ(ガヴリールドロップアウト)
f:id:sometime1209:20170206013050j:plain
トールとカンナカムイと小林さん(小林さんちのメイドラゴン)
f:id:sometime1209:20170206013153j:plain
夕立改二と吹雪改二と睦月改二(艦隊これくしょん)


流行りものやその時にやっていたアニメのイラストを描くことが多いですね。


とまぁそんなわけで慣れないイラストまとめをやりつつ、次回更新に向けて頑張っていきたいと思います!

ではでは!

三章 交差④

「そういやフォルさん達って、これからどこへ行くとか予定あるんスか?」
綺麗に自分の料理を平らげ、空になった皿が下げられていく様子を横目にしながら、ライトは何気ない素振りでフォルに尋ねる。

あれからフォル達五人は、会食の合間に他愛のない世間話に花を咲かせていた。
互いの面白エピソード、武勇伝、苦労話等――そういった各々が話したいことを好きなように持ち寄り、そして好きなだけ話し尽くす。
そんなことに小一時間。
彼らはすっかり昼食を食べ尽くし、そして今に至る。

「特に決めてないよ、色々見て回るつもり」
それに対し、飛んできたボールを投げ返すかのように、フォルがゆったりと背もたれに背を預けながら答える。
「あ、じゃあ」
すると、ライトの脳裏に一つの考えが浮かんだ。
彼はすかさずそれを、さも前から考えていたかのように口に出してみる。
「せっかくなんで、オレらのアジト見ていかないッスか?」
「アジト?」
彼の唐突な提案に、フォルは若干顔をしかめながら聞き返す。
「アタシらが今根城にしてる使われなくなった廃ビルがあるんスよ」
ライトが口を開く間もなく、彼の隣に座っていたチトセが答えていた。
さらにノイも続いて、
「ケッコー快適ッスよォ色々揃ってて」
と、ついでの宣伝をするのだった。
「でもなんで突然?」
「なんで、って……別に深い意味はねぇッスけど」
釈然としない様子のフォルに対し、ライトは頬を指で掻きながら、困っているような顔を浮かべていた。
彼としては、本当になんてことなく言ったことなのだから。
「でもまぁ、カンコー案内なんていうもんするよりはウチに呼んだほうが楽だし、早いッスからね」
そう話したライトは、どかっと椅子の背もたれに背中を預けながら、いたずらっぽく笑う。
「ふーん……」
ぞんざいな受け答えをするフォルであったが、疑念自体は払拭されたのか、今までの訝しげな表情は見せなくなっていた。
「んで、どうするッスか?」
ライトが改めて訊くと、フォルは腕を組んで数秒考えるような動作をとる。
そしてうーんと唸るように息を吐き、
「俺はどっちでもいいや……シャーラちゃんはどうしたい?」
と、なんと彼は無責任にも彼の傍らに座っていたシャーラに決定権を譲与したのだった。
彼女は「わたしですか?」と自分を指差した後で、
「是非とも、お邪魔させていただきたいです!」
と、意外にも急に振られた話題に戸惑う素振りも見せず、二つ返事でライトの提案を呑む。
「迷いがないね」
「あはは……実は¨アジト¨というものに興味がありまして……」
照れを隠すように、自分の毛先を玩びながら笑うシャーラ。
いかんせん彼女は「アジト」や「秘密基地」といったワードに魅せられるタイプであるらしく、既にその単語が出た時点で彼女の解答は決まっていたのであった。
箱入り娘の割に、なかなかどうしてアウトドアな思考を持っているんだな、とフォルは半分驚きを内包した目をシャーラに向けていた。
とはいえ、むしろ箱入りであったからこそ、こういったモノに心惹かれるのかもしれないが。
「んじゃ、決まりッスね!」
ライトもライトで、まだまだ旅の話が聞ける、と喜びを頬に浮かべる。
彼は、同じく喜びを噛み締めていたチトセとノイに合わせて、フォル達から死角になるところで小さくガッツポーズをきめるのだった。



料理ハウスを後にしたフォル達は再び、無機質なビルの建ち並ぶ町へと繰り出していた。
溢れんばかりにひしめき合う人の波を、彼らは水をかくように進んでいく。
「ひゃ~!中心部に行くと更に人がいっぱいですね」
そんな中、慣れない人混みに身を投じ、四苦八苦していたのはシャーラだ。
道行く人々がまるで一つの荒波のように流れてゆく光景に、彼女は圧倒されっぱなしなのであった。
町の入り口でさえ人が溢れていたにも関わらず、さらに中心部へ向かうとなると人の数は尋常ではない程に膨れ上がる。
そうなると歩道を歩くだけでも一苦労だ。
おそらく人混みに慣れているであろうライト達、そして持ち前の動体視力で押し寄せる人の波を避け進んでいくフォル。
そんな彼らとは違い、ただでさえ外を出歩くことに慣れていないシャーラにとって、この空間はかなり酷であった。
彼女はなるべくフォル達と離れないように、そしてなるべく人とはぶつからないよう細心の注意を払いながら進んでいく。
「もー少しでアジトッスよ」
「は、はい……!」
しかしそうは言っても、次第にフォル達とシャーラの距離は、何もせずとも徐々に広がっていってしまう。
シャーラはその度、僅かに歩みを速めては距離を埋め、また離れたら同様にして距離を埋める、といったことを繰り返す羽目になっていたのだった。

だがそれも、いつまで続くかはわからない。
「ちょ、ちょっと待ってくださ――――きゃっ!?」
何度かそれを繰り返す内、シャーラは慌てて距離を詰めようと思いきって歩みを速めた結果、とうとう人混みの中の誰かとぶつかってしまう。
その反動で彼女の足は支えを失い、今にも顔面から一直線に倒れんとしていた。
(……倒れる……っ!!)
覚悟を決めた彼女が目を瞑ったその時、不意に誰かの手が彼女の腕を掴み、運良く転倒を回避する。
「!?」
「……大丈夫か」
そしてそれに伴い、すぐ近くから誰かから声が掛かる。
「えっ」
シャーラが驚いて声のした方向へ振り向く。

声の主は、見た目十六、七ほどの中性的な少女だった。
色の薄いブロンドのショートカットの髪に、やけに色素の薄い不健康そうな肌。
胸は薄く、一瞬男性に見間違えるほどであったが、その落ち着いた声と長く生え整った睫毛はまさしく女性のそれだ。
恐ろしいほどに整った容姿でありながら、生気を感じさせないその様は、まるで人形が何処より操られ動いているかのように感じられた。
シャーラも珍しい銀髪を持つが故に、ただでさえこういった人混みでは浮いてしまいがちなのだが、それと同様にその少女の容姿もまた、この人混みの中では異質だった。
「?どうかしたのか?」
「…………あっ!い、いえ、助けてくださってありがとうございます。ごめんなさい、その、ぶつかったりして……」
そのあまりにも非現実的な姿に思わず息を呑んだシャーラだったが、それによって一瞬呆けた顔を見せたことが奇妙に思われたのか、謎の少女は氷のように冷い視線をシャーラへと向けていた。

「――お前は」
すると突然、少女はシャーラに対して何かを探るような目を向ける。
「は、はい……?」
シャーラはわけもわからず、ただ少女の顔をじっと見つめている。
少女の口数や表情は乏しかったが、声の微妙な調子の違いから、彼女の感情の微弱な起伏が感じ取れるような気がした。
少女もまたシャーラを見据え、そこで落ち着いた、それでいて芯の通ったような口調で囁きかけるように言う。
「お前は、過去の¨ボク¨について何か知っているか」
奇妙な質問だった。
自らの事を¨ボク¨と称したこの少女は、血のように紅い瞳でシャーラを真っ直ぐに捉え、そして静かに答えを待つのだ。
「え、えっと」
当然シャーラは困惑した。
無理もないだろう、初めて出会ったばかりの人間に「自分の過去のことを知っているか」等と訊かれれば、誰しもそういった心境になるはずだ。
彼女は勿論少女について何かを知っているわけでもなく、何か言わねばと動かした唇ですら、言葉を紡ぐには至らなかった。
するとそれを見た少女は、シャーラから得られる情報はないと判断したようで、
「知らないならいい」
と表情を変えず吐き捨てるように残し、彼女はそのままシャーラに有無も言わせないままに立ち去っていってしまうのだった。

「…………」
呆然と、シャーラは少女の去っていった方を見ながら立ち尽くす。
少女の淡白で非生物的な態度に圧倒されてしまったのもそうであるが、それだけではない。
何故だかシャーラには、その名前も知らない初対面の少女を、全くの無関係な他人だとは思えなかったのだった。

――気になる。
好奇心か、はたまたお世話焼きなのか。
そんなふと浮かび上がった思いに諭され、ついにシャーラはフォル達のことも忘れてあの少女を追いかけようとしていた。
「あの、やっぱり待って――――」

「……何やってんの、シャーラちゃん」

だが追いかけようとした矢先、今度は少女とは違う別の人物に呼び止められる。
「えっ、あっ、フォル君!?」
シャーラがふと振り向くと、そこには怪訝な表情のフォルが、彼女を不審そうに見つめている姿があった。
その後方からは遅れて、ライト、ノイ、チトセの三人もやってきている。
「後ろを見たらいなくなってたもんだからビビったッスよ……」
一番最後にやってきたライトが、顔に冷や汗を垂らしながら言った。
それも当然であろう、彼らは料理ハウスでシャーラが王族だと知ってしまったがために、無意識的に必要以上の注意を払い、そしてシャーラ本人以上にテンパってしまっていたのだから。
現にノイとチトセを見ると、各々が目をキョロキョロ泳がせたり、わざとらしくそっぽを向いたりと、明らかな動揺を見せていた。
加えて彼らは平静を装うとぎこちない笑いをするものだから、なおのこと挙動不審なのである。
だがそれは無理もないだろう。もし自分らが王族である人間を連れている道中、突然その人物が姿を消したとあれば一大事である。
フォル達の間でも相当な焦りを生んだのは言うまでもない。

「実は今しがた人とぶつかってしまいまして……怪我とかは大丈夫なのですが」
シャーラは今までの経緯を話しながらも、何か言いづらそうに含みのあるような言い方をする。
「どうかしたの?」
すかさずフォルが訊くと、彼女はふとバツの悪そうな顔で、
「いえその、できれば少しだけ、わたしも着いていけるよう、歩くスピードを落としていただけると嬉しいのですが……」
シャーラは身体がこそばゆくなるような思いに駆られながらも、恥ずかしさをまぎらわすように小さく笑う。
「なんだ、遠慮せず言ってくれればいいのに」
フォルは安堵したように肩を開いた。
「じゃあ今度はもう少しゆっくり行こう、いいよね?」
彼はすぐ後ろにいたライト達に、確認するような物言いで言葉を投げる。
「おうッス」
不良三人も特に異論はないようだった。
「お手数かけます……」
しかしながら、依然としてシャーラの顔は晴れない。
皆に気を遣わせてしまっていることに、なんとなく心苦しく思うのである。
早いところ外の世界に順応できるようになりたいと、シャーラは切に思うのだった。

「…………」
ふと、シャーラはあの少女のことが頭を過り、何の気なしに少女が去っていった方向へ振り返る。
既にあの色素の薄い風変わりな少女の姿は、人混みによって掻き消されたように見えなくなっていた。
(それにしても、あの子は一体……)
別々の線と線が交わり、そしてまた互いに離れていく。
そんな偶然のすれ違いであったにも関わらず、シャーラはあの謎の少女に対し、何か他の人間とは違うシンパシーのようなものを感じていた。
まだそれは靄がかかったように朧気なものであったが、また出会うことがあればきっとその正体もわかるはずだ。
彼女はそんなことを思いながら、再び歩き出したフォル達の後を、今度は見失わないようにとしっかり追って歩いてゆく。

五人の影がやがて、荒波のような雑踏の中に消えていった。

三章 交差③

注文からわずか一分足らず。
相変わらずノイとチトセがガンを飛ばし合っているのを気にも留めず、ゴスロリの女性はドリンクを乗せたお盆を持ってきていた。
「お待たせしました~!ホットミルク、リンゴジュース、コーラになります~」
彼女はテーブルに着くと、慣れた様子でそれぞれ注文した人間の前へとドリンクを置いていく。
「どうも」
要領よく飲み物を受け取るフォル達。
ライトはすぐさま、受け取って間もないコーラを一気に喉元へ流し込んでいた。
小さく「しゅわぁぁ」と小気味の良い音を立てる黒色の液体。その炭酸と甘さが喉を駆け抜け、小さな電流が全身に走り抜けていく。
ライトはぷはーと幸せな息をつくと、満足そうに空になったコップをテーブルに戻した。
「素敵な飲みっぷりですね。ではわたしも……あちっ!」
シャーラも同様に一気飲みを試みようとしたが、さすがにホットミルクでは無謀だったようだ。
彼女は舌を火傷しかけながら、湯気の立ち上るミルクにふーふーと息を吹きかけて冷ましながら、少しずつ口に含んでいく。
「――は!これはっ!」
感じるのは、ミルクのふくよかでコクの深い甘味と、口に広がる優しい香り。
温かで上品な味わいに、シャーラは思わず恍惚の表情を浮かべた。
「美味しいですね、もうこれだけで満足してしまいそうです……!」
「へぇ、じゃあ料理は注文しなくていいんだね?」
たった一杯の飲み物だけで満ち足りてしまっているシャーラに、フォルが少しだけ意地悪な物言いでからかった。
「い、いえいえ!やっぱり料理も注文します!」
シャーラは慌ただしい様子で、テーブルに備えてあったお品書きを手元に引き寄せ、パラパラとページを捲りながら、お品書きに載せられている料理の写真を流れるように見ていく。
「すいません、ではわたしはこれとこれを……!」
どうやら彼女はすぐに目を引くような料理を見つけられたらしく、注文をとるために待機していたゴスロリの女性に対し僅かに鼻息を荒げながら、意気揚々に料理の注文をするのだった。
承りました~。とゴスロリの女性が厨房に戻っていくまでの一連のやり取りを、フォルは自分のドリンクを口に含みながら見守っている。

「…………」
それに対し、そんな彼らを訝しげに見つめていたのはライトだった。
たとえ旅人といえども、言ってしまえばそれはただの他所の人間である。
素行は勿論、その他所の人間同士での会話、やり取りといったものが気になってしまうのは、やはりこのルクリフィアの町が自分の地元であるからか。
あるいは自分が、そういった冒険譚に憧れている、ただの好奇心旺盛な子どもであったからであろうか。
ライトはそんな思いを巡らせながら、背中を椅子に預け、探るようにフォルとシャーラのやり取りを傍観していたのだった。

ライトから見たシャーラの第一印象は、「裏表のない素直で優しい性格の女性」である。
その美しい容姿はもちろんのこと、彼女の優しげな笑顔には人を和ませるような慈愛と人の良さが溢れている。
それは根拠のない想像ではなく、彼女の佇まいやほんの僅かな仕草によって現れる、彼女本来の性質から感じられているものだ。
真に純粋な人間は、ほんの僅かな行動でさえもその純粋さが伝わってくるのだと、ライトは改めて知ったのだった。

しかし対するフォルの印象としては、純粋無垢なシャーラとは違い、「とにかく掴み所のない謎多き男性」のように見えた。
今現在もフォルは嬉しいことがあったわけでもないのに、何故かうっすらと笑みを浮かべている。
確かに、もし自分の傍にシャーラのような美人がいたらと思うと、思わずニヤついてしまうかもという可能性は拭いきれない。とライトは少し外れた感想を持つ。
だがこのライトですら、フォルのあの笑顔がシャーラに現を抜かしているからではないとすぐに理解した。
そうなってくると、尚のことフォルの不気味さが増してくる。

ライトにとって、この対称的な二人が旅路を共にしていることは非常に奇妙に思えた。
しかしその反面、この二人には何かしら通ずるものがあったのだろうと思うと、何故だかとても微笑ましく思えてくるのだった。


シャーラが注文した料理がやってくるまで、少しの間ができていた。
「ていうかそもそも、二人が旅に出たキッカケとかあるんスか?」
ライトは、そんな時を見計らってフォル達に気になったことを訊ねる。
フォルとシャーラは突然の質問に戸惑い、思わずお互い顔を見合わせていた。
「きっかけ、ですか」
すると、真っ先に答えたのはシャーラだった。
「わたしは……そうですね、ずっと外の世界への強い憧れがあったからでしょうか」
彼女は、ちょっと子供っぽかったですかね、と照れ臭そうに笑いながら「フォル君はどうだったんですか?」と誤魔化し半分でフォルに話を振る。
実際、彼女自身もフォルが旅に出たキッカケは気になっていたようで、フォルを見つめるその瞳には爛々と星が輝いているように見えた。
同じくライトも興味津々といった熱烈な視線をフォルに浴びせる。
「えぇ……」
二人の熱い視線を浴びせられたフォルは、少しだけ困ったようなリアクションをとる。
が、すぐに観念したののだろうか
か、彼は渋々とその口を開く。
「……期待してもらって悪いけど、キッカケなら俺は知り合いに飛空艇と資金をもらったからってだけだよ」
しかし、意外にも語られた内容は酷く単純。
「へ?」
「え?」
彼のあまりにもあっさりとした理由に、ライトとシャーラの二人は互いに間の抜けた声を発したっきり、ぽかんと口を開けたままフリーズしてしまう。
「そんな感動的な動機を求めちゃダメだよ、不良君」
子どものような笑顔を浮かべたフォルは、質問を浴びせたライトに対し、半ば茶化すように言い捨てる。
だが彼の笑顔には、無邪気さ、というよりもえもいわれぬ怪しさがどことなく漂う。
何か裏がありそうな笑顔が、かえって怪しさを助長させていたのだった。

「――でも、フォル君!」
そんな彼の様子を見ていたシャーラは突然、普段のにこやかな表情から一変、熱く燃えたぎる炎のような熱意の籠った表情へと切り替わる。
「感動的な動機がないのなら、これからわたし達で感動的な旅にすればいいってことですよね!!」
グッと精一杯の力で拳を握り締め、自らの熱い想いを語るシャーラ。
変に力みすぎたせいで、握ったそばから拳がプルプルと震えていた。
「いつになくテンションが高いねシャーラちゃん……」
「な、なんつーか……熱いッスね……」
しかしフォルは悲しくもそれをするりと受け流す。
それどころか、ライトですら困ったような表情でシャーラを見ている。
「あ、あれ?」
どうやらシャーラの熱意は見事に空回りしてしまったようである。
「おほん!ごめんなさい、少々先走ってしまいました……」
わざとらしく咳払いをして場を仕切り直すシャーラ。
「ただ、その……世間も知らない王族の端くれではありますが、わたしも一人の友人として、フォル君の力になりたいんです」
いつもの穏和な顔つきに戻った彼女は、優しく包み込むような声でそう言うと、そっとフォルの手に自らの手を触れさせた。
その指先の体温と、全てを見透かすような瞳の輝きが、フォルを真っ直ぐに捉える。
「だから、わたしをどうか¨信じて¨いただけませんか?」
「っ!」
シャーラ見つめられた瞬間、フォルはその深く青い瞳に思わず吸い込まれそうになった。
全てを見透かしてしまいそうな二つのサファイア色の輝石に、彼は思わず目を逸らしてしまう。

――信じて。
なんてことのない、ただの何気ない一言であるというのに、何かが、彼の内に残留する何かが、その一言を無意識に拒絶していた。
「……そう、それはありがたいね」
フォルは無関心を装いながら、自分の帽子の鍔を下げる。
自らの表情、そしてなにより自らを見つめるシャーラのあの純粋な瞳を遮ってしまうために。

だが、その状態も長らくは続かなかった。
「あり?『王族』って何の話ッスか?」
それはライトだった。
フォルがシャーラから目を背けて数秒、¨王族¨という聞き捨てならないワードが会話に出ていたことで、彼は思わずフォル達の会話の間に割り込んでしまったのだった。
しかしこれはフォルにとっては都合のいい展開だ。
やんわりと添えられたシャーラの手を振りほどきながら、彼は軽く手で頬の冷や汗を拭う。
「だってさ、シャーラちゃん」
まるで何事もなかったように、彼は帽子の鍔を戻し、あっけらかんとした様子でシャーラに視線を送っていた。
「あはは……実はわたし、ここからちょっと離れた所にある国の王家の者でして」
控え目に笑いながら、彼女はあっさりと自分が王族だということを明かす。
「うえぇぇぇぇマジッスか!!!??」
目玉が飛び出る程のやたらオーバーなリアクションをとりながら、ライトはまじまじとシャーラを見つめた。
しかし当の彼女は超然と、何故そんな反応をするのかというような顔でライトを見つめ返す。
シャーラは割と重大な事を言っているわけなのだが、どうにもその無防備さが拭えない。
フォルは先日の魔法の国での一件や店前でのデクレクレスら双子の件で、シャーラのやたら積極的で誰にでもガードが甘い点は重々承知している。
遅かれ早かれ、シャーラが自分の身の上を明かしてしまうこともフォルの想定内であったため、彼自身は半ば諦めに近い感情を抱いていたのだが、相席した可憐な女性からいきなり「自分が王族だ」などと重大なことを告げられたライトにとって、その衝撃は計り知れないだろう。
現に彼はその目を大きく見開いたまま、氷ったように動きを止めていた。

「――え!?シャーラさんって王族なんスか!!?」
「あ、ようやくこっちも反応したね」
すると、今に至るまでまでずっと取っ組み合いを繰り広げて火花を散らしていたはずのノイとチトセも、とうとう喧嘩を中断させてシャーラを凝視する。
衝撃の事実に目を白黒させているノイと、キョドりながらわたわたと手を動かして落ち着きのないチトセ。
普通の人間としては正常な反応の範疇ではあるが、その慌てっぷりはどちらも非常に滑稽だった。

「……ってことは何、城で暮らしてたりしたの?」
「はい!」
驚きを隠せないチトセの問いに、シャーラが微笑み混じりに答える。
「召使いとかそういう人もいたり?」
「はい!!」
「お、おおお金のプールとか、そういうの入ったり?」
「……は、はい?」
段々と混乱していったのか、質問が徐々に滅茶苦茶になっていくチトセ。
もはや彼女自身でも何を言っているのかわかっていないようであり、これにはさすがのシャーラも困惑を見せていた。
フォルもまた深いため息をつきながら、一旦落ち着いて席に着こう、と場を鎮めにかかる。
「ほら、二人とも深呼吸しよう」
「すー……はー……」
ノイとチトセの二人は呼吸を整えながら、そのままゆっくりとそれぞれの椅子に腰掛ける。
するとようやく落ち着いてきたのか、二人はセルフサービスの冷水を飲むことで体の火照りを冷まし、冷静さを取り戻すのだった。

「しかし王族かァ~……なんていうか、マジにそんな大物と会うことになるとはこれっぽっちも思わなかったッス」
ノイはコップに付いた水滴が滴り落ちる様を何気なく眺めながら、これまた何気ない口調で言った。
「いいにおいしそう」
チトセもシャーラを上から下まで舐めるように見ながら、ぼそりと思わず呟く。
「いいにおいするよ」
彼女の戯言に、フォルは笑い混じりの声で律儀に答える。
「おぉ、やっぱり!」
「み、皆さん、は、恥ずかしいのでやめてください……!」
しかしその傍ら、シャーラはあまりにも平静に淡々と答えるフォルや、ほへーと息を洩らしながら自分を見つめるライト、ノイ、チトセの三人を前に、耳元まで赤く染め羞恥の表情を見せてしまうのだった。

「――あらあら、そんな簡単に色々教えちゃっていいんですか~?」
するとそこに、先程フォル達が注文した料理を携えたゴスロリの女性が、茶化すような物言いで現れる。
早いことに、どうやらもう料理ができたらしい。
「あれれ……もしかしていけませんでしたか?」
シャーラが不安気に首を傾げるのを横目に、ゴスロリの女性は料理をテーブルの上に丁寧に並べながら、いえいえと僅かに微笑む。
「正直なのはいいことなのですが~……そういった大事なことはやはりあまり話すべきではないと思います~」
特にここのような大きな町では、と付け足しながら、彼女はシャーラに優しく諭した。
「そう言われるとそうですね……少々迂闊でした」
うっかり口を滑らせてしまったことも原因であるが、それと同じくしてシャーラ自身の警戒の至らなさにあったとも言える。
どちらにせよ、僅かながら彼女自身に落ち度があったのは間違いない。
そんなわけで、シャーラは思わず肩を竦めてしまうのだった。

そのうちに、ゴスロリの女性の機械的で手慣れた動きによって、テーブルにみるみるうちに料理が整列されていく。
一分もしないうちに、全ての料理がテーブルの上に並べられた。
一仕事を終えたゴスロリの女性は、シャーラに言ったことを改めて言い直す。
「シャーラさんのような純粋過ぎる方は心配なので一応言っておきますと、ここまで町が広くて人口が多いと、必ずしも良い人間ばかりではないということです~」
ゴスロリの女性はさらにシャーラに詰め寄りながら言う。
「もし悪い人に王族だと明かしてしまった場合、下手すると犯罪に巻き込まれるかもしれないので、絶対、絶対気を付けてください~!」
人指し指を突き立て、ずん、ずんと迫るような勢いで捲し立てるゴスロリの女性。
口調は優しいが、目は笑っていない。
先の話で「昔は暴れていた」と彼女は語っていたが、それも納得で、シャーラに詰め寄る彼女の表情にはえもいわれぬ威圧感があった。
そのせいか、若干引いた様子でコクコクと頷いてしまうシャーラ。
見ようによっては、田舎から上京してきた純粋無垢な少女から、カツアゲしようと目論むゴスロリ服のヤンキーの図にも見えなくもない。

「まーでも、下手に変な連中に関わらなければいいんスよ」
そんなやり取りを見ていたライトは、強ばっているシャーラに気を遣ってか、ゴスロリの女性の言った言葉をわかりやすく噛み砕いて言う。
「あら、それだけで済んだらいいですね~?」
しかしゴスロリの女性はというと、それでは甘いと言わんばかりに邪悪な笑みを浮かべ、
「もしかしたら、今も誰かが旅人さん達を狙っているかもしれませんよ~?」
今度は一気に、ずいっと自らの顔をシャーラの目の前に近付け、まるで怪談でも語るかのようなおどろおどろしい口調で話す。
ゴスロリの女性の明らかな悪ノリであった。
「ひっ、そ、そんなっ」
そんな彼女の芝居ぶった動きに、シャーラは肩をびくつかせ、指先をふるふると小刻みに震えさせながら、思わず傍にいたフォルの服の裾を掴む。
「怖がらせてどうすんだよ!」
明らかに遊び始めているゴスロリの女性に、ライトがバッシングを浴びせる。
「……とはいっても、シャーラちゃんはいざとなったらそういうのは自分の魔法で対処しなきゃね」
すると、傍観役に徹していたフォルがようやく口を開いた。
彼は、シャーラが首にかけている魔具を指先で軽くつつきながら、ケラケラと笑ってみせる。
「だ、だめですよ!人に向けて魔法を放つなんて」
「眠らせるくらいだったら誰も傷付かないよ」
「それは、そうですけど……」
口篭ってしまうシャーラ。
だが実際、彼女がその気になりさえすれば、大抵の人間など赤子の手を捻るように退けることができるであろう。
フォルがシャーラの魔法を見たのは一度きり、ほんの末端部分でしかなかった。
だがそれでも、長らく魔法を用いる機会すらなかった彼女が、手探りながらもいとも容易く魔法を使ってみせたのだ。
彼女の内に眠る「魔女の力」はそれ程に未知数の可能性を秘めている。

しかしそれ故に、何が起きるかは全く予想ができない。
もし何かがあったとき、彼女の魔法は――――

フォルが魔女の力を危惧する理由はそこだった。
いくら彼が使用に否定的なドラゴニュートの力を用いたとて、一人では限界がある。
いずれはシャーラ自身で何とかしなければならない時も来てしまうのだ。
しかし、
「ただ今のうちなら、この人達をアテにするのも悪くないかもね」
フォルは口に微笑を浮かべながら、ライト達三人、そしてゴスロリの女性に視線を向ける。
「えぇ、ライト君達はいい子ですし信じちゃってかまいません~!」
私が保証しますよ、と太鼓判を押すゴスロリの女性。
彼女は今しがたシャーラを怖がらせてしまったことを申し訳なく思っていたのだろうか、半分シャーラを安心させるように、彼女はフォルに対して強い肯定を示していた。
「……!はい、もちろん信じますよ!」
先程の不安が吹き飛んだかのように、露骨に嬉しそうな反応を見せるシャーラ。
心配される節は残っているものの、どうやら新たな友人との出会いに希望を見いだせたようである。
「じゃあ同じく、頼りにさせてもらおうかな」
フォルもまた余裕綽々とした顔で、ライト達の反応を伺うかのように言った。
残念ながら、彼はまだライト達を信用するには至っていなかったが、ゴスロリの女性の言う通り、見たところ彼らに関して特別不審な点が見受けられなかったのも事実だ。

「ま、何も起こらないといいけどね」
しばらくは様子見してもいいだろうと、及第点としてフォルはシャーラの¨信じる¨という言葉に賛意を表したのだった。

三章 交差②

カランコロン、とドアチャイムの音がして扉が開く。
するとそこから、銀色の髪を持った一人の少女が踊るようにして入ってくる。
「フォル君も早く早くっ」
彼女の名はシャーラ・I・ディザスター。
「厄災の国」という小さな国の姫であるが、彼女のその無邪気な振る舞いからは、誰が見てもごくごく普通の一人の少女としてしか映らないであろう。
シャーラは目を満点の星空のように輝かせて、小さな扉の内に広がる小さな世界を見た。
「料理ハウス」の店内はあの棘々しい外装とは裏腹に、一般的な洋風レストランのように程よい装飾に彩られていた。
やや埃っぽいことが悔やまれるが、優しい明かりに照らされた店内には、テーブルや椅子がきちんと均等な距離を保って並べられており、店内にかかった煩すぎず小さすぎない音楽が、客の心を穏やかにしてくれる。
落ち着いていて素敵な店だ、とシャーラは思った。
もしかしたら、この洋風でどこか懐かしい店内が、自らの故郷である「厄災の国」のことを思い起こさせているのかもしれない。
「ちょっとシャーラちゃん、勝手に入らないで……わ!?」
すると、シャーラの後を追ってまた一人の少年が店の扉を開ける。
彼――フォル・A・バイムラートは、入って間もなく、あの奇々怪々、摩訶不思議、一種異様な外装と、内装の落ち着いた雰囲気とのギャップに思わず声を洩らした。
「見かけだけじゃわからないってこういうことを言うんだね」
一度扉をくぐればそこは別世界なのだと、彼はひしひしと痛感していた。

「――あら、お客様ですか~?」
フォルとシャーラが店の扉の近くにしばらく佇んでいると、店の奥から一人の女性の声が聞こえた。
それに伴い、一人分の足音が、ぱたぱたと忙しない様子でフォル達の前へやってくる。
「いらっしゃいませ~。私の店へようこそ~」
そんな挨拶とともに現れたのは、奇抜にもゴスロリ服に身を包んだ一人の女性だった。
身長はシャーラよりやや低い程度。
黒ベースに紫のリボンと白のフリルをあしらったゴシック&ロリータを着こなしており、二つにまとめられた癖毛の金髪、そしてそこから覗く碧眼が、よりいっそうゴスロリ服の魅力を引き立てていた。
その服装から若干幼いように見えるが、その佇まい、仕草や声質から、実際は二十代前半という印象を受ける。
「私の店」と言ったことから、どうやらここは彼女の店であるようだ。
「そのお洋服、とても可愛らしいです……!」
初めて目にするファッションスタイルに感激するシャーラに「ありがとうございます~」と丁寧に頭を下げるゴスロリの女性。
「カップルさん一組ですね、それではこちらの席へどうぞ~」
ゴスロリの女性が案内したのは、いくつもある席のうち、店に入って右奥にあるテーブル席であった。
「それじゃあ座ろうか…………あれ、シャーラちゃん?」
フォルはシャーラの手を引くが、彼女は顔を真っ赤にさせたまま動こうとしなかった。
「えっ、あ、はっ」
すると何かに気付いたように彼女は片手で顔を覆うと「か、カップル……だなんて……まだわたし達はそういった関係では……」等とぶつぶつと呟いている。
「シャーラちゃん耳赤いよ?」
「あ、赤いですかわたし!?」
あからさまな動揺を見せるシャーラ。
「もしかして具合が悪いの?」
「だ、大丈夫です、ちょっと、ぼーっとしてた、だけ、だったり……」
ロボットのように不自然な動きで席に着こうとするシャーラを、フォルは何かと怪訝そうに見ていたが、特に何かをするわけではないとわかると気にしないことにした。
シャーラの方も一度落ち着いて深呼吸をすると、真っ赤になっていた顔も普段通りに戻ったようで、そのままフォルに手を引かれながら席へと移動する。
「青春、ですね~」
その様子を見ていたゴスロリの女性が、誰に言うわけでもなく一人懐かしむように呟いていたのだった。

フォル達は席に着くと、それぞれほっと一息ついて間もなく、二人はそれぞれ好きなようにくつろぎ始める。
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びくださいね~」
そう言ったゴスロリの女性が、丁寧にフォル達の席にメニュー表を置いた。
少々サイケデリックなデザインが施されたそのメニュー表は、メニュー内容こそ普通なものの、どこか不安を感じさせるようなオーラをこれでもかというほどに放っていた。
「メニューに蝙蝠のスープみたいなのとか載ってたりしてね」
「ウチにそんなものありませんよ~!」
「ははは、冗談だよ」
フォルはゴスロリの女性をからかいつつも、出されたメニュー表を手にとって開こうとする。
すると、

「――――こんちわ~!」

何やら店の入り口の方で人の声が聞こえたかと思えば、ガタン、と扉がやや雑めに開かれた。
それに伴い数人の男女が店内に入ってくる。
人影は三つ。
一人は十代前半程度の、ニット帽を被った金髪の少年。
そしてその脇を固めるように、十代後半であろうリーゼントの少年とジャージの少女の二人が佇んでいた。
金髪ニット帽、リーゼント、ジャージと、あからさまに柄の悪そうな印象を与える格好の集団であるが、何故か見る限り彼らが悪人だという風には見えない。
f:id:sometime1209:20160707174145p:plain
見たところ彼らもまた、フォル達と同じようにここに来た客なのだろう。
ただフォル達と違うのは、この来るものを拒むような外装の店にえらく慣れているということだ。
様子からして、何度もこの店に脚を運んでいると思われる。
「あら、いらっしゃいませ~」
ゴスロリの女性はにこやかに会釈をすると、フォルとシャーラに向かって小さく、うちの常連さんなんです、と顔を綻ばせ、少し小走りに常連という客達のもとへ向かっていった。
「ん?あれ!?今日は他に人かいるじゃねーか!」
フォル達の姿を発見するや否や、ニット帽の少年が幽霊でも目撃したような顔で言う。
「イヤですね、うちは料理店なんですからお客様に決まっているじゃないですか~」
そんないつも客が来ないみたいな言い方をしないでください~、とゴスロリの女性は言うが、いやいつもオレ達しか来ねぇだろ、とニット帽の少年から悲しい事実を突き立てられてしまう。
どうやらあの店の外装が災いしているのか、どうにもこの店の客足は乏しいようである。
「それでよく暮らしていけるね……」
そう呟いたフォルは改めて店内を見渡す。
確かに席こそ多いものの、一部は埃を被っており、使っていないというよりは使うつもりがないように見てとれる。
そもそも、従業員もどうやら店主であるゴスロリの女性のみであるようだ。
だが彼女は見たところそのことを気にしている素振りはなく、ただただ慣れ親しんだ様子で、常連である彼らと会話を弾ませていた。
扉の小窓から入り込んだ光が彼らを照らしているせいか、まるでそこだけ彼らだけの別の世界が存在しているように見える。
そんな見るからに親密そうな彼らの姿を、シャーラは笑みをこぼしながら眺めていた。
「ふふっ、楽しそうですね。わたしもあんな風に友人同士で何気ない会話に花を咲かせたいです」
フォルもまた、そうだね、と素っ気ない返答をしながらも、ゴスロリの女性と客達の姿だけはしっかりと横目で捉えていた。
「友達、ね」
どちらかと言えば家族みたいだ、とフォルはただ漠然と感じていたのだった。

「しっかし珍しいッスね、ここに¨マトモな客¨が来るなんてよォ」
常連の一人、リーゼントの少年が珍獣でも発見したかのようにまじまじとフォル達を見る。
「てゆーかむしろ、こんな店にわざわざ来るなんて怪しい」
ジャージの少女が眉間にしわを寄せながら言うと、傍らでゴスロリの女性が「こ、こんな店!?」と悲しげな声を洩らす。
「初対面の相手に失礼過ぎだろ……」
と、ニット帽の少年が重苦しいため息を吐いていた。
「こいつらこんなやつなんで、何かすいませんね……あ、オレ『ライト』ッス」
彼はリーゼントの少年とジャージの少女の頭を無理矢理掴むと、そのまま力ずくで頭を下げさせた。
立ち位置からして、どうやら「ライト」と名乗った彼は二人の兄貴分的存在であるようだ。
「わたし、シャーラといいます。こちらのフォル君とともに旅をしている者です」
シャーラは丁寧な物言いで礼をする。
それに伴い、隣で手悪戯をして遊んでいたフォルが「よろしく」とうっすら笑顔を浮かべていた。
「へへ、旅人かァ~こんな美人さんもいるんスね、アニキ!」
リーゼントの少年が鼻の下を伸ばしながら言うと、すぐさまライトから鉄槌が下る。
「馬鹿野郎、どこ見て言ってやがんだ!」
「でもよ、アニキだってシャーラさんの胸ガン見して――」
「してねーよ!」
そのまま二人は言い合いになり、時折相手の体に拳をぶつけながら「この前変な本立ち読みしてた」だの「ベッドの下に隠してるの知ってるんだからな」等と他愛もない口論をし始める。
「ったく、男っていつもそんなんばっかだな」
はぁ、とため息をつきながら言うのはジャージの少女だった。
「まぁいいや、アタシは『チトセ』。ライトのアニキの右腕的存在だからよろしく」
すると、何かに反応したのか、それまでライトと口論を繰り広げていたリーゼントの少年がチトセをぎろりと睨み付け、
「ハァァァ~???な~にがアニキの右腕だジャージ女!アニキの右腕はこの俺様、『ノイ』以外にありえねーだろうが!」
彼はどうやらチトセが自らを「ライトの右腕的存在」と称したことに納得がいかなかったようだった。
チトセはめんどくさそうな表情で、顔に貼ってある絆創膏の辺りを掻く。
「はー誰がアニキの右腕だって?テメーは下っ端の下っ端だろうが!」
突っ掛かってきた「ノイ」に対抗して、チトセもが負けじと荒々しく彼の胸ぐらを掴む。
「んだとチトセ!ちっとばかし喧嘩つえーからって調子のってんじゃねぇぞコラ!」
「調子のってんのはテメーだフランスパン頭!なんなら今ここでマジにシめてやってもいいぜ?」
「フランスパ……上等だテメー!」
売り言葉に買い言葉。
今にも喧嘩が始まりかねない雰囲気である。
「店内での暴力はお控えくださいね~」
優しく仲裁に入るゴスロリの女性。
当然ながら、そんなことで彼らが止まらないのは一目瞭然だった。
「あらら、ほっぺのつねり合いし始めてますね~」
「姐(アネ)さん、もっとこうガツンとやっていいッスよ」
取っ組み合いをおっ始めるノイとチトセを見ながら、ライトが呆れた表情で言う。
フォル達もまた気まずい表情で、不良二人がいがみ合う様を見ていた。
「ガツン、ですか~……」
するとおもむろに、ゴスロリの女性はそう呟くと、微かに自らの拳を握る力を強める。
そして、
「ガツン!!!」
「ゔ!」「ごぁ!」
なんと、左右の拳でそれぞれノイとチトセのこめかみを殴りつけたのだった。
一瞬、その場にいた全員が言葉を失う。
やがて小さな呻き声を上げた二人は、そのまま支えを失ったかのように床に倒れてしまった。
「あら?ガツン、じゃなくてゴツン、になっちゃいましたね~」
「いや、ガツンって殴れって意味じゃねーから!」
うふふ、と微笑むゴスロリの女性に、ライトが鋭いツッコミを入れる。
「…………フォル君、こ、これ気絶してませんか?」
「してるね」
哀れにも白目を向きながらピクリとも動かなくなったノイとチトセを、フォル達は気の毒そうに見ていた。
「シャーラちゃん、魔法使って起こしてあげれば?」
「は、はい!只今」
「だーいいッスいいッス、オレやるんで」
ライトは魔法を用いようとしていたシャーラをやや優しめに押し退けると、そのまま死体のように倒れている二人の傍まで駆け寄る。
「こいつらにはこれで十分ッスよ」
彼はそう言うと、自らの両手をそれぞれノイとチトセの首筋に近付けた。
そして、
「よっ」
「ゔ!」「ぁご!」
突如、バチン、と何かが破裂するような音が、かざされたライトの両手から響いた。
それに伴い、床に突っ伏したノイとチトセの身体が、びくん、と動く。
「オラ、起きろお前ら!」
「は!お、俺達は一体……」
「何かしてたような気がするけど思い出せない……」
ライトが声をかけると、痙攣しながらゆっくりと目を覚ますノイとチトセ。
さながら、電源スイッチの入ったばかりの機械のような挙動だ。
フォルとシャーラは一瞬、何が起こったのか理解できなかった。
が、ライトの手のひらから発せられる僅かな電撃を見た途端、彼らは瞬時にそれを理解する。
「『異能力』……!」
フォルが思わず声をあげると、ライトは得意気な顔でニヤリと笑ってみせた。
「どういうわけかオレ、生まれた時からこの力が使えるみたいなんスよ」
ライトは、自分でもよくわかんねーッスけど、とぼやきながら軽めに指先から電気を発した。
通常、異能力というものは、危機的状況に陥った生命体が自らの身体のリミッターを解除するのに伴い、大気中の魔力粒子がその生命体の細胞と結び付き、突然変異を起こすことで発現するものだ。
しかしごく稀ではあるが、親の持つ異能力を遺伝で受け継ぐということがある。
ライトのように先天的に備わっているという事例は現在判明しているだけでも数えるほどしかなく、未だ詳しい事柄は解明されていない。
「ま、おかげで喧嘩は負け無しッスよ」
指先をうねうね動かしながら、遊ぶように指の間に電気を走らせているライト。
彼は言わずもがな、電気系統の異能力者なのであり、また彼こそが俗に言う遺伝型の異能力者なのである。

「それにしても、最近は不良達が喧嘩なんかしててやたらと物騒ですね~……先程もドンパチやってたようで、店の外がやけに騒がしかったんです~」
ゴスロリの女性はオロオロと戸惑いを露にする。
「喧嘩、ねぇ」
フォルは小さく呟いた。
先程、というと、この料理ハウスの店先でデクレとクレスら双子とフォルとの戦闘が繰り広げられていた事実と一致する。
ゴスロリの女性が言ったのはおそらくそのことだろうとフォルは確信した。
「フォル君、もしかして先程の喧嘩というのは……」
シャーラも気付いたのか、そっとフォルに耳打ちするが、彼は何も言うなと言わんばかりに首を振る。
「ライト君達も大丈夫ですか~?何か虐められたりとか困ったことはありません~?」
「ねぇよ!」
ゴスロリの女性の問いにきっぱりと答えるライト。
「私に頼ってくれてもいいんですよ~?」
「誰がするか!……てか、困ったらここじゃなくてケーサツ行くしよ」
「ええ!?それこそ心配です~!不良少年が警察に行くなんて自首と同」
「一応まだ何も悪いことしてねーからなオレ!」
ゴスロリの女性に、自分が悪事を働いていないと全力で否定するライト。
「確かに、アニキは万引きすらしたことねェよなァ。俺ァ昔は暴れてたけどよ」
「アタシもアニキと出会ってからは落ち着いてるわ……喧嘩売られたら買うけど」
犬が威嚇するように唸るライトの様子を、ノイとチトセはうんうんと何度も頷きながら見ていた。
どういうわけか、ライトはおろか現在においてはノイとチトセすらもただの見た目だけの不良、すなわちファッションヤンキーの類いであるらしい。
見た目とのギャップが、よりいっそう滑稽さを引き立てていた。
「あらら、そうでしたか~……私はライト君くらいの歳の頃は荒れていたので、てっきりライト君もそうかと思ってました~」
ゴスロリの女性は安堵したような、しかしややガッカリしたように肩を落としてしまう。
「へぇ、店主さんみたいな人でもヤンチャしちゃうものなの?」
フォルが悪戯っぽい笑みで冷やかすと、ゴスロリの女性は、ええもちろんです、と慣れたように微笑んだ。
「実は異名まで付けられてたんですよ~。えーっと、はた……はたはた……みたいな~」
自信満々で語り出したものの、肝心なことを忘れているのか、次第に言葉が勢いをなくしていくゴスロリの女性。
「それ忘れちゃダメでしょ……」
フォルが呆れたという視線を送るが、女性は誤魔化すようにうふふと笑うのみだった。

「……ところでよォ」
すると、ノイが絞り出すように口を開く。
「俺達いつまで立ってりゃいいんだ?」
その瞬間、ゴスロリの女性は思わず「あっ」と声を洩らす。
フォル達が座っている傍らで、ライト達はまるでマネキンのバイトでもさせられているかのごとく佇んでいたのだ。
「そういうことならせっかくですし、フォルさんやシャーラさんと相席してはいかがですか~?」
「雑だなぁ……いいけど」
「わ、わたしも大丈夫です」
ゴスロリの女性の応対に困惑の表情を見せたフォルとシャーラだったが、やむなく了承する。
「この人絶対オレらの席のこと忘れてただろ……」
ライトはゴスロリの女性に対し、拭いきれない疑いの念を露にしながら、しぶしぶフォル達と同じ席に着いた。
「お気の毒だね、君」
不満気な表情のライトを軽く小付くフォル。
「いいじゃないですか、ここで出会ったのも何かの縁ですし、皆でお話でもして楽しみましょうよ」
すると、ライトを挟んで向かい側にいたシャーラが、彼をフォローするように優しく微笑んだ。
「ハ、ハイ!俺ァ美人さんとお話するのはむしろウェルカムッス!!」
だがノイが、ライトを差し置いて突如、身を乗り出すようにして自らをアピールし始める。
「なんでおめーが反応するんだっつーの」
「ぐぉ!」
彼の欲望見え見えの行動に、チトセが軽く彼の腹に軽めのブローを入れた。
「テメー!いきなり殴るんじゃねぇ!!」
いきなりの攻撃でノイはチトセに対し怒りを露にするが、チトセは無反応のまま自分の席に座る。
「なんだってんだまったく……」
ノイは小さく舌打ちをすると、そのまま勢いを無くすようにして席に着いた。
「…………シャーラちゃん、これ楽しくできないんじゃないかなぁ」
依然としてピリピリとした空気を漂わせているこの状況に、フォルが深いため息を吐く。
「お前らなぁ……」
ライトもまた呆れた様子であった。
「だ、大丈夫ですよ!喧嘩するほど仲が良いと本で見たことがありますし――」
「「良くない!」」
「ひっ、ごめんなさい……」
シャーラは必死に場を取り繕おうとするも、ノイとチトセの気迫に気圧され、空気の抜けた風船のように萎んでしまう。
するとそこで再び火が付いたのか、ノイとチトセの間では「真似すんな」を皮切りに喧嘩第二回戦が勃発することとなった。
「……これは……そっとしておこう」
「そうッスね」
フォルとライトは、一々気にしていてはキリがないと、彼らの喧嘩については極力無視することにした。
「じゃあ店主さん、リンゴジュースあったらお願い」
とりあえずフォルは飲み物を注文する。
「オレ、コーラ」
フォルに続くライト。
「で、ではわたしは温かいミルクを」
さらにシャーラが注文した。
「承りました~。少々お待ちを~」
注文を受けたゴスロリの女性も、すぐそこで行われている喧嘩に目もくれずに、ぱたぱたと忙しない様子で厨房へ向かっていったのだった。

「――さてと、この町についてもう少し情報が欲しいし、情報収集がてらお話でもしようか」
「はい!」
「お、そーッスね」
フォル達は注文を待つ間、各々が好きな話題で会話を始めるのだった。